48粒目「参謀としての責務」
数週間後、ローカルアイドルの仕事にも慣れてきた。
いくつかの番組に出演させてもらう形でアイドルの仕事をこなすと、私に初任給が入った。
恐る恐る口座を確認してみたが、15万円も入っている。現実とは思えなかったのか、今度は引き出して指で数えてみる。やはり15万円ある。この手の業界には詳しくないが、高い方なんだろうか。
13歳の子供のお小遣いとして考えれば高額だ。葉月珈琲の売り上げが芳しくない中、臨時収入であったとしてもありがたい限りである。私も遂に税金を払う立場になったかと、内心ホッとするばかりではある。たとえ店がピンチになったとしても、しばらくはアイドル報酬で持つだろう。
経費にすれば節税できるし、少しはお兄ちゃんに貢献できる。
お兄ちゃんは6月下旬からヴェネツィアに行くが、旅費を作るだけの余裕はできた。家計費は私が負担するとして、葉月商店街でお手伝いをして余った食材をただで持ち帰り、将棋教室の特別講師として稼いだ額を合わせれば、実質20万円程度の収入になる。私の将来の夢、引きこもりの道はしばらく後回しになるだろうが、料理番組のお陰か、ショコラティエとしての修業にはなる。
一方で私の知名度は大して上がらなかった。
理由は人々のテレビ離れが進んでいたからだ。多数派を占める人が挙ってテレビを見ていたのは20世紀までの話である。この頃はビデオゲームが徐々に受け入れられていった時代であり、SNSが普及していく黎明期でもあった。地元テレビ局は焦っていただろう。
視聴率を取れなければ未来がない。そのためなら手段を択ばないテレビ局もあるだろう。
ソロ活動もしているが、凪とは度々コラボ企画という名目でコンビを組んだ。
しかし、私は最悪の事態の1つを目の当たりにする――。
ここに所属するアイドルの大半は私より年上で、平均年齢は18歳といったところ。学業や他の仕事との兼ね合いであることがほとんどで、ローカルアイドルの仕事一本に絞っている者はいない。凪は高校進学予定と聞いたが、高校在学中に上京することを目指していると凪は言った。アイドルにはタイムリミットがある。遅くても大学卒業前までにアイドルにならなければ手遅れになることがほとんどだ。
「ねえ、あの葉月璃子っていう子、なんかウザくない?」
「あー、確かに。新人のくせに調子乗ってるよね。凪さんに対して馴れ馴れしいし」
「そうそう。社長からも気に入られてるし、何様のつもりなんだろう」
タレントップ所属の同僚たちが何かを呟いている。
私にとっては先輩にあたる。身内を除けば同級生としかロクに接していないのか、先輩や後輩に対する扱い方が分からない。お兄ちゃんが言っていた『同級生症候群』という言葉の意味を身をもって思い知った。社会に出れば、老若男女を問わず関わることになるが、学校は同性かつ同級生との接し方しか教えてくれないもので、部活にいても同じ学年同士で固まることも少なくない。
先輩には敬語、同級生と後輩には対等語を使えばいいことだけは感覚的に分かるが、年齢や性別の違う相手と仲良くする方法が分からないのだ。適度に距離を置くのが精一杯で、見えない壁が私のすぐそばで光っているように感じる。異性や違う世代の人ともっと話しておけばよかったと、今更ながら後悔するが、そんなことができるほど、世間は寛容ではない。学生時代に学んできた常識や能力が社会とまるで噛み合っていない。この障害とも呼べる現象に名前をつけたお兄ちゃんも当事者だ。
話している内容はあんまり聞こえないが、良からぬことを企んでいる声質なのは分かる。私は読書に集中しているものの、聴覚で周囲の様子を観察することができる。
恐らく何も聞こえていないと思わせているのがミソだ。
迷彩戦略は永続的に続く。相手の1つ1つの言動全てに攻略のヒントがある。
「凪さんも凪さんだよ。あんな珍竹林のどこがいいんだか」
「ちょっとー、聞こえちゃうってー」
「噂で聞いたんだけど、あの子ショコラティエを目指してるんだって。一応意味も調べたけど、変に横文字使いたくなる年頃なのかねー。ここにいたってショコラティエになんてなれるわけないし、チョコ作りをさせてくれるのは最初くらいっしょ。その内仕事に嫌気がさすかもよー。何せ例のイベントにはまず耐えられないだろうし」
横文字って言われても……訳語が存在しない以上どうしようもないんだけど……。
彼女たちは私に大きなヒントをくれた。私の次の目標は、ショコラティエの知名度を上げることだ。
調べなくても意味が分かるくらいの単語にしてみせる。せめてチョコレートくらい有り触れた単語にしたいと思った。いや、どうせなら子供たちの将来の夢にショコラティエを入れるくらいにはしたい。そんなことを考えながら、私は作ってから冷やし固めたヘーゼルナッツチョコレートを口に頬張った。溶けないようにチョコを入れる容器の周りに氷まで完備している。
やはり冷やし固めたチョコは美味い。砕いたヘーゼルナッツを入れていることもあり、しっかりとした歯応え、ボリボリとした食感を楽しめる。昔なら市販のチョコを買っていたが、自分で作る方が結果的に経費も安く済む。成分の割合や分量も自分向けに調整できる。市販のチョコは糖分が多かったり、食品添加物が使用されていたりして不安である。今はもう食べていない。自分で作る方が安心できることに気づいたきっかけは、イマセベーカリーの経営理念である健康志向だった。
イマセベーカリーのホットドッグに使われているフランクフルトは色が白く、防腐剤や着色料が一切使われていない。わざわざ地元のソーセージ職人から取り寄せて使っているという。単なるオーガニックブームではなく、健康に良い食材を使わなければならないという純粋な使命感からだ。
菓子パンに使われている生クリームも、蕎麦粉を使ったカロリー控えめの商品で、他にも米粉を使うことで、小麦粉アレルギーを持った人に配慮したパンもある。早苗さんが言うには、パンの本場フランスでは、小麦粉アレルギー患者の数が少なくないことを知り、創作に至ったという。
早苗さんに感銘を受けた私は健康に良いチョコ作りを心掛けた。
初めて出演した料理番組にも、食品添加物を一切使わないボンボンショコラを出した。見た目こそあまりパッとしないが、品質には自信がある。ローカル番組なだけあって視聴率は低いが、健康志向に前向きな視聴者から好評を得た。ミネラルが豊富で栄養価が高い黒砂糖、きび砂糖も考えたが、番組では善玉菌を活性化させる効果があるオリゴ糖が含まれる甜菜糖を使用した。精製されていない糖は血糖値を緩やかに上昇させる効果もある。手の込んだチョコレートは当然値段も高く、店で売った場合の値段を聞かれた時は苦笑いしながら額を答え、スタジオから笑いが飛び交った。
降谷社長が大広間に入ってくると、早速私に歩み寄ってくる。
「璃子ちゃん、ちょっと来てくれ」
「は、はい」
急いでついていくと、社長室で2人きりになる。
降谷社長が席に着き、両肘をテーブルの上に乗せながら私を見上げた。
「次の仕事やけど、CM出演が決まったで」
「!」
社長室の空気が一気に凍りつく。CMの話が出たのは初めてだ。
「CMですか?」
「何でも、あのサイバーモールの社長が璃子ちゃんの出てる番組を見て、あんたのことを大層気に入ったらしくてな。そこで社長直々に璃子ちゃんへのオファーが来たんや。こんなチャンス滅多にないで。あの大手グループやったら、CM出演料もめっちゃ高いやろうし、うまくいけば1本越えやな」
「1本越え?」
「そうや。CM1本で年収1000万越え。ええ話やろ」
「1000万越え……」
一瞬、目の前が薔薇の花束に覆われた。こんなにうまくいっていいのだろうか。
――この私が、早くもそんな大きな仕事にありつけるなんて。
これはきっと、神様が私に与えてくれたチャンスかもしれない。稼ぐことさえできれば、葉月珈琲を助けることもできるし、両親を楽させることもできる。そればかりか、葉月商店街を復興することだって夢じゃない。私の名が売れれば、縁の地である岐阜に多くの客がやってくる。葉月珈琲に来てもらうことも不可能じゃないが、まずはお兄ちゃんの日本人恐怖症をどうにか克服させる必要がある。
何故私をそこまで買ってくれているのかまでは分からない。大手グループのCMなら、全国放送であることが十分予測できる。有名になったところで、葉月商店街の宣伝ができれば御の字とは思うが、私らしい生き方ではないと直感する。またしても迷いが生じてしまった。
できることなら、目立つことなく、お兄ちゃんの参謀でいたい。
家に引きこもって平和な余生を送る夢からは遠ざかる……。
「……」
「何や、嬉しくないんか?」
「あっ、いえ……アイドル冥利に尽きます」
「サイバーモールの社長、天羽亮は名古屋の人で、関東地方から関西地方までショッピングモールを展開してる凄腕社長やけど、本業は全国各地の客を相手にした通信販売。サイバーモールは電子商店街っちゅう意味で、文字通りインターネット上の商売を得意としてる大手グループや」
「天羽って、もしかして――」
「そうや。お察しの通り、天羽社長はうちのトップエースアイドル、天羽凪の親父や」
「親子の仲は悪いみたいですけど」
「なっ、何で知ってるんや?」
「社長令嬢でしたら、すぐにでも上京して、どこかの大手事務所にコネで入ることもできたはずです。なのにそれをしなかったのは仲が悪いから」
「ハハッ! 凪ちゃんが気に入るわけや。やっぱりあんたやったら、凪ちゃんと合うかもな」
回転椅子を動かして後ろを向く。凪と天羽社長との間に何があったのだろうか。
父親が過干渉な性格なのは凪の話を聞いて知っていたが、サイバーモールの社長とは思わなかった。
事業のやり方からしてワンマン社長。周囲の反感を買ってもお構いなしに事業拡大を進める性格は数多の店舗を閉店に追いやり、周囲のライバル企業を倒産させてきた。
一方で凪のライブは癒しそのもので、父親とはむしろ真反対の方針だ。仕事には人間の全てが表れるものだ。もしこのことを凪が知ったらどう思うだろうか。
「あー、そうそう、この仕事やけど、凪ちゃんには内緒やで。璃子ちゃんの推理通り、あの2人は仲が悪いからな。凪ちゃんが来てからは度々サイバーモールから仕事を貰えるようになったんや」
「凪にデュオを組ませたい理由もそこにあったりしますか?」
「そうやな。凪ちゃんは才能もあるし、うちがなくてもどこかの芸能事務所に受かって、それなりに活躍してたと思う。でもあの子には決定的に欠けてるもんがある。切磋琢磨の経験や」
「それなら上京した場合でもできると思いますけど」
「大都市の芸能事務所は変わってんねん。俺も何度か仕事で東京に行ったことがあるから分かるけど、全国各地から集められたエリートの卵や。みんな自分が成り上がることしか考えてへん。切磋琢磨するどころか、蹴落とそうとする人間ばっかりや。あくまでも俺の見立てやけど、凪ちゃんはおとんから逃げるために上京することを考えてるみたいや。けどその程度の志やったら、磨けるもんも磨かれへんねん。大都市の芸能人は、ほんまもんの志を持っとるからな」
「凪といい勝負ができるライバルがいれば、本当の意味で志を持つようになるということですか?」
「そういうことや。まっ、あいつが本気になれるかどうかは……あいつ次第やけどな」
仕事内容を聞いてから帰路に就いた。
話を聞く限り、降谷社長と天羽社長の間に深い関係はなさそうだ。
タレントップを通して私個人にオファーを出すということは、凪に知られてはまずい事情があるということだ。一度会って話してみれば、何か分かるかもしれない。
ヤナセスイーツに寄ってお手伝いをしようと赴いた。
ガラス越しに莉央さんが苺を頬張る姿が見えた。
「あっ、璃子ちゃん、やっと来てくれたー」
「莉央さん……私、その――」
「おめでとう。受かったのが璃子ちゃんで良かった。正直に言えば、私も受かりたかったけど、これで見切りがついた。今後は就職活動だし、内定取るまではヤナセスイーツを休みがちになるけど、璃子もローカルアイドルの仕事頑張ってよ。応援してるから」
「ありがとうございます。ローカルアイドルの仕事は資金稼ぎのためですから、あくまでも成人するくらいまでの間ってことになりますけど、自分のショコラトリーを持てるようになりたいです」
「ショコラトリー?」
「チョコレート専門店のこと。璃子ちゃんはあず君に似て、洒落た言い方するから」
「あぁ~、似た者兄妹なんだねぇ~」
優子さんと莉央さんがジト目で私を見つめている。
本当は葉月珈琲の貴重な資金源としてだけど。
――それにしても優子さん、最近はいつになくお兄ちゃんのことばかり気にしている。好意を持っているのは以前から知っているが、拗らせてしまわないか心配だ。
莉央さんは決心がついたようで、既に何社かの就職説明会へと赴いていた。
夏場になれば適性検査と面接試験のオンパレードだ。炎天下の中を渡り歩き、取れるかどうかも分からない内定を他の学生と奪い合う。考えただけでも反吐が出そうだ。就活生を見る度に思い出すお兄ちゃんの言葉が、傷口に塩を塗り込まれたように身に染みる。1つ変に思うのは、高学歴を争ってきた学生たちが、就活になるとまた横一線になり、同じ土俵で戦っている点だ。
莉央さんといい、凪といい、元々は名古屋にいた人が岐阜に移り住んでいる謎が気になる。
1人のおかっぱ頭の茶髪男性が自動扉が開くと同時に足を踏み入れてくる。
その目は冷たく、常に真実しか見ないかのように、周囲の光景には見向きすらしない。
「失礼する」
「いらっしゃいませー」
「そこの女子に用がある。葉月璃子さん、君には一度目を通しておきたかったんだ。俺は天羽亮。普段はサイバーモール代表取締役を務めている」
「「「「「!」」」」」
周囲の人が一斉に驚く。だが莉央さんはすぐに嫌悪の目に変わった。
「ヤナセスイーツによく現れると聞いていたが、本当にいたとはな」
「あの、私に何の用ですか?」
「用件は他でもない。少しだけ時間を取れるかな?」
「はい、構いませんけど」
天羽社長が注文を済ませると、2人用に設けられた丸い木造テーブルに対面するように腰かけた。
小さなフォークを手に持ち、スフレチーズケーキを嗅いでから口に含む。
ヤナセスイーツで1番の人気商品ということもあり、私に1番のお勧めを聞くと、天羽社長は何のためらいもなく注文した1品だ。しかしながら、1切れ食べ終えても特に驚く様子はない。
「テレビで君の活躍を見た時に確信を持った。スターの才能がある。うちで鍛え上げれば、間違いなく世界に通用するトップアイドルになれる。ついてはサイバーモールの宣伝広告塔になってもらいたい」
「いきなりそう言われましても、私には他にやりたいことが――」
「家の事情を調べさせてもらった。両親共に非正規雇用で近くの店で働いているそうだな。君には兄がいると聞いた。ここ最近は姿を見た人がいないようだが」
「学校でのトラウマで、普段は家に引きこもってるんです」
「引きこもりか、大変だな。兄を養うためにタレントップで働いているのか?」
「それも理由の1つです……」
「なら話は早い。サイバーモールには数多くの名優を輩出した芸能事務所がある。決心がついたらここに連絡を寄こしてくれ。失礼する」
「……」
用を済ませると、1枚のメモを残し、左腕の腕時計を確認しながら席を立つ。
白みがかった灰色のスーツ姿にスラッとした風貌、堂々とした振る舞い。
家は間違いなく資産家だ。押しつけがましい態度はどうかと思うが、実に合理的な話ではある。メモを確認すると、有力な芸能事務所は東京にあることが分かった。天羽社長が求めているのは東京にある事務所への移籍だ。報酬もたっぷりあるだろうが、それは葉月珈琲から離れることを意味する。
私が成功したところで、葉月珈琲が潰れてしまえば、お兄ちゃんは一生引きこもりだ。
陰で支え続けることもできるが、それでも赤字が続けば限界が来る。何よりお兄ちゃんから離れてしまうのが嫌だ。放っておくなんてできない。1人にしたら何をやらかすか……。
「あれが敵の大将か」
「敵の大将って、大袈裟だなぁ~」
「だって私がいた望月商店街を潰した張本人だよ。バイトじゃなかったら文句言ってた」
「それより、璃子は移籍するの?」
「一応考えてますけど、貧困から抜け出すのが本来の目的であることを考えると……正直、迷ってます」
「璃子が奥歯に物が挟まったような言い方するなんて珍しいねー」
「羨ましいなー。私だったら迷わず上京するけど」
「サイバーモールは嫌いじゃないの?」
「それはそれ、これはこれ。敵から稼いだお金で商店街を再興する。悪くない手でしょ」
にっこりと不敵に笑う莉央さん。やはり思うところはあるようだ。
サイバーモールが葉月商店街から約5分の場所にショッピングモールを展開してからは、商店街全体の売り上げが落ちている。このままでは望月商店街の二の舞を踏むと言いたげだ。
私としてはここに残り、お兄ちゃんを支えながらショコラティエを目指したい。
さっきは咄嗟に自分のショコラトリーを持ちたいと言ったが、あくまでもここから10年間の利益が上振れたら話である。サイバーモール傘下の芸能事務所に移籍すればそれも可能だろう。だが全国の商店街に事実上敵対している大手ショッピングモールの勢いを更に加速させる格好となるのはどうなんだろうか。生活が懸かっていることを考えれば、大人しく宣伝広告塔になればいいんだろうが、これ以上お客さんが吸われていくのは腹に据えかねることもまた事実。
優子さんと莉央さんが雑談を続ける中、私は悩みを忘れようとするかのように雑用を始めた。ケーキの食材は重く、力仕事ではあるが、この作業にもようやく慣れてきたところだ。毎日のように雑務をこなしているせいか、以前よりもウエストが細くなってきた。
腰が括れてくる一方で、胸はますます大きくなっている。
成長期ということもあり、毎日がっつり食べてはいるが、その割に何も変わらないばかりか、体重が減ることさえある。振り付けの運動をしすぎただろうか。少し先の未来を決める余裕さえない。迷っているというよりは、目の前の仕事をこなすのに精一杯で、何も考えられないのだ。
優子さんが心配そうに私の隣に立つ。
「璃子ちゃん、最近ボーッとしてること多いけど、ちゃんと休んでる?」
「いえ、毎日色んな所で働いているので」
「えっ、休んでないの? 子供の内からワーカーホリックになったら、成長に悪影響だよー。ちゃんと休むのも仕事の内だからね。夜になったらちゃんとすぐに寝ること。せめて夜の家事くらい、あず君に任せてみたら? 璃子ちゃんはしっかり者だけど、全部1人で抱え込もうとするのは、あたし的に良くないと思うなー。あず君はできないことをすぐ人に任せるでしょ」
「……」
流石は優子さん、私たちのことをちゃんと見ている。
起業はお兄ちゃんのアイデアだが、面倒な作業は全て人任せだ。
人に迷惑をかけまいと、私だけは全部自分でやろうと思っていた。優子さんが止めてくれなければ、私は近い内に倒れていたかもしれない。目立つことを良しとしなかった私なりの抵抗だったのかも。
この日以降、私は夜の家事をお兄ちゃんに任せるのであった。
読んでいただきありがとうございます。
気に入っていただければ下から評価ボタンを押していただけると嬉しいです。
天羽亮(CV:津田健次郎)




