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社会不適合者が凄腕のショコラティエになっていた件  作者: エスティ
第3章 ローカルアイドル編
44/70

44粒目「妙な違和感を覚えた日」

 3月下旬、卒業シーズンが刻一刻と迫ってくる。


 お兄ちゃんは晴れて中学卒業となるが、進学する気は全くない。


 生きる力を奪い、奴隷を製造する工場と思っている者にとっては余計な回り道でしかない。きっと確固たる自分がない人が行くものだ。所謂普通の人に向いている人は、大学まで行って就職するのが無難な道だろう。能力の格差なんてものは昔からあるが、今じゃ普通の生活をしているだけで勝ち組だ。


 何不自由のない生活ができるだけで幸せと思える時代だ。


 無論、ハードルは年々上がっている。世界中の情報を知れるというのに、インターネットが使えるかどうかで大きな情報格差が生まれてしまう。足を速くしたければ、陸上選手の走り方を見て学ぶという手が使えるのだ。これからこのことを知っている者たちと知らない者たちの格差が浮き彫りになっていくだろう。お兄ちゃんを見ていれば分かる。50年前の世代であれば一生知らなかったようなコーヒーの情報を手に入れ、葉月珈琲を成り立たせている。


 小学生時代の誕生日プレゼントにパソコンを欲しがっていたお兄ちゃんは先進的と言える。


 そんな時、何かを迷っている様子のお兄ちゃんが話しかけてきた時だった――。


「6月下旬にデザインカプチーノの世界大会に招待された」

「えっ……凄いじゃん!」

「宿泊先だけ提供してくれるんだってさ……もし参加するならヴェネツィアに行くことになるんだけど、璃子は1人でも平気か?」


 一瞬絶望的な顔になってしまった。本当のことを言えば不安だが、誤魔化すように笑みを浮かべた。口では何とでも言えるが、やはり心配でしかない。


「……平気だよ。私のことは気にせずに行ってきたら?」


 お兄ちゃんの耳元で囁いた。本当は行かせたくないが、活躍すれば宣伝になる。


「分かった。じゃあ早速登録する。ちゃんと留守番しとけよ」

「もう中学生なんだから大丈夫だよ」

「学校行ってないのにか?」

「それは言わない約束でしょ」

「てへっ、冗談だ」


 お兄ちゃんが猫の手を頭に添えながら片目を閉じて舌を出す。


「キモッ……やめてくれる? そういうの」


 怖気が全身を駆け巡るように走る。つい冷たい声が出てしまった。


「酷いなー。一応僕、ネットじゃアイドルだから」

「へぇ~」

「それと、僕がいない時はあんまり外出しないようにな」

「何で?」

「うちの住所が親戚か親戚の知り合いに特定でもされたら面倒なことになる」

「それはいいけどさ……いつまで隠すつもりなの?」

「……」


 核心を突いた質問をする。お兄ちゃんは回答に詰まり、しばらくの間沈黙が続いた。


 結局、お兄ちゃんは5年以内に借金を返すとのこと。お兄ちゃんが外国に行くと言った時、どう対応したらいいのか分からなかった。変に拒否すれば逆上するのではないかと思い、家庭の事情も顧みないまま背中を押してしまったが、不安になった私は、お兄ちゃんの布団に潜り込んでしまった。


 寝ぼけていたのか、胸を掴まれてしまった。


 気まずくてすぐに離れたが、私は気づいてしまった。


 お兄ちゃんが私に依存しているように、私もお兄ちゃんに依存している。


 いつも当たり前のように一緒にいるお兄ちゃんから離れるのが怖い。もし外国で何かあったらと思うだけで、脊髄反射で反対したくなるが、せっかくお兄ちゃんが久しぶりに外の世界に出ようと思えたのだから、その気持ちを邪魔したくなかった。


 人が引きこもりになることは心配するのに、自分は引きこもりになることを望むなんて……自分がつくづく変だと思った。やはり私は普通ではない。一生分稼いでから引きこもりになる分には問題ないが、何1つやるべきこともやらずに引きこもるのは、どうしても逃げている気がするのだ。


 他の誰でもない……自分自身から。


「璃子ちゃん、どうかしたの?」


 作業中の優子さんがボーッとしている私に気づき、疑問に思いながら声をかける。


「いえ、大丈夫です」


 ヤナセスイーツでケーキ作りをしている最中だというのに、何故だが身が入らない。


「もしかして、あず君のこと?」

「……分かるんですね」

「何年のつき合いだと思ってるの? またあず君が我が儘でも言ったとか?」

「まあそんなところです。海外に行って、もっと世の中を知りたいって言うんです」

「へぇ~、海外ねぇ~。行き先は決まってるの?」

「コーヒーの本場に行くとか」

「じゃあヨーロッパか中南米ってとこかなー」


 莉央さんが話に割り込むように話しかけてくる。


「私は外国なんて行きたくないですよ。どんなトラブルが待っていることやら」

「出会いを恐れていたら、人生をつまらないものになっちゃうよー。もっと楽しまないと」

「楽しみ方を知っていたら、苦労なんてしませんよ」


 8切れに分けたケーキを1切れずつショーケースに入れていく。


「璃子ちゃん、オーディションの件、考えてくれた?」

「……別に構いませんけど、どんなオーディションなんですか?」

「最近できたばかりの『タレントップ』っていうとこ。4月から新人タレントを発掘するためにオーディションやるんだって。しかも22歳以下限定だから、私にとってはラストチャンスなの」

「私を誘った理由は()()()()を組むためですか?」

「――優子ちゃん、オーディションのこと話したの?」

「一言も。璃子ちゃんは観察が鋭いから」


 莉央さんはタレントップのパンフレットを持って来てくれた。


 優子さんとは仲が良いようで、生まれた年は違うが、同じ学年のようだ。


 既に21歳を迎え、僅かな望みに全力を尽くす覚悟はできている。


 タレントップは芸能事務所としてはまだ黎明期だが、文字通りトップクラスのタレントを輩出したいという願いから名づけられた。地元岐阜市を盛り立てるためのローカルアイドル路線のようだが、まだ所属タレントは数えるほどしかおらず、全国展開する気はないようだ。


 何組かのアイドルユニットを結成したが、いずれも早期に解散している。


 タレントップの降谷栄治(ふるやえいじ)社長は絵に描いたような西洋かぶれだ。


 これ以上失敗を重ねれば事業存続に関わると思いきや、ブランド品のネックレスを何重にも首にかけているあたり、降谷社長の実家は裕福なようで、あくまでも一生分稼いだ後の遊びだ。顔色に余裕があるのは自分が選ぶ立場だと思っている証拠だ。部屋の奥に飾られている壁画には葡萄畑が描かれ、机の上には開けたばかりのコルクにオープナーが刺さっている。ワイン集めの趣味があるようだ。


 結論、降谷社長は本気でアイドルを売り出す気がない。


 何の考えもなしに就職レールから外れ、長くない期間でユニット解散となれば人生詰むまである。


 今のところ、ソロデビューを果たしたタレントはおらず、あくまでも複数人以上で組ませることに拘りがあるようだ。莉央さんはオーディションに受かった後、誰かと組んでアイドルユニットとしてデビューすることを考えている。たとえ失敗しても、大学卒業までに内定を勝ち取れば、就職レールに戻ることはできる。兼業を認めているのはそのためだろう。


「小学生から応募できるんですね」

「一応子役という名目でアイドル活動ができるんだけど、基本的には岐阜市宣伝のためのプロモーションビデオの撮影が中心になるの。歌がうまい人は歌手、踊りがうまい人はダンサー、特に人気の高い人は雑誌の顔になったりするし、人気が出て発行部数が上がればボーナスも出る。所謂歩合制で、完全な実力勝負なの。璃子ちゃんは見所あるし、すっごく可愛いから、一緒だと心強いなー」

「まあ、構いませんけど、私にも予定があります。他の仕事に支障をきたす場合は辞退します。それでもいいなら引き受けます」

「って言ってるけど、莉央ちゃんはどうする?」

「うん、それでいいよ」

「でもさー、仮に2人が合格できても、同じアイドルユニットになれるとは限らないんじゃないの?」

「それがさー、合格した人たちは、同期の新ユニットを組むらしいの」


 握り拳を小刻みに震わせながら莉央さんが言った。


 ウキウキとしている彼女の笑顔はヤナセスイーツを賑わせた。


 オーディションに受かれば、私は更に忙しくなる。葉月珈琲をあまり手伝えなくなる。葉月珈琲はお兄ちゃん1人でもどうにか回るが、それは葉月珈琲に繁盛期が訪れないからだ。店を守るために稼いでいるはずだが、いつの間にか店以外の働き方がメインになってしまっている。


 莉央さんが私と一緒に応募することが決まり、手続きは莉央さんがしてくれるとのこと。


 複数人で一緒に応募する際は履歴書を書く必要がある。


 保護者であるお父さんかお母さんに了承を得る必要があるものの、お兄ちゃんが持っていた判子を借りて保護者を偽装する。中学生とはいえ、許可を得る必要はない。私は両親から独立している。経済的自立はできていないが、いつまでも頼るわけにはいかないし、何より安定志向の両親にオーディション受けに行くなんて言ったら確実に反対される。


 私の夢は引きこもりのはず……なのにどうして……。


 外の世界を知ってから引きこもってもいいかもしれない。


 莉央さんの過去話が続く。アイドル事務所のオーディションは何度も受けているようで、大手事務所にも応募したようだが、実を結ぶことはなく、競争力の低いローカルアイドル路線に切り替えた。だがアイドルでいられる期間は短い。若さなどすぐになくなる。


「アイドルになった後、セカンドライフとかは考えてるんですか?」

「何言ってんの。そーゆーのはその時になってから考えるの。今の私と未来の私は価値観も変わってるだろうし、人生経験も積んでるだろうから、考えたって意味ないの」


 今が良ければそれでいいと言わんばかりに莉央さんが言った。


 こういうところはお兄ちゃんによく似ている。まずはやってみて、それから考える。


 私には到底できない。行動力があると言えば聞こえはいいが、向こう見ずな気がしてならない。


 気を取り直してザッハトルテの調理に移る。


 私の好きなチョコレートケーキだ。小麦粉とバター、砂糖、卵、チョコレートなどで作った生地を焼いてチョコレート味のバターケーキを作り、アプリコットジャムを塗った後に表面全体を溶かし、チョコレート入りのフォンダンで糖衣掛けをする。こってりとした濃厚な味わいを特徴とする。ウィーンのホテル・ザッハーの名物菓子であり、チョコレートケーキの王様と称される。しかしバターとチョコレートに砂糖とジャムで本当に濃厚に仕上がるため、しばしば口直しとして、無糖の生クリームを添えて食べる。アプリコットジャムは店によって流派があり、ヤナセスイーツの場合はアプリコットジャムをスポンジケーキに挟み、更に表面にも乗せるマシマシ仕様である。


 ダークチョコレートをふんだんに使い、甘味の中に苦味を含ませる。


 甘さと苦さの狭間にあるような味、あえて言うならば、人生の味だ。


 昨日完成させてから冷蔵庫で冷やしたザッハトルテを取り出したところで、1人の見覚えある男子が入ってくる。他でもない荒井君だった。この前の騒動で警察に連れて行かれたはずだが、すぐに釈放されたと聞いた。お兄ちゃんが権力を嫌う理由がよく分かった。


 ――どうしよう……気まずい。あんなことがあったばかりだし、スルーしてほしい。


「……」

「あっ、葉月」

「知り合い?」

「この前私を思いっきり殴った人です」

「ええっ! もしかして……DVとか?」

「違います。そもそもつき合ってません」


 申し訳なさそうに俯きながら私を見る荒井君。


 白黒のメイド服姿を最も見せたくない相手だ。童貞を殺す服とは言ったものである。


 まるで生気を失ったかのように呆気に取られているが、あからさまにジロジロ見られるのも恥ずかしいことには気づいていないようだ。営業のために白黒のメイド服を着てからは客足が幾分か回復した。私でも少しは貢献できていると思える嬉しさがあるからこそ着ていられる。


「あの……この前は……すまん」

「別に構いませんけど、その代わり条件があります」

「どんな条件?」

「二度と私に関わらないこと。そうしていただければ、水に流します」

「……」


 だんまりを決め込みながら被害者ぶるようにまた俯く荒井君。


「まあまあ、せっかく再会したんだから、ここは仲直りしよ。ねっ?」

「元々直す仲なんてありませんけど」

「じゃあさ、璃子ちゃんが持ってるこのザッハトルテ奢るから、3人で分けようよ」

「莉央さん……」

「仲良くしろとは言わないけど、社会に出たら、気が合わない人ともつき合うことを覚えないと、ビジネスの場で苦労するよ。もっとも、私はすぐ文句言っちゃうけどね」


 莉央さんがボソッと私に耳打ちしながら片目を閉じる。


 私はそんな莉央さんにジト目を向けた。彼女の言い分にも一理ある。


 みんな仲良しとは、あからさまに嫌わないことだ。これから荒井君のように、倫理観や立ち振る舞いに問題を抱えた人と何度も出会うのだと、莉央さんは示唆している。


 私はそんな日々を過ごしたくないがために、引きこもりを目指しているのだ。


 チョコ作りは設備さえ整っていれば引きこもっていてもできるし、ショコラトリーなら店内で商品となるチョコレートを作った後、雇ったスタッフにショーケースまで運んでもらえれば、ほとんど誰とも関わらず、平和に過ごすことができる。1つ方向性がハッキリした。


 ゴールは見えたが、途中の道筋が見えない。


 それはきっと自分で作っていくものなんだろうが、創造は私の苦手分野だ。


 予め与えられた条件下であればうまく立ち回れるが、何も条件がない中でサバイバルをしろと言われても困るのだ。お兄ちゃんのように、道が見えているかのような創造はできない。百戦錬磨によって裏打ちされた知識と経験は私にはない。謀攻非戦の私に欠けているのは、人とぶつかり合った経験だ。


 ホール売りにする予定であった円形のザッハトルテをテーブルの上に置く。


「荒井君、これを()()()三等分してみて」

「えっ……三等分? まあいいけど」


 警戒しながらも、荒井君にナイフを持たせた。すると、荒井君は何の躊躇いもなく、右斜め上から縦に真っ直ぐに切ると、今度は左斜め上から真っ直ぐ切ってしまい、結果的に細長くバランスの悪い三等分になってしまったのだ。三等分の真ん中部分に至っては、比較的大きい雑な長方形になっている。


 どうしてドイツの某自動車ブランドマークのように切れないのかと、莉央さんは不思議がるように首を傾げていたが、やはり私が思った通り、荒井君は認知能力に大きな問題を抱えている。


 莉央さんは何も言わず、切ったザッハトルテを3人で分け、真ん中の大きい部分は荒井君にあげた。


 しばらくして食べ終えると、荒井君は家族用にいくつかのケーキを買ってから去っていく。


「……公平にって言ったのに、わざとかな?」

「多分、彼は公平という言葉の意味を理解していません。思ったより深刻ですね」

「あれは相当苦労してるかもねー」

「結構大人しい人に見えたけど、本当にあの人から暴行を受けたの?」

「証人なら山ほどいます。元々は私の同級生に殴り掛かったのを同級生がかわして、その勢いのまま、後ろにいた私に当たったというわけです。私に当てるつもりはなかったんでしょうけど、殴ったら摘まみ出されたり、警察に逮捕されたりして、損害を被ることを想像できないのかと不審に思って記憶を辿っていったら、ある共通点が見つかったんです。彼は常に短絡的で、先を見通した行動ができていなかったんです。さっきのザッハトルテも、ただ3つに分ければいいという単純な発想が反映されていますよね。少なくとも、大きさが違えば不公平になることくらい、普通は想像できるはずです」

「大人の前では普通の人に擬態できるみたいだけど、あれじゃお先真っ暗かもね」

「むしろ今までがラッキーでした。グループ企業の御曹司ということもあって、親以外は誰1人として彼の問題行動を咎められなかったんです。私に対するアプローチも稚拙なもので、交際するために脅迫までしてきたんです。そんなことをすれば、嫌われるってことが分からないんです」


 テストの成績がよく最下位だったことにも説明がつく。


 志望校は高大連携で、勉強ができない生徒でも名前を書けば受かると評判の大学だった。


 きっと苦しんだだろう。親からは将来を期待され、優秀な後継者であることを求められてきた。だが成績が伴わず、何度も叱責され、周囲からも陰では見下されている。そうやって溜まった鬱憤を学校や外の世界で晴らしてきたと考えれば、全ての行動に対して説明がつく。


 今までの問題行動は、恐らく彼なりのSOSだ。


 社会を引っ張っていく存在どころか、むしろ混乱をもたらす存在ですらある。


 人と一緒に仕事ができるような器じゃない。


 浅尾君にちょっと煽られただけで手が出てしまったり、万引きを繰り返したりしているのは、自分が何をしているのかを理解できていないからだろう。これでは反省どころではない。手厚い支援が必要なのではなかろうかと考えたが、世間は彼を勉強ができないスポーツ少年としてしか見ない。受験に落ちれば自己責任と言われるだろうし、挫折を繰り返せば自己嫌悪に陥り、やがて社会を恨むようになる。


 考え過ぎかと思い、気にも留めなかった。


 パッと見は普通の人に見える……それが最大の罠だった。


 ヤナセスイーツから帰宅し、午前12時を迎えた時だった。


「璃子、元気ないみたいだけど、葉月商店街で何かあったか?」

「何でもない。ただ、迷ってることがあって」

「あっちで働くのもいいけどさ、社会経験を積むためって言ってたよな?」

「うん。でも色んな道がありすぎて、定まらないというか、芸能事務所のオーディションに誘われて、受けに行くことになったんだけど、やっぱりだめだよね?」

「別にいいんじゃねえの。そんな機会滅多にないし、僕が璃子だったら行くかもなぁ~」

「まっ、受かる可能性の方が低いだろうけど」

「そんな生半可な気持ちで行くもんじゃねえよ。世の中にはオーディションに応募したいけどできない人だっている。何かのチャンスかもしれねえんだ。目の前の仕事に全力を尽くせない奴が、本当の意味でやりたいことを見つけられるとは思えねえけどな」


 お兄ちゃんがエスプレッソを淹れながら言った。


 常に目の前の仕事に熱心に振る舞ってきたお兄ちゃんだからこそ身に染み渡る。


 どんな客だろうと、自分の仕事で手を抜いたことはない。


 最高級のコーヒーを淹れることに命を懸けているお兄ちゃんにとって、中途半端ほど嫌悪を示す対象はないと言っていい。仕事はできるかできないかじゃなく、やるかやらないかだと言わんばかりだ。


「璃子、1つ忠告しておく……躊躇うな。いざって時には、迷わず行動しろ」


 そう言い残すと、お兄ちゃんはエスプレッソを飲み干し、最初の来客を迎えた。


 外国人観光客限定の店だけあり、客足こそ少ないが、某世界的な動画サイトへのラテアート動画投稿によって、徐々に多くの人に知られ始めていた。


 お兄ちゃんの言葉を肝に銘じ、私は卒業シーズンを終えるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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降谷栄治(CV:木内秀信)

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