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社会不適合者が凄腕のショコラティエになっていた件  作者: エスティ
第1章 学生編
25/70

25粒目「将棋教室」

 夏休みはあっという間に過ぎた。


 私はヤナセスイーツに駆り出され、優子さんたちを手伝い、お小遣いを稼いだ。


 受験勉強をするようになれば、洋菓子作りに携わることもないし、今だけ学ばせてほしいと言った。今生の別れをチラつかせることで譲歩を引き出し、作業を手伝うところまでやらせてもらえた。私が作ったケーキは商品にはならないが、練習することはできる。


 最初に覚えたケーキはザッハトルテだった。


 優子さんは私のチョコレート好きを見込んでか、チョコレートを使ったケーキを作らせてくれた。


 余裕なんてないはずなのに、優子さんは惜しみなく製法を教えてくれた。


 チョコレートの設備はなく、市販のダークチョコレートを使ったが、私としては自力でダークチョコレートを作ってみたい。夏芽からはチョコレートの製法が詳細に書かれた本を誕生日プレゼントとして貰ったし、今度本を見ながら作ってみようかな。


「璃子ちゃん、顔が冴えないけど、何かあったの?」


 優子さんが私との距離を詰めながら尋ねた。


「いえ、何でもないです」

「ふふっ、やっぱりお兄ちゃんそっくりだね」

「むしろ真反対だと思いますけど」


 冷めた声で言いながら、モンブランをショーケースに並べた。


 茶色い栗が乗っている明るい黄色の細長く、パスタのように細長いマロンペーストが、より一層美味しさを引き立たせている。この和栗のモンブランは優子さんのアイデアだ。しかも蕎麦粉を使っているため、カロリーもカットされているヘルシーケーキで、すぐに女性人気の高い商品となった。


 もっとも、これは優子さんの本意ではない。


 優子さん自身が作りたいのはチーズケーキだが、今は健康志向が強まっているのか、カロリーや糖分などを気にする人が増加し、流行しているヘルシーケーキを作っている。いや、生き残るために作ることを余儀なくされているのだ。チーズケーキは20世紀末をピークに売り上げが下がっている。


 好きなケーキよりも、流行に沿ったケーキを作ることに、優子さんは苦痛すら感じている。


「いーや、何だかんだ言っても、本質は全く同じ。だって璃子ちゃん、あず君が何でもないって言う時と全く同じ顔してたもん。あず君が気難しい顔で何でもないって言う時は――」

「何かある時ですよね。仮に何かあったとしても、優子さんには関係のないことですよ」

「本気で言ってる? あたしのことは誤魔化せないよ。スイーツはね、作る人の全てが出るの。さっき璃子ちゃんが作ったザッハトルテだけど、ちょっと苦味が強かったかな。甘さが全然足りてなかった。今の璃子ちゃんみたいにね」

「……実は――」


 優子さんには真実を話した。自分なりに奮闘していることも。


「じゃあ夏芽ちゃんは、荒井君っていう子と結婚させられそうになっていて、狭山社長は虎沢グループと手を組んでいて、そこの御曹司に嫁がせようとしているところまでが目に見えていて、夏芽ちゃんが運動会で負けたら、荒井君と結婚させられちゃうってことでいいのかな?」

「はい。最善の手は打っているつもりですけど、これ以上どうすればいいやら」

「総合スコアの勝負じゃなくて、各種目で勝ち越した方の勝ちにしたらどうかな?」

「提案はしてみますけど、多分通らないと思います。総合スコアの勝負が伝統になってるので」


 確かに勝ち越し勝負なら、戦力差のハンデを縮めることはできる。


 問題はこれをどうやって通すかだが、長森先生にそんな力があるとは思えない。


 夏休み最後の日を迎えると、お兄ちゃんのおねだりで、いつもより比較的豪華な食卓だ。お兄ちゃんはこの日を最後の晩餐と呼び、長期休暇の終わりを惜しんでいる。この時不登校になっていれば、最悪の事態は避けられたかもしれない。私が普通の人生を歩める最後のチャンスだったと思うと口惜しい。


 私はお兄ちゃんの敵に一度だけ会ったことがある。


 いや、一度だけ見たと言った方がいいだろうか。


 2ヵ月前――。


 お兄ちゃんが珍しく誰かと一緒に下校しているところを目撃したのだ。


 虎沢グループの御曹司、虎沢龍(とらさわりゅう)はお兄ちゃんを人気のない場所へと誘導し、殴る蹴るの暴行を加えていた。お兄ちゃんは勝てないと知りながら、真っ向からボコボコに殴り、一矢報いるように虎沢君の顔に傷をつけ、更に激昂させていた。


 幸いにも夏芽たちと別れた後だった。私は暴言と暴力の応酬を陰から見守ることしかできなかった。


「このナチ野郎っ!」

「いてっ! てめえ! ふざけてんじゃねえぞこの野郎!」

「うるせえっ! くたばれっ! このクソッタレ! ろくでなし!」

「後悔するぞっ! オカマ野郎! 調子に乗ってんじゃねえっ!」


 私は近くにいる大人を呼び、お兄ちゃんたちを止めさせた。


 あんなことが毎日続けば、いくら強靭な精神力を持っているお兄ちゃんでも滅入ってしまう。逃げることなく徹底抗戦する性格は、確実にお兄ちゃんの心を蝕んでいた。


 その後、お兄ちゃんが全身に絆創膏を貼って帰ってきたことは言うまでもなかった。


 9月を迎えると、昼休み中の教室内は運動会の話題で持ち切りだ。


 早くも紅組と白組の内訳が決まった。私と夏芽は紅組、冬美と静乃と荒井君たちは白組となった。


 全面的に運動能力の高い生徒が白組に集中している。やっぱり長森先生には無理だったかぁ~。


 夏芽は全く笑顔を見せてくれない。元はと言えば、私が荒井君の横暴に耐えられず、そっぽを向いてしまったことが原因なのだから、私にも落とし前をつける義務はある。夏芽にとって、私はただの友達ではない。理屈では説明できないが、何だかそのように思えてしまう。


「璃子、ごめんね。あたしのせいで巻き込んじゃって」

「心配しないで。夏芽の問題は、私の問題でもあるから」

「葉月、ちょっといいか?」


 目の前に表れたのは浅尾君だった。相変わらず髪はボサボサで、マイペースに過ごしている。


 荒井君たちは運動場に遊びに行っている。この時の教室は至って平穏である。夏芽は荒井君から会社存続を餌に結婚を迫られ、狭山社長は虎沢君に嫁がせようとしているが、2人共最低のろくでなしだ。どちらに嫁いでも……地獄への片道切符であることに変わりはない。


 経済的に豊かな生活はできるかもしれない。だが歴史を見ても、暴君の家族はロクな死に方をしていない場合が多い。それを分かっているからこそ、夏芽が暴君に嫁ぐことだけは阻止したい。友達の夫が暴君というだけで、周囲の人生まで悪化する。友達を1人失うのは確かだ。利害は一致している。


「どうかしたの?」

「話は聞いたぞ。狭山の結婚を阻止したいんだろ?」

「それはそうだけど、何で分かるの?」

「あんな奴に嫁ぐのは、趣味が悪いとしか言いようがねえからな」

「もしかして協力してくれるの?」

「そうしてやりたいところだけど、俺は白組だ。役には立てないかもな」


 浅尾君たちは運動が得意ということで白組所属となった。


 思った以上にまずい。浅尾君たちが敵側に回ったことで、勝てる可能性が谷底まで落ちた。


 白組にも私や夏芽と仲が良く、荒井君の件を知っている者もいる。もはやこの一件は公になったと見ていい。教師に伝えたところで、この学校は大企業から資金援助されている。ランダムに分けたと言われて見過ごされるのが関の山だ。なら味方として使えるのは生徒のみ。


 私はここまで運動において本気を出してこなかったからこそ、紅組に入ることができた。


「そんなことはないよ」

「何か策でもあるのか?」

「今は特にないけど、頼りにしてる」


 数日後――。


 土曜授業が終わると、私は長森先生の後を追いながら、彼女の実家までついていった。


 長森先生は戦力均衡を保つ割り振りはできなかったが、大差がつきやすい総合スコア勝負ではなく、1戦毎に切り替えが利く勝利数で勝負を決める方法を提案し、それが見事に通ったのだ。


 戦力均衡を保つ気がないなら、点差が目立ちにくい試合方法で決着をつければ、保護者の目を誤魔化すことができるメリットを強調した。勝敗が決まった瞬間に他の競技を行う必要がなくなるため、運動会の時間を短縮することもできると言ったのが決め手になった。


 競技は全部で9種目。以前よりも少なく抑えられ、最短で5種目となるが、それでも保護者には十分楽しめる。先生も生徒も早く帰宅できるが、それはどちらかが一方的に主導権を握り続ければの話だ。紅組は運動があまり得意ではない生徒ばかりで、長期戦になるほど不利になる。


 私はお礼として、長森先生の望みを1つ叶えた。


 長森先生の実家の近くには将棋教室があり、昔ながらの木造建築だ。


 足元には畳が敷き詰められ、屋根には黒い瓦がたくさん並んでいる。私には敷居が高く感じた。格式の高い人が住んでいるのがすぐに分かった。


「お父さん、ずっと前に対局した子を連れてきたよ」

「何、もしや和子に勝った小学生かっ!?」


 50代くらいの中肉中是の中年男性が、和服を着たまま歩み寄ってくる。


「は……はい。初めまして、葉月璃子です」

「俺は天野宗一(あまのそういち)。ここで将棋を教えながら、プロでも指している。君だったのか、うちの姪に一歩も譲らず勝利した小学生というのは」


 ワクワクするような顔で天野さんが言った。


 ――天野宗一、聞いたことがある。


 幼少期から天才と謳われ、かつて永世三冠を獲得したほどの名棋士だ。全盛期を過ぎた今でも九段最強クラスの実力を誇り、タイトル戦優勝を目指す者たちにとっては、ある種の登竜門となっている。


 こんな人が身近にいたなんて……知らなかった。


「事情は和子から聞いている。普段は自分を抑えて、周りに合わせているようだね。でもそんなことをする必要はない。ここにいる時は実力を存分に発揮してくれたまえ。早速俺と対局してくれないか?」

「それは構いませんけど……」


 とんとん拍子に事は進み、私は天野さんと対局をすることに。


 今日は休日らしいが、普段は生徒たちが20人程度集まるんだとか。


 長森先生は集団の中で委縮してしまいがちな私に配慮してくれたようで、人数が少ないこの日を選んでくれたことが分かった。将棋の駒は彫りが深く、濃い茶色の駒だ。テーブルゲームクラブの教室にあったような明るい色ではない。いかにもプロが使いそうだ。


 畳が敷き詰められた部屋の中央には、将棋盤がポツンと置かれている。


 天野さんと一緒に定位置に駒を並べていく。私は先手で7六歩を打った。


 対局は序盤から一歩も譲らない接戦となった。


 縦に突破を図る天野さんに対し、私は取った駒を相手の陣に置いて牽制する。


 何度か王手になるが、私は相手に持ち駒を使わせながらのらりくらりとかわし、今度は相手に取らせた駒を取り返し、徐々に追い詰めていった。そして終盤、遂に相手の金を取り、金打ちのコマンドを得た私に負けはなくなり、8手詰となったところで、天野さんが持ち駒の上に手を置いた。


「……負けました」


 お互いに深々と頭を下げた。天野さんも詰みには気づいていた。


「ちょっと手を洗ってきます」


 トイレに行きたくなり、席を立った。正座をしていたのか、足が痺れて思うように動かない。


 しばらくして痺れが取れた。再び部屋に戻ろうとしたが、引き戸を開けようとした時、奥から長森先生と天野さんの声が聞こえた。盗み聞きする気はなかったが、引き戸を開けようとは思わなかった。


 僅かに空いている引き戸から、私が座っていた位置に長森先生が座っているのが見えた。


「葉月さん、結構強いでしょ」

「強いどころじゃない。どこにも隙がなかった。もし彼女がプロデビューすれば、女流初のタイトル獲得も夢じゃない。まさかあんな逸材がいたとは思わなかった。是非とも私の手で育ててみたい」

「でも葉月さん、将来はOLを目指しているみたいだよ」

「あれほどの逸材をOLにしておくなんて勿体ない。彼女の頭脳は……完全に俺を凌駕していた。全盛期の私が時間をかけても勝てたか怪しい。なあ、葉月さんを説得してくれないか?」

「でも葉月さん、将棋よりもチョコレート作りの方が好きみたい。夏休みの自由研究も、チョコレートの仕組みから作り方までを科学的に説明するくらいだし、とっても好きなんだと思うよ」


 会話が終わってから、極力音を立てずに部屋へと戻った。


 買い被りな気もするが、それで稼げるようになれば、家計の助けになるのかな。


 でも家計のためにプロになるのも違う気がする。プロと呼ばれている人たちは、純粋にそれが好きでやっているわけだし、本気で挑戦している人でなければ、勝ち続けることはできない。私は何かに対して本気を出すことはできるが、本気を出し続けることができるのは好きなことのみ。


 私は初めて知った。本気を出し続けられることでなければ、挑戦資格はないと。


 だったらまず、本気を出し続けられる分野、すなわち好きで得意なことを見つけよう。お兄ちゃんはピアニストから誘いを受けていたようだが、バリスタの道を優先するために断った。


「葉月さん、君さえ良ければ、これからもうちに通ってくれないか?」

「あの、私は他にやるべきことがあるので、プロは目指しません。うちはただでさえ貧しいので、途中で通用しなくなったら取り返しがつきませんので……何の保障もなしにプロを目指すことはできません」

「……そうか。だがうちの教室はいつでも歓迎するぞ。もし気が変わったら、いつでも言ってくれ」

「長森先生と一緒なら、また来ても構いませんよ」

「そうかそうか。だったらまた連れてきてもらわないとな」

「あのねー、本来なら私用で生徒を連れてくること自体問題なんだから、ちょっとは自重して」

「では、私はこれで」


 お辞儀をしてから帰宅する。天野さんは私がプロ棋士を目指すことを諦めてはくれなかった。


 何の保障もなしにはできないと言った時、どこか残念そうな表情が垣間見えた。


 昼食も食べないまま帰路に就いた。集中していたのか、段々お腹が空いてきた。ラップタオルが使えるとはいえ、この胸はどうにかならないのだろうか。そろそろ体育の時間でもやばくなってきたくらいだし、変態女子から隠し通すのが精一杯だ。


 胸を覗いてくる生徒が、みんな他の人に興味を示していたのが幸いだ。存在を隠しながら着替える術を体得していなければアウトだ。体育の日は服の下に体操服を着るのがお約束だ。着替えは隣のクラスと合同で行い、どちらかの教室に男子と女子を集中させて着替えるわけだが、これなら授業開始前は私服を脱ぐだけでいい。授業終了後はクラスメイトの最後尾として教室に戻るふりをし、予め教室から持ち出しておいた私服を携え、屋上近くまで上ってから着替えるが、案外誰も気づかないものだ。


 昼休み以外で屋上付近に人が来ることはない点に私は目をつけていた。これなら私と同じことを考えている人がいない限り、鉢合わせになることもないし、休み時間になったところで、男子と一緒に教室に戻れば誰も気づかない。夏芽と冬美には伝えているが、誰かが私の不在に気づいた時は、知らないと答えるように言っている。この方法であれば、胸のサイズを知られることなく着替えられる。


 小5から用いていたこの方法だが、未だに友達以外の人にはばれていない。


「おかえり。将棋どうだった?」


 長森先生から連絡を受けていたお母さんが出迎えてくれた。


「今日はなかなか楽しめたよ」


 あんなにも倒し甲斐のある相手と対局したのは初めてだし、たまにならつき合ってもいいかな。


「長森先生からね、才能があるから、プロ棋士の人に教えてもらったらどうかなって言ってたけど」

「お母さん、今は貧乏生活からの脱出が最重要課題なんだよ。最も確実な方法は、レールに乗ることだって言ってなかった? お兄ちゃんにはピアニストを諦めさせておいて、私には将棋のプロに行けって言うのは、どう考えても違うと思うけど」

「あの時はあず君小さかったし、お父さんは失業中で余裕がなかったからねぇ~。それにあず君を評価するピアニストがいなかったし。璃子はプロ棋士から認められてるわけでしょ。だったらお父さんに、将棋教室に通わせるよう言っておくけど」

「そんなお金ないでしょ」

「でもさー、璃子が将来女流棋士になってー、それで巨富を得てくれたら、何の問題もないじゃん」

「……絶対行かない」


 やや強い口調で吐き捨ててしまった。拝金主義に塗れたお母さんを見ていられなかった。


 お父さんもより給料の高い仕事に就こうとして、今のバイト先を踏み台としか思っていない。好きで得意なことを仕事にしているというのに、お金のことで頭がいっぱいで、ちっとも幸せそうじゃない。


 お金を幸福の基準にしていたら、ほんの一部の人しか幸せになれない。今生きていることへの感謝を忘れた者が幸せになることはない。みんな拝金と出世にばかり囚われ、幸せの青い鳥がすぐそばにいることに気づいてすらいない。お金=正義という価値観に侵されている。貧困者に対して厳しい人が多いのは、自分が目指す方向の真逆を見て、反面教師として恐怖を覚えているからだ。


 油断すれば自分もあんな風になってしまうという自分への戒めが、他人に対する冷たい言葉となって表れていると考えれば、全ての現象に対して説明がつく。日本人が他人に厳しいのは、自分への厳しさの裏返しだ。自分に優しくなれない者が、他人に対して優しくなれるはずがない。


 いじめの問題も、全てここから始まっているのだとしたら――。


 みんなに刷り込まれている拝金主義さえどうにかできれば、幸福度も飛躍的に上がるのではないか。


 だとしたらメディアの罪は重い。マスコミならぬマスゴミだ。


 まずはテレビの視聴をやめることから始めて、見るのはアニメだけにしよう。


 ――それにしても、運動会どうしよう。


 戦力の偏りは火を見るよりも明らか。


 せめてさっきみたいに、相手の金を取り、持ち駒にしてから金打ちして勝ったように、誰か1人でも寝返ってくれたらどんなに楽か――ハッ! そうだ、寝返ってもらえばいいんだ。


 最も頼りになるのは、有能な味方ではない。無能な敵こそ、勝利の鍵だ。


 天下分け目の合戦と言われた関ヶ原の戦いも、敵の寝返りで得た勝利だった。


 浅尾君たちが白組にいるのは幸いだった。


 どんなに戦力差があろうとも、味方に足を引っ張られてしまえば、相手としてはかなりきついはず。相手は既に戦力集中という不正を行っている。たとえばれたとしても、相手に文句を言う権利はない。だが不正がばれれば、荒井君は勝負の無効を宣言するはず。ならばれないように偽装するまでのこと。


 不正には不正で対抗する。白組の一部を味方に引き入れ、足を引っ張らせる。


 一見不利に思える運動会だが、白組を寝返らせれば、戦力は逆転するはず。浅尾君には荒井君を良く思っていない生徒を集めてもらい、寝返るように説得させよう。冬美にも同様の思いを抱いている女子を誘ってもらい、夏芽に同情を抱かせ、味方につければいい。


 あからさまに反逆するのではない。ばれないよう手を抜いてもらうだけだ。


 表面上は同じくらいの戦力という建前も、私にとっては好都合な武器だ。

読んでいただきありがとうございます。

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