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社会不適合者が凄腕のショコラティエになっていた件  作者: エスティ
第2章 模索編
32/70

32粒目「花火大会」

 8月を迎えると、本格的に引っ越しを計画する。


 一度に大掛かりな引っ越しなどすれば、近所の人たちにばれてしまう。


 細切れにするように、少しずつ荷物を移動させる。スーツケースを使えば怪しまれる。お兄ちゃんが異動させたがっていたピアノは、既に夏祭りの繁盛期に乗じて新居に移動させている。多くの屋台に紛れながら移動するのは命懸けだ。私も共犯者である以上、ばれてはいけない。


 いつ親戚にばれるかと思うだけで心臓に悪い。


 近所は花火大会の話題で持ち切りだ。


 夏祭りとは異なり、屋台などの出し物は行わないが、花火セットが全面的に押し出される形で販売されるため、葉月商店街の周辺は花火一色となる。近くの大きな公園では、花火大会の前から親子連れで花火を撒き散らす人々が集まっている。当然のように私も駆り出された。


 花火大会は夏祭りの一環で行う地域が多いが、葉月商店街周辺では理研の関係上、日程を分けて行うことが慣習となっている。夏祭りを先に行い、その稼ぎで花火大会を行うが、全員で儲けることを良しとする葉月商店街らしい慣習である。市議会に対しても大きな影響力を持つ。


 平たく言えば、お山の大将ではある。お陰で夏休みが2日も潰れた。


「じゃあ璃子ちゃん、このチラシを商店街の国道で配ってきてね」


 花火大会実行委員の優香さんが、花火大会の表紙が書かれたチラシの山を渡しながら言った。


「はい。でもどうして私なんですか?」


 珍しく言葉を返した。普段であれば、ただ言われたままに配っていただろうが、今年ばかりは疑問を持ってしまった。私らしくもない。不登校で緊張が解れたからだろうか。


「以前からみんなでチラシを配っていたんだけどね、璃子ちゃんが配るようになって、何度もチラシを他の人から分けてもらっていたでしょ。璃子ちゃんはチラシ配りがうまいみたいだから、安心して任せられるって思ったの。他にも配っている人がいるけど、今年からは人数を限定したの。今年も賞金は璃子ちゃんのものになるかもね。ホントは贔屓しちゃいけないんだけど、学費の足しにしてね」

「……はあ」


 チラシの山を任されると、優香さんは笑顔のまま、すぐに立ち去ってしまった。


 今日もヤナセスイーツでの仕事に従事するようだ。藤次郎さんの体の具合が心配らしい。根っからの職人気質は、体よりも仕事の方に熱心なようだ。チラシの山を配る理由は他でもない。花火大会の宣伝である。チラシ配りを行い、最も多くのチラシを配った人に商店街から賞金が渡されるのだ。夏休みの宿題を終えていることを条件に、子供もチラシ配りに参加することができる。


 賞金は1万円だが、子供にとっては大金だ。


 私には夏休みの宿題がない。というか連絡帳のやり取りすらない。


 来年から行けるかどうかを度々お母さんに聞かれたが、私の返事はいつも同じだった。


 学校側に荒井君と同じクラスにしないことを条件に登校する手はあるが、そこまでして戻ろうとは思わない。不登校になってみてよく分かった。やはり通学というシステム自体が私に合っていない。1週間あれば分かる内容を、わざわざ1年もかけてやるくらいなら、自習の方が理に適っている。


 商店街から少し離れた場所で黙々とチラシ配りを始めた。


 国道沿いの歩行者通路で道行く人に紙を持った手を伸ばすと、人々は喜んで受け取ってくれた。中には1周してもう一度私から受け取る者もいたが、全ての広告チラシを配りきれば問題ない。


 通行人を観察している内に、優香さんが任せてくれた理由が分かった。


 特に男性が受け取ってくれたが、視線が度々私の顔よりも少し下を向いている。


 結論、私は見た目で選ばれた。あまり見られたくないのに、どうしてもこの部分が必要以上に自己主張してくる。最近また膨らんだ気がするし、このまま地面が見えなくなるんじゃないかと心配になる。お母さんも大きいし、やはり遺伝だろうか。


 花火大会のチラシ配りは去年から参加していたが、理由はお兄ちゃんから高級コーヒーの購入資金をどうやって調達すればいいかと相談されたことがきっかけである。物は試しと思い、チラシ配りをやってみたはいいが、思った以上の成果を出してしまった。


 お兄ちゃんにガンプラを買ってもらったこともあり、断れなかった。これはこれでいい経験になったわけだが、恥ずかしいから見ないでほしいと嘆くのは贅沢だろうか。


 チラシは恐ろしいスピードで減っていく。


 少し離れた距離には別の人が同じチラシを配っているが、受け取ろうとしない人もちらほらいる。


 私が配った時は、忙しそうにしている人でも、無視しようとしないばかりか、快く受け取ってくれるのだ。皮肉にも今までの人間観察が活きたのか、ここにきてようやく理由が分かってしまった。学校にいた時は小さく見せるブラを装着していたために気づかなかったが、私服で外にいる時は、妙に視線を感じることが少なくなかった。普通の人は異性の外見を無意識に吟味するらしい。


 私には人の姿が背景くらいにしか見えないが、単なる無関心かもしれない。


 いや、興味を持てるほど、人と深くつき合ったことがないのだ。


 みんな同じように見える。本当は1人1人違うと、頭では分かっているはずなのに――。


 結局、チラシ配りは私が最も多く配り、賞金1万円を受け取ったのであった。


 無論、これも起業資金に回したいが、たまには自分の趣味にも使いたい。残りはお兄ちゃんに回す。理屈ではとても説明できないが、投資したいと思わせるだけの何かを持っているのは確かだ。お兄ちゃんは失敗を恐れない。色んなタイプのいじめっ子と戦ってきた百戦錬磨の猛者だが、戦いに明け暮れ、遂にお兄ちゃんも撤退を決めた。普通の子供であれば、二度と人と関わりたくないと思い、一生引きこもりになっても不思議ではない。だがお兄ちゃんはこれを好機と捉えた。


 むしろ不登校になった後の方がずっと活力がある。


 何故ここまで無尽蔵な好奇心を維持できるのだろうか。


 一度集中し始めると、誰かが声をかけるまで食事すらしようとしない。


 私がいてあげないと、心配で離れられない。


 夜を迎え、財布から1万円を取り出すと、お兄ちゃんの前に印籠のように掲げた。


「おっ、流石は璃子だな」

「これでメモ通りのガンプラを買ってきてくれたら、残りは全部お兄ちゃんにあげる」

「ほんとぉ~?」


 目を輝かせながらお兄ちゃんが言った。


「本当だよ。でも辻褄を合わせるために、表面上はガンプラ好きを装ってよ」

「分かってるって。でもさー、何でガンプラの趣味を隠すわけ?」

「だって私がガンプラ好きだってみんなが知ったら、女の子らしくないって思われて、白い目で見られるでしょ。そんなの気にするなって言いたいのは分かるけど、イメージは評判に関わるし、この国で評判を落とすのは、ある種の自傷行為だからね」

「自分を押し殺して生きる方が、ずっと自傷行為だと思うけどな」

「ただでさえ私服だと目立つし、胸を小さく見せるブラも、結局大きくなったらあんまり意味ないし、デパートに行くのも億劫なの。最近はよく見られるようになったし」

「じゃあ花火大会セールで買いに行ったらいいんじゃねえか?」

「そうする」


 私はお兄ちゃんにガンプラを買ってもらい、お釣りを全て渡したのであった。


 もっとも、お釣り自体はそこまで多くなかった。


 ――花火大会当日――


 この日は屋台もなく、祭りのような雰囲気こそないが、午後8時からの大きな花火がメインである。


 しかも葉月商店街と周囲の店舗は商品が安くなる。うちの冷蔵庫の保存食が増える日でもある。


 だがどの店にも、私の望みの物は置いていない。


 ふと、ブティックサヤマを思い出し、久々に赴いた。


 看板が変わっている。どうやら独立を果たしたらしい。


 自動扉が開くと、1人の女性と目が合った。


「いらっしゃいませー。あっ、璃子ちゃん、久しぶりー!」

「お久しぶりです、友恵さん」

「ねえねえ、不登校になったって本当?」

「は、はい……本当ですけど」

「じゃあさ、あたしの店で修業してみる?」

「えっ……」


 一瞬、目が点になった。友恵さんは独立を果たした。


 友恵さんの店は『クロエクローズ』に店名を改めている。


 株式会社狭山は事業が縮小し、一部の店を独立及び撤退させた。店内の様子を見る限り、繁盛はしていないようだが、副業でどうにか収入を支えている。


「璃子ちゃん、ファッションセンスあるし、今日の格好も凄く綺麗だよ」

「考えておきます。夏芽とは頻繁に会ってるみたいですね。大規模リストラが行われたばかりなのに、無事に独立できたようで何よりです」

「なっ、何でそこまで分かるのっ!?」

「大規模リストラは、さっきハロワが大勢の人で混んでいたので分かりました。独立したことは店名を見れば分かります。友恵さんが着ている桃百合のスカートは、夏芽が友恵さんと同じウエストだと言っていたので、恐らくサイズが合うかどうかを自分で試しているからじゃないですか?」

「……凄い。なんか超能力者みたい!」


 友恵さんが拍手をしながら私に歩み寄る。


 距離が近いのはご愛嬌というもの。夏芽と話している時も近かった。


 集団生活は不得手のようで、思ったことが口から出てしまっていることからも、会話の中で何度も人を怒らせてきたことが見て取れる。私はお兄ちゃんで慣れているが、世が世なら反感を買い、排除されている部類の人だ。商品の位置が一定の距離毎に几帳面に飾られている。


 恐らく家の自室もきっちりと整理整頓されている。


 生活感がまるでない店作りからも、拘りの強さが窺える。


「ふふっ、見れば分かります」


 つい笑ってしまった。この人は妙に人を惹きつける何かがある。


 ファッションセンスが優れているだけでなく、自ら服を手掛ける技術も本物だ。もし上京して店を開いていれば、今頃は売れっ子ファッションデザイナーになっていたに違いない。


 友恵さんに新しいブラの相談をするが、やはりオーダーメイドにはお金がかかるらしい。


 落胆を隠せず、ため息を吐いた時だった――。


「――璃子、璃子なの?」


 夏芽と冬美が自動扉から入ってくると、冬美が私に呼びかけた。


「……久しぶり――!」


 真っ先に夏芽が私の体に抱きついた。


「どれだけ心配したと思ってるのっ!? あたし、璃子が学校に来なくなってから……何度も家を訪れたのに全然いないし、もうどうしようと思って……」

「ごめんね。私、学校に行くのが怖かったの」


 今度は冬美が私と夏芽に覆い被さる形で抱擁する。


「知ってる。注目されたらいじめの合図って、璃子言ってたもんね」

「あれからどうなったの?」

「荒井君が暴走し始めて、周囲の生徒がいじめを受けてる」

「本当なら……私がそうなってたんだよね……」

「結果的には正解かもしれないけど、中間も期末も全然受けてないでしょ。このままだと、不登校が原因で進学が不利になるかも。内申点も出席日数も圧倒的に足りないから、公立の高校は厳しいし、私立の高校も学費が高いの。璃子の将来が心配になってきた」

「まあでも、2人が無事で良かった」


 夏芽、冬美、友恵さんに今までの事情を話した。


 起業と引っ越しの件は伏せているが、お兄ちゃんの暴走から道連れ不登校になったこと、中学の勉強を一通り終えたこと、後は受験を待つのみであること。


 私が不登校になってからも、状況が変わることはなかった。


 静乃は不登校のままで、クラスの状況は相変わらずだ。


 意外なことに、私が不登校になっても、一部の生徒以外は特に気に留めることはなかった。考えてみればそうだ。1人来なくなったくらいで気にするのは友達くらいのもの。だが私が次のターゲットになってしまったことは明白だった。平和に過ごしたいという願いすら叶わない場所を、果たして居場所と呼んでいいのだろうか。連絡帳のやり取りすらないのは、復帰を諦めたからに違いない。


「まあ勉強しているのはいいけど、いつ戻ってくるの?」

「せめて荒井君と違うクラスにしてくれるなら、来年度から戻らないこともないけど、そもそも私の戻るべき場所なのかなって……」

「それなら心配しないで。璃子はあたしが守るから」

「……」


 夏芽がまた私に抱きついた。今度は悲しみではなく、温かみがある。


 私に守ってもらう資格なんてない。私は静乃を見捨てた。夏芽が助けようとした時も、良かれと思って干渉を阻んだ。でもあれは自分さえ良ければそれでいい傲慢さが行動に表れたのだ。


 夏芽がしようとしていた行動は、人として素晴らしいものであった。だが心のどこかで疑っていた。偽善者を演じている自分に酔っていたかったのではないかと。本当のことを言えば、自分まで巻き込まれたくなかったことが理由だが、私は夏芽の心の内を疑っていた。自分勝手な本音に蓋をしながら。


 行動に心が伴っていなければならないと強く思い込んでいた。


 だが今気づいた。行動だけで十分であると。


『人格はどう思ったかではなく、どう動いたかで決まる』


 これが私の座右の銘である。思考と言動は切り離して考えるべきなのだ。


 内心ではどう思っていても、寄付やボランティアは素晴らしい行為である。


 誰かの良い行いを売名行為と受け取る人もいるだろうが、私に言わせれば、疑っている時点で既に大きな間違いである。この国は行動に心が伴っていなければならないと思い込む悪い癖がある。だからこそ相手の心の内を見透かそうとするのだ。良いことをしているのに偽善者扱いされるが、世の中を変えるのは行動である。心は消せないが、行動は誰でもできる。


 人を駄目にしているのは偽善ではなく、むしろ綺麗事の方だ。


 こんなにも単純なことを……同級生から教わることになるとは。


「守ってくれるのは嬉しいけど、私はもう中学には行かない」

「えっ、どうして?」

「既に分かっている内容を学びに行くのは苦痛なの。目的も分からないまま何かをやらされるのって、結局何もしていないのと同じじゃないかなって思ったの。好きなことを一生懸命やる方がずっと楽しくてやりがいもあるし、私にはこっちの方が合ってる気がする」

「じゃあ高校はどうするの?」

「……分からない。今はまだ決められないけど、1つ確かなことが分かったの。今勉強している内容は、大人になってから使うことはほとんどないし、私が学ぶべきことは、学校の中にはなかったから」


 思い切った言葉に、3人は口が開いたままだ。


 今でもOLを目指しているなんて言っても、落胆させるだけ。


 だったら口にせず、水面下で目指せばいい。お兄ちゃんを支えながら高卒認定試験を受けて、うまくいけばそれで良し、失敗してもOLとして稼ぎ、誰からも存在を悟られることなく、細々と生きていくのが最も私らしい生き方だ。戦争が駄目だというなら、もっと平和主義を尊重してもらいたい。


「璃子、なんか変わったね」

「うん、何というか、前よりも明るくなった気がする」

「気のせいだと思うけど」

「まあまあ、それよりせっかく再会できたんだから、今夜一緒に花火大会に行こうよ」


 友恵さんが私を手を握りながら言った。


「この手は何ですか?」

「実はねー、璃子ちゃんに着てほしい服があるのー」


 ニヤリと笑いながら友恵さんが売り場の奥にある狭い長方形の試着部屋へと連れて行く。


 水色の着物を渡されると、言われるがまま着替えさせられた。友恵さんは着付けの仕方も知っていたようで、すぐに着替えが完了すると、違和感を抱えたまま、試着部屋の外に出た。


「「うわー!」」


 夏芽も冬美も口を大きく開けながら私を見た。


 私と着物は凄く相性が良かった。胸が真っ平に見えるし、傍から見れば子供にしか見えない。


 目立ってしまうのが玉に瑕だが、それを差し引いても十分だ。でもお高いんでしょ?


 いかにも高級な素材を使っているし、50万円くらいかかってもおかしくないが、今日だけは特別にレンタルさせてくれるようだ。しかも私の好きな色だ。


「似合ってるじゃん。じゃあ次は夏芽ちゃんねー。その次は冬美ちゃんだよー」

「友恵さん、あたしたちを着せ替え人形にしようとしてるでしょ」

「えー、いいじゃーん。今日だけ貸し出しだよー。本来なら1日1万円だからね」

「いっ、1万円!」


 冬美が冷や汗をかきながら言った。この様子だと、酒処藤倉はあまり繁盛していないようだ。


 貸し出しするということは、買ってくれる人がいない。つまりクロエクローズは経営難だ。友恵さんの目的は店の宣伝、私たちを頼らなければならないほどだが、顔には出さないあたり、世渡り術は習得済みのようだ。友恵さんには借りもある。今はつき合おうと考えた。


 結局、全員着替えることになり、最後に友恵さんが着替え終えた。


 私たちは積もり積もった話をしてから葉月商店街に繰り出した――。


 考察通り、冬美の家は商売がうまくいっていないようで、大量リストラの影響からか、サラリーマンが訪れる機会が少なくなったと冬美は嘆いたが、厳密には地元労働者の数が減ったのだ。時期は6月あたりから、つまり私とお兄ちゃんが同時に不登校になってからだ。


 何か匂う。直感が訴えてくる。時期が合致しているのは偶然ではないと。


 夏芽は株式会社狭山の経営がうまくいかず、経営は苦しくなる一方のようで、荒井グループから虎沢グループに乗り換えたはいいが、それでも足元を見られ、夏芽は虎沢グループの御曹司に目をつけられてしまったという。今この瞬間も追われていると思うだけでゾッとする。


 女性の人権が認められるには、まだまだ時間がかかりそうだ。


 花火大会が始まると、私たちは公園に集まり、家族からは着物姿を驚かれた。


 夏芽が私の隣に陣取り、冬美は友恵さんと仲良しそうに話している。


 空で弾ける火薬の音が何度も耳に響く。何度も聞いている内に耳が慣れてくる。時折人々の盛り上がる声が聞こえてくるのも風物詩だ。視覚と聴覚に訴えかけてくる思い出は、私の心の隙間を一瞬だけ埋めてくれたような気がした。現実を忘れられる瞬間、チョコを食べている時もそうだ。


「ねえ璃子、今度あたしの家に遊びに来てくれない?」

「時々だったらいいけど、何かするの?」

「何かって、璃子の大好きなチョコレートを作るの」

「あー、チョコレートねー。別にいいけど」

「……もしかしてOL目指してる?」

「えっ、何言ってるの……」

「はぁ~」


 夏芽が大きくため息を吐いた。どうやらこっちの意図がばれたらしい。


 ちょっと反応があからさますぎただろうか。やはり夏芽は侮れない。


 普通の人なら誤魔化せただろうが、しばらく会っていない内に彼女との対話方法を忘れていた。表情に出れば終わり。まるでもう1人の自分を見ているようだ。


 呆れてしまったのか、これ以上何も言うことはなかった。


 うちに来てもらうわけにはいかない。


 引っ越しがばれてしまえば、全ての計画が台無しだ。

読んでいただきありがとうございます。

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