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社会不適合者が凄腕のショコラティエになっていた件  作者: エスティ
第4章 地方復興編
52/70

52粒目「性別役割分業の壁」

 2006年7月15日、私は凪とローカルアイドルユニットの結成を果たした。


 私にとっては初めてのユニットだが、凪にとっては13回目とのこと。


 ユニット名は『ショコラブリー』というもので、2人で話し合った末に決まった。大のチョコレート好きという共通点からできた鞄語だが、我ながら良いセンスだ。ユニットメンバーは時々ラジオで他愛もない雑談をしたり、自分の冠番組を持つことができるのだ。


 しかも料理番組をショコラブリーの企画として行えるとのこと。


 チョコレート縛りであるため、定期的にチョコ作りができるのだ。


 シングル曲を歌詞や振り付けを覚えると、凪がいたこともあり、瞬く間に岐阜で認知される存在となったが、やはりローカルアイドルなのか、地元の人を除けば一部のアイドル通にしか知られていない。流石に全国区というわけにはいかないが、私にとってはむしろ好都合だ。目立たずに活躍する方が私には合っているし、アイドルとしての実力は凪に勝てる気はしないが、ショコラティエとしての実力なら勝っていると思っていた。凪は料理も堪能で、家でお菓子作りをしていたのだ。


 そのことを思い知らされたのは、ショコラブリー結成直後、最初の料理番組の時だった。


 スタジオに撮影スタッフが集まり、スケジュールに乗っ取って撮影を行う。テレビ局の番組内で10分程度で終わるよう編集され1つのコーナーとして後日放送されるのだが、撮影されてから放送されるまで1ヵ月から2ヵ月程度のタイムラグがある。プロデューサーは常に欠伸が絶えない。仕事続きで疲れているようだ。私と凪が放送されるのは深夜枠と呼ばれるものだ。


 名の知れた番組は視聴率を取れるゴールデンタイムに放送されている。


 ローカルアイドルはこういったところでも格差があるのだ。


 この日は私と凪の料理対決という名目でチョコレートを作る。


 お題は板チョコ。私の方が経験があるため、ハンデとして私が凪に教えてから習得させるという形式となったが、凪は一発で私の実技を再現してみせたのだ。何度か人に教えたことはあるが、ほとんどは何度も教えてやっと習得する。しかし、凪は一度見ただけでコピーしてしまう。歌詞や振り付けも一発で覚えてしまい、普段は待つ側だった私が待たせる側に回るくらいだ。


 きっとこれが天才という生き物なんだろう。


 最も特徴的なのは、集中力がずば抜けて高く、一発で要領を掴むところだ。


 筋が良いを言語化すると、他の人よりも習得や実技の処理速度が高いということだが、凪はこれを地で行っている。教える側としてはあまり言うことがないために楽だが、教えれば教えるほど、どこまでも伸びていくため、教え甲斐もある逸材でもある。


 凪にもショコラティエとしての素質がある。


 チョコレート作りの原点にして頂点とも呼べる作業、テンパリングを教えた。


 テンパリングはチョコレートに含まれるカカオバターの結晶を最も安定した状態にする温度調整作業のことであり、光沢の美しい滑らかな口当たりのチョコレートを作るには欠かせない作業だ。


 チョコレートを細かく刻み、50度の湯煎にかけて静かに混ぜながら溶かす。この時ボウル内のチョコレートに水気が入らないよう注意する。温度計で測りながら、チョコレートの温度を40度まで上げていく。次にボウルを冷水につけてチョコレートの温度を下げる。 ボウルに当たっている部分からチョコレートが固まっていくため、温度を下げる時は常に静かに混ぜながら、大体25度になるまで温度を下げる。再び湯煎にかけて、一定の温度に調温する。ボウルを熱湯につけるのは一瞬で、熱湯から取り出し、決して長い時間つけず、チョコレートを混ぜるのがポイントだ。


 温度計で測りながらこの作業を繰り返し、しっかりと混ぜながら少しずつ温度を上げていく。30度くらいまで温度を上げたらこの温度をキープする。これ以上温度を上げると、テンパリングが崩れてしまうのだが、多くの初心者はここで躓く。これでテンパリングを終了だが、チョコレートの温度は作業が終わるまで、30度の範囲で保温する。もしチョコレートの温度が32度以上になってしまった場合は結晶の安定が崩れてしまった証であるため、再びテンパリングをやり直すこととなる。


 艶のあるチョコレートになれば出来上がりだ。


 本業以外の人で、初めて自分と同じ土俵で勝負できる人を見つけた時って、こんな感覚なんだ。


 下手をすれば、すぐ私に追いつくかもしれないと思わせるくらいの危機感はある。不思議と追いつかれたくない焦りと、相手に対する羨ましさが湧いてくる。これがきっと――。


「後はチョコレートを型に流し込んで、冷蔵庫で固めれば完成」

「璃子って凄いね。こんな技術を持っているなんて、プロ顔負けだねー」

「凪だってすぐに習得できてたし、センスあるんじゃない?」

「ふふっ、やっぱり璃子が相方で良かった」


 凪が抱きつきながら言った。ほんのりと花の香りが鼻に入る。


 今までに嗅いだことのないシャンプーやリンスの香りだ。


 サイバーモールの化粧品売り場でも漂ってきた。私が一生使うことのなさそうな高級品。好みはあっても特に嫌いな食べ物がない。天羽社長の押しつけがましい態度からも、躾の厳しい家庭であることが窺える。自分に向けられる世間からの評価がどんなものかも知っている。


 私は誰が相手でも肩書きは見ない。あくまでも1人の人間として見る。


 凪にはこんな当たり前のことが心底ありがたいのだ。良家のお嬢様アイドルとしての側面しか見てもらえないのか、他人とは妙な距離感が生じている。私以外の人間には近寄ろうとすらしない。凪自身は良心的な人格の持ち主だが、希代の天才故、何かと誤解されがちだ。


「……私だと力不足な気もするけど、満足そうで何より」

「璃子は他の人みたいに嫉妬したりしないから凄く楽だもん。あたしとユニットを組んでた12人は、みんなあたしに嫉妬して、あたしをスキャンダルに陥れるのに失敗していなくなっちゃったから」

「私だって凪に嫉妬してるよ」

「ちょっと、冗談でもやめてよー。こっちはトラウマなんだから」

「本当だよ。でも私は誰かを貶めるためじゃなく、自分を高めるために嫉妬心があると思ってる。嫉妬心が悪いんじゃなくて、使い方を知らないだけ。凪のことは凄いと思うし、羨ましいと思ったこともあるけど、何より凪を超えたい気持ちの方が強いから」

「――やっぱり……璃子は他の人と違うね」


 安心した笑みを浮かべ、ショートボブの髪を靡かせる。


 しばらくしてチョコ作り対決という名目で番組の撮影が進行する。


 数時間ほどかけて調理が終わると、審査員となる人が5人集まってくる。どちらが作ったかを伏せ、番組スタッフが板チョコを2枚ずつ提供する。私の板チョコはハート、凪の板チョコはスペードの型に流し込んでいる。呼ばれた審査員の中には思わぬ人物もいた。


「あれっ、優子さんがいる」

「璃子の知り合い?」

「うん。ヤナセスイーツっていう葉月商店街を代表する洋菓子店で勤務してるパティシエ。親子揃って何度か大会で入賞してる凄腕の人」

「ふーん、審査員としては申し分のない人なんだ」


 余裕の笑みを浮かべる凪。スタジオに居座っているだけでも緊張するのに、何年も前から場慣れしているようだ。凪も人のことを言えない。良くも悪くも変人同士のユニットになりつつある。


 変人が不適切ならば、ユニークと言ってもいい。


 審査結果が発表される。5人の審査員の内、優子さんを含む3人が私の板チョコを支持し、残り2人は凪の板チョコを支持したため、ギリギリ私の勝利となった。試合に勝って勝負に負けた気分だ。実力差が出にくい板チョコとはいえ、小さい頃からチョコレートに携わってきた私が……チョコ作り初めての相手に辛勝するなんて、とてもじゃないが、ショックを隠せなかった。


 嫉妬心の強い人間だったら――私も凪を排除するか敬遠する方向に動いたかもしれない。


 会ったこともない歴代相方の気持ちが手に取るように分かる。


 撮影後、私は優子さんに会い、凪を紹介する。


 凪のセンスを気に入った優子さんは、私たちを金華珈琲へと誘ってくれた。全部優子さんが奢ってくれるとのことだが、注文はいつも通りにしておこう。


 凪は金華珈琲マスターともすぐに意気投合し、しばらくは雑談をしながら話を進めていた。金華珈琲でバイトしているお父さんとも挨拶を済ませたは、この時の凪はすっかりとアイドルモードで、私にだけ見せていたとびっきりの笑顔はない。あくまでもクールな天才肌という型にハマっている。


「ごちになります。でも本当にいいんですか?」

「いいのいいの、璃子ちゃんの友達はあたしの友達でもあるんだし、凪ちゃんって呼んでいい?」

「はい。優子さんは璃子とは昔からの友達なんですか?」

「まあ友達っていうよりは、古くからの身内って感じかな。凪ちゃん、璃子ちゃんは近年稀に見る純粋無垢な子だから、危ない目に遭わないよう守ってあげてね」

「もちろんです。任せてください」

「子供扱いしないでほしんですけど……」

「何言ってんの。人より賢いとは言っても、まだまだ子供。璃子ちゃんってさー、人とぶつかり合った経験ないでしょ。だから心配なの」

「……」


 この日は珍しく……と言ったら失礼だと思うが、金華珈琲に常連客が挙って集まってくる。


 ショコラブリーの2人が金華珈琲にいるとの噂を聞きつけたのだろう。都市部ではあるが、葉月商店街の周辺は田舎としての側面もあり、あっという間に噂が広まってしまうのだ。有名人なら目立たないようにするものだと思うが、凪は一切顔を包み隠さずにいる。


 下手に隠そうとする方がかえって目立つとのこと。


 ぞろぞろとお客さんが入ってくるが、凪にばかり話しかけている。


 私はまだデビューしたばかりなのか、葉月商店街の人くらいにしか知られていないのだが、凪は名古屋と岐阜では有名人だ。知名度の差が大きく出ている。降谷社長が私と凪を組ませたのは、私の名前を売るためでもあったと知る。しかしながら、そう簡単にはいかないのが宣伝だ。


 飲み会のようにテーブル席に座る常連がアイリッシュコーヒーを飲み、顔を真っ赤にしながらショコラブリーのことを口々に語る。親戚の集会と同じノリだ。


「いやー、それにしても璃子ちゃんが凪ちゃんと同じユニットになるなんてねー。将来的にはうちの息子に嫁いでもらおうと思ってたんだけど、これじゃ当分は無理かもねぇ~」

「でも璃子ちゃんのチョコ作り、まるでプロの腕前だよねー」

「どこかに嫁いだら、毎日お菓子を作ってもらえるんだから、羨ましい限りだよ」

「まあアイドルは持って20代半ばまでだし、それが終わったらいよいよ結婚だな」

「気が早いってー。まだ14歳だよー。まあ10年後が楽しみだね。良い嫁さんになるよ」


 常連の1人が私に顔を向けながら言った。私は苦笑いを浮かべながら会釈するしかなかった。


 正直に言えば虚しい。私の特技が仕事のためでなく、家庭内で役立てるための能力としてしか見られていないのだ。アイドル活動にファンが集まってくれるのは嬉しいが、結局は性的コンテンツとしてしか見られないのだろうか。見てくれじゃなく、中身で勝負したいのに。


 お兄ちゃんが何故嫁という言葉を嫌うのかがよく分かった。


 私は女性である以上、社会的には誰かに嫁いで子供を生むことが求められている。うちは男女平等が進んでいるために分からなかったけど、みんな口では男女平等を謳ってはいるが、他の家は事実上男性が主役で、女性は都合の良い召使いでしかないことが見て取れる。仕事をしていてもそう感じることがよくある。上司と呼ばれる人はほとんどが男性だ。


「そういうの……良くないと思います」

「「「「「!」」」」」


 凪が氷のような一言を発すると、周囲の注目が一気に集まる。


「そういうのって?」

「皆さんは璃子が誰かに嫁ぎたいと言ったところを聞いたんですか?」

「いや……聞いてないけど」

「本人にその気があるかどうかも分からないのに、勝手に将来を規定するのはどうかと思います」

「規定ってねー、女は男に嫁ぐのが幸せってもんでしょ。アイドル活動やってるのも、将来のお婿さんを探すためって人いるよねー。俺が好きだったアイドルはみんな結婚しちゃってるよー。璃子ちゃんがチョコ作りしているのがパティシエになるためなのは知ってるけど、結婚したら寿退社して、旦那さんに料理を作るんだから、良い嫁さんになるよって言ったんだよ」

「女性が召使いのようにしか生きられない時代は変わります。璃子がずっとチョコ作りの技術を磨いてきたのは、ショコラティエになるためではあっても、誰かに嫁ぐための花嫁修業じゃないんです!」

「まあまあ、落ち着いて。ねっ」


 マスターが慌てて威圧のオーラを放っている凪を宥めた。


 彼女の腕はプルプルと震え、今にも手が出てしまいそうだ。


 凪が席に着くと、デミグラスオムライスを平らげ、1杯のコーヒーを飲み干した。普段は見られない凪の一面がまた見えた。凪らしくないと言ってしまえばそれまでだが、私も凪に一定のイメージを押しつけてしまっているのではないかと感じた。誰もが属性に対する漠然とした偏見を持っている。


 誰かにイメージを押しつけるのはやめよう。


 ちょっとした思い込みが、人知れず誰かを困らせているかもしれないのだから――。


「あーあ、常連さん帰っちゃったー」


 優子さんがからかうように言った。凪ほどの人が相手でも簡単に距離を詰められるのが羨ましい。


 凪は俯いていたが、勇気を振り絞るように顔を上げ、マスターと目を合わせた。


「……あの、さっきはお騒がせしてすみませんでした。誰かが言い返さないと、ずっと同じ世の中が続くと思ったんです。璃子は大人の対応でしたけど、顔が苦しそうだったので」

「いいよいいよ。常連さんもちょっと酔ってたからねー。でも本気であんなことを考えているわけじゃなくて、あくまでもあの人なりの不器用な期待だから、気にしなくていいよ」

「強制力がないから放っておけばいいと言いたいのは分かります。ただ……ああいった場面で、誰も声を上げてこなかったからこそ、平成になった今でも、昭和の延長戦が続いていると思うんです。あたしがアイドルになったのは、昭和の延長戦を終わらせるためなんです」


 覚悟を示すように、凪は瞳を大きく見開いた。


 そんな理由があったとは知らなかった。凪の身にも何かあったのだろうか。


「なるほどねー。確かに今も男性社会だし、女性が少なからず割を食っているところはあるかもしれないね。実は金華珈琲でも似たような問題があったんだよ。うちの先代は社会問題に人一倍敏感な人で、金華珈琲を創業する時、うちは一切禁煙だと言って禁煙規則を始めて、当初はそんな店売れないだろうという下馬評だったけど、それを跳ね返すかのように、前々から煙草嫌いだった人たちが常連として根付いたんだよ。世の中を変えようと思うと、結構敵だらけのイメージが強いけど、普段は目立たないだけで、味方になってくれる人も大勢いる。僕はそのことを先代から教わった。きっと凪ちゃんにもできるよ。応援してるから、誰もが生き易い世の中を作ってよ」

「はい。任せてください」


 マスターは人の感情が手に取るように分かる。


 人と合意形成する技術は先代マスターであるおじいちゃんから教わったものだろう。


 おばあちゃんが言うには、他にもマスターのような人がいるらしい。


 人を遺すは一流、うちのおじいちゃんはこれを体現している偉大な人だ。私はそんなおじいちゃんの血を引いているんだと自信が持てた。私やお兄ちゃんが世の中の問題に気づきやすいのって――。


「はぁ~、またやらかしちゃった」

「むしろよく言ってくれた。なかなかできないことだよ」

「葉月商店街の人って優しいよね。あたしの指摘を受けても全然怒らないし。余計なお世話だった?」

「そんなことないよ。私が言いたかったことを全部代弁してくれたし、カッコ良かったよ」

「! ――からかわないでよ。恥ずかしいから」


 凪が顔を赤らめながらそっぽを向く。不覚にも可愛いと思ってしまった。


 マスターも優子さんも私たちの雑談を聞き流しながら見守ってくれている。優子さんに至ってはアイリッシュコーヒーで酔ってしまっているが、そんなに美味しいんだろうか。


 うちもこんな雰囲気に包まれた店にしたい。


「あっ、そういえば璃子、今日誕生日だよね。おめでとう」

「凪もおめでとう。後でヤナセスイーツでケーキ買わない?」

「いいねー、優子さんのお店、一度行ってみたかったんだよねー」

「本人はすっかり夢の中みたいだけど」

「あはは……確かに」


 優子さんが顔を赤らめながらカウンター席に突っ伏している。


 凪の顔の赤さは酔いとは違うものだろう。彼女もまた、人知れず戦ってきた1人だ。


 道中で思いを聞いてみれば、凪の将来の夢は父親の後を継ぐことだった。


 しかし、サイバーモール社長に就任できるのは男性のみと社内ルールで決まっている。無論、法律上は凪が後を継いでも問題ないし、天羽社長も息子が引きこもりから脱しない場合は凪を後継者候補として考えているが、親戚からの猛反発が目に見えているという。


 なるほど、凪は男性社会を最も感じやすい位置にいたわけだ。


 サイバーモールはグループ企業として大きな影響力を持ち、社長の一声で大勢の人を動かせる。選挙でも政権をひっくり返すくらいの組織票を持ち、その気になれば間接的ではあるが、世の中の仕組みを変えることも決して不可能ではないという。凪は昭和の延長戦を終わらせるために社長就任が必須と考えていると理解した。父親と不仲なのは、恐らく自分の提案が通らないからだ。


 私たちを待っていたのは……茨とも呼べる……長い道のりだった。


 陰から応援することしかできないが、凪にはお兄ちゃんと同じものを感じた。


 その後、私たちはヤナセスイーツでケーキを買ってから帰宅するのだった――。


 ショコラブリーのデビューは功を奏し、8月に行われるユニフェスへの参加が決定した。


 あの一件以来、ますますショコラティエの名を広めたくなった。まだまだパティシエの仕事の一部くらいにしか思われていないのは、ショコラティエの地位が低い証拠だ。世の中を変えたい想いは私とて同じだ。凪には申し訳ないが、私は引きこもりでも安心して生きていける世の中を作りたい。


 凪は親戚全てを敵に回してでも世の中を変えるつもりだ。私は無用な争いは真っ平御免である。戦い続ける痛みよりも、戦わずにいる痛みの方が辛いと思える人が世の中を変えていくのだろう。確固たる当事者意識を持ち、世の中をことを真剣に考えている人が社会不適合者ばかりとは、何と皮肉なものだろうか。世の中が変われば、お兄ちゃんの日本人嫌いも少しは改善されるのかな。


 普通の暮らしをしている人ほど、世の理不尽に鈍感なのは実感がないからだ。


 少数派であることで不利益を被ったことがないからこそ、問題に気づけないのだとしたら……。

読んでいただきありがとうございます。

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