15粒目「焦土作戦」
居酒屋会議から1ヵ月の時が過ぎた――。
夏芽も冬美も赤札連合を結成し、それぞれのクラスの最上位グループに対抗した。
赤札連合案はピタリとハマった。2人以上で庇い合い、必要があれば先生を巻き込み、解決してくれそうにないなら授業のボイコットをチラつかせる段階からスタートした。まさか先生もボイコット運動をするとは思っていなかったのか、渋々ではあったが、監視役として目を光らせてくれた。
まずは3人以上で一斉に欠席し、問題解決に応じるまでは学校を休むことを冬美がグループを代表して白川先生に告げると、ここにきてようやく動いてくれた。
これで最上位グループも、先生の前では動けなくなった。
いじめを受けるのは人権がないと思われているからだ。ならば、人権を勝ち取ればいいまでのこと。迫害に対する手っ取り早い対抗策はボイコットだ。かと言ってまともに戦っても最上位グループにはまず勝てない。それならまともに戦わなければいい。つまり持久戦だ。
小6となったお兄ちゃんに教えたばかりの持久戦略を、私が使うことになるとは思わなかった。
お兄ちゃんは腕っぷしの強いタイプのいじめっ子に目をつけられていた。しかも弱点らしい弱点がないという。そこで私は相手の体の1ヵ所のみを狙って継続的に打撃を加えることを提案した。いくら喧嘩が強くとも、体の1ヵ所でも怪我を負ってしまえば、必然的にその部位が弱点となり、次からは弱点に打撃を加えれば、たとえ体格差があっても勝つことができる。
負傷した筋肉や骨格に打撃を受ければ誰だって激痛が走る。
作戦は見事に成功した。お兄ちゃんはいじめっ子の足ばかりを狙い、遂に撃退に成功した。弱点がないなら作ればいいまでのこと。作られた弱点に剣を突き立てれば、相手はもう引き上げるしか手はなくなるし、一度でも激痛を負わされた相手からは警戒の対象と見なされ、警戒心はやがて抑止力となる。
お兄ちゃんは放課後居残りと引き換えに、相手に大きな枷をはめたのだ。
「お兄ちゃん、持久戦略はどうだったの?」
「ああ、見事に成功した。璃子のお陰だ。ありがとな」
「何で勝てない相手と戦おうとするのかは知らないけど、そんなやり方じゃ、いつか限界が来るよ」
「言葉を返すようだけど、璃子はなんかやりたいことねえのか?」
「やりたいこと?」
私は首を傾げた。そんなこと、考えもしなかった。
――言われてみればそうだ。私は一体、何がしたいんだろうか。
知らず知らずの内に心の奥底にしまっていた何かを、久しぶりに掘り起こされたような気分だ。やりたいことなんか言ったって、それじゃ安定しないとか、食っていけないとか、周囲に言われて諦めるのがオチだった。いつしか私はやりたいことを伏せ、誰かに与えられた枠組みで、無難にやり過ごすことばかりを考えている自分に気づかされた。誰の入れ知恵かと思えば、すぐに検討がついた。
おじいちゃんの口癖を思い出す――。
やりたいことをやれ。会う度にいつもそんなことを言っていた気がする。
私がおじいちゃんに会うのは親戚の集会の時くらいで、お兄ちゃんはいつもおじいちゃんとコーヒーの話ばかりをしていた一方で、私はおばあちゃんとチョコレートの話をしていた。
おばあちゃんは大のチョコレートファンで、私に初めてチョコレートを食べさせてくれたのもおばあちゃんだった。おばあちゃんの家は成果菓子会社に就職する人が多く、その縁でチョコレートに巡り合うことができたわけだが、会社もバブル崩壊の影響で潰れてしまった。
「僕の夢はのんびりコーヒーを飲んで暮らすこと。でもそれじゃ許されないから、まずは中学を出てバリスタになる。どうやって起業するかは未定だけど、一生分の貯金ができたらとっととリタイアする」
「お兄ちゃんらしいね。前々から思ってたけど、何で就職したくないの?」
「だってつまんないじゃん。就職なんてしたら、ずーっとつまんない連中と一緒に過ごすことになる。あんなやらされ人生を送ってきたような連中と一緒に働きたいと思わない。どいつもこいつも目先の成績ばっかり気にして、自分がどうありたいかを考えようともしない。見てるだけで欠伸が出る」
私の胸にお兄ちゃんの言葉が深く刺さった。完全に私のことだ。他人事ではない。
うちの親戚は、より条件の良い仕事に就職することだけを考えているが、お兄ちゃんに言わせれば、就職レールに乗ることしか頭にないつまんない連中の類だ。
口先だけじゃないといいけど、お兄ちゃんが考えている起業は就職よりもリスクが高い。お兄ちゃんにはゼロリスク思考などない。世の中の動向を見て、より最適な動きを探す生き方だ。珍しいタイプではあるが、この国では珍しいタイプほど迫害を受け、市民権を得るまでは淘汰の対象となる。
故に、就職に向いていない人まで、半ば強引に就職レールへと乗せられてしまう。
自分の頭で考え、正解のない世の中で生きていくことを考えれば、お兄ちゃんの考えは理論上は合理的かもしれないが、私は足が竦んで動けない。言われた通りにしているだけで可愛がってもらえるし……まあでも、一生分の貯金ができたらとっととリタイアは賛成かな。人と関わって生きるの疲れるし。
「お兄ちゃんも自分の将来考えてるんだ」
「当たり前だろ。もしかして全ての人間が就職に向いてるとか思ってる?」
「それはないかな。でも今のところは就職。やりたいことが見つかったら、その時点ですぐそっちに切り替えればいいだけの話だから、そんなに焦らなくてもいいと思うけど」
つい弱気なことを言ってしまった。私はやはり臆病者だ。何がしたいのかを全く言えなかった。まずパッと思いついたのはパティシエだが、私は既にスイーツ業界の厳しさを知っているし、今更ヤナセスイーツに習いに行こうとは思わない。それに点数調整のために勉強をしないといけないし、いくら最上位グループが大人しくなったからとは言っても、勉強自体を怠ってはならない。
選択肢を失うのが怖かった。他の子は当たり前のように毎週おもちゃを買ってもらえるが、うちは極稀にしか買ってもらえない。私はそのことを逆手に取り、お兄ちゃんを通してガンプラを頻繁に買ってもらい、私は特に何も要求しないことで、購入のハードルを下げた。2人一緒の場合は安い物しか買ってもらえない。お兄ちゃんからは購入権を剥奪することになったが、私が家にいる時は、お兄ちゃんがやりたいことを私に手伝わせる権利を与えた。普段はコーヒーを飲みに行ったりできるわけだし、あまり物欲がなかったお兄ちゃんは快く応じてくれた。
お兄ちゃんに振り回されることは度々あったが、これが凄く楽しいのだ。
6月上旬、お兄ちゃんの誕生日を過ぎた頃だった――。
渡辺君が1人の男子生徒を突き飛ばすと、男子生徒は後ろの壁に音を立てながら頭をぶつけた。
「うわああああんっ!」
打撲した部位を手で抱えながら泣き叫ぶ男子生徒。
「おいおい、ちょっと押しただけだろ……」
「渡辺君! 今のはやりすぎだよ! 先生呼んできて!」
「うんっ! 分かった!」
冬美のシリアスな声を聞き、他のクラスメイトが慌てて先生を呼びに行った。
渡辺君はこれ以上の追撃を断念し、廊下側の席へと戻ってしまった。
「この頃ずっとこれだな。この前なんか別の奴をちょっと押しただけで窓ガラスを割りやがるしよ」
「一体どうなってるんだ?」
「渡辺君、もう押すのやめたら?」
成績の悪い生徒ばかりに暴行や暴言を食らわせていた岩城さんまでもが、遂に渡辺君に働きかけた。
「ちっ、つまんねえの」
「最近までみんな大人しかったのに、どうなってんだか」
「俺が聞きてえよ」
私は本を読みながら、さりげなくみんながいる方向に首を向けた。
あの困った顔、相当滅入ってるみたい。これでちょっとは落ち着いてくれるかな。
泣き叫んでる男子生徒は、冬美が新しく作った赤札連合の一員だ。
冬美が言った通りに振る舞い、暴行を受けたら大袈裟にいたがる演技をしては、渡辺君たちを困らせていた。冬美と一瞬目が合うと、彼女は他の人にばれないよう笑みを浮かべた。
私も口を閉じたまま、一瞬だけ口角を上げて応えた。
「璃子、冬美。一緒に帰ろ」
下校時間になると、夏芽は私と冬美に声をかけた。
「うん。そっちはどう?」
澄み切った笑顔から上機嫌であることを見切った私は、夏芽に事情を聞いた。
「うまくいってるよ。璃子が言った通り、赤札連合を組んだお陰」
笑いながら指でVサインを表し、安心を示すように歯を見せる夏芽。
隣のクラスでは、夏芽が赤札連合として結成したグループが、数で圧倒するようになり、最上位グループの座を奪還した。コスプレの件を話題にする者はクラス内にいなくなり、自分で赤札を剥がした。夏芽は元から立場の強い地位にいただけあって復興が早かった。
冬美は新たなグループの基盤を固め、渡辺君や岩城さんを牽制できるくらいの中堅グループを築いたのだ。最上位グループに対して反発していたグループの人まで引き入れると、何かあればすぐ担任に報告するシステムを確立した。まずはチクっても恥ずかしくない風潮を作ることを提案した。
いじめはなくならない。ならハードルを上げてしまえばいい。
チクるのが当たり前になれば、狡猾な人たちほどすぐに気づき、手を出しにくくなる。あいつはすぐにチクると陰で言われるくらいになれば御の字だ。狡猾ないじめっ子には、毅然とした態度で臨まなければならない。つけ入る隙を与えてしまったら最後、終わりなき蟻地獄へと引き摺り込まれてしまう。戦って勝つのではなく、戦わずして勝つことを目指した。
お兄ちゃんはいじめっ子を相手に殴り返して怪我を負わせているが、私はそこまでせずとも、いじめっ子の矛先を別の方向に向けさせるだけで無事に解決している。
夏芽も冬美も、この消極的な持久戦略に協力してくれている。
私は文武両道のエリートたちが率いる最上位グループの強さを理解し、これに正面から決戦を挑むのは無謀と考えていた。そこで私は、最上位グループが評判に弱点を抱えていることに目をつけた。
まずは餌を撒いた。夏芽と冬美の2人を通じて、精神攻撃を受ければ大声で怒鳴り返し、物理攻撃を受けた時は軽傷であっても大袈裟に痛がり、極力周囲の注目を集めるように言った。いじめは周囲が見逃してくれる環境で起こる。ならば周囲が目を向けてしまう環境を作ればいい。
誰かが攻撃を受ければ、同じグループの人も加勢して庇う。突き飛ばされたらわざと壁に頭などをぶつけて泣き叫ぶことで怯ませる。怪我を負わされれば、担任の先生だけじゃなく、他のクラスにいる友達やクラスメイトにも傷を見せながら伝えるように言った。いじめの噂は赤札連合の地道な活動により徐々に広まっていき、渡辺君も岩城さんも、段々と立場が悪くなっていった。
学年全体での評判下降がようやく効いたらしい。
無論、それは他のクラスの最上位グループも同じ話だ。
「あいつらの悔しそうな顔、璃子にも見せてやりたかったなー」
「大したことはしてないよ。いじめに対してシンパシーを感じやすい環境を作っただけ。いじめる側が白い目で見られる空気に変えたの。暴力を誘発して大袈裟に痛がってみせることで、それ以上の追撃は受けなくなるし、いじめる側が悪いっていう雰囲気になるでしょ。みんな叫んじゃうと注目を浴びるのが怖くて、いじめを受けても全然声を上げなかったけど、それこそがいじめる側が仕掛けた空気なの。いじめは空気によって作られるものだし、空気を入れ替えれば、今度はそれが抑止力になるの」
みんなは感情を抑えるように教えられてるけど、それは結果的にいじめを助長するだけで、何も良いことはない。結局は支配する側にとって都合の良い駒を作ってるわけだから、下手に泣き叫ばない人間にしようとするが、今回ばかりはブレーキを外させてもらった。先生が守ってくれない時は、自分で自分を守るしかない。痛がっている素振りを見せることでいじめを防ぐ方法はすぐに浸透した。
直接的な対決はせず、殴り返すこともせず、泣き叫んで周囲を味方につける。各クラスの最上位グループは、不用意ないじめをしなくなっていった。周囲から白い目で見られることに耐えられなくなってしまい、あの渡辺君たちでさえ大人しくなってしまった。誰とて評判が落ちれば、全身を鎖で縛られたように動きにくくなる。相手の強すぎる力を逆用し、じわじわと評判を落として精神的に消耗させる。
他の人を頼ろうにも、証拠と共に噂を広めたことで、みんな事情を知っている。拠り所を全て潰し、罪悪感を煽り、意気消沈に追いやることで戦意を削ぎ、戦わずしていじめをやめさせる。
これが、私が発案した、対いじめっ子持久戦略の1つ、『焦土作戦』である。
本当はこんなことしたくなかったけど、夏芽や冬美の悲しむ顔を見る方がずっと嫌だった。いじめという名の蟻地獄に嵌めてきた連中を、今度は焦土作戦という名の沼地獄に嵌めた。生徒たちを散々悲しませた罰はちゃんと受けてもらう。術中にハマっていく彼らを見るのは実に滑稽だった。
「あー、すっきりした。また一緒に遊べるね」
夏芽は私の体を包み込むように擦り寄ってくる。
「暑苦しいんだけど」
「えー、いいじゃーん。やっともふれるんだから」
「夏芽、璃子嫌がってるしょ。離れなさいっての」
少しばかり大きくなった夏芽の体を引き剥がすように、冬美がその腕を引っ張った。
「はいはい。しょうがないなー」
「それより、伝えないといけないことがあるでしょ」
「あー、そうだった。璃子のお陰で学校生活を送りやすくなったけど、まだ問題があるの」
「荒井君のこと?」
「うん。荒井君のクラスは状況が悪化してて、1人不登校になっちゃったの」
「しかも私が璃子の案を広めたところまで嗅ぎつけたみたいで、用もなく教室から出られないの」
「じゃあ赤札剥がれてないんじゃないの?」
「それは大丈夫。作戦がうまくいっている限り、そう簡単に手は出せないと思う」
「でもそれだと心配だからさー、今度から夏芽の家で落ち合おうよ」
冬美が人差し指を立てながら言った。実に名案……と言いたいところだが、1つ不安要素が残る。
「うん、いいよ。でも驚かないでね……その……コスプレ衣装とかあるから」
「私もアニメ好きだし、別に問題ないよ」
「冬美、夏芽の家に行くなら、誰かに後をつけられてないか、ちゃんと確認してね」
「分かった。璃子がそう言うなら、間違いないだろうし」
案がまとまり、3人で夏芽の家に向かった。
問題があるとすれば、まだ裏切り者が見つかっていない点だ。
誰が何のためにあんなことをするのか。動機はいくらでも思い浮かぶけど、学校で会うことは避け、極力夏芽の家で会議をしよう。学校にいるより安全だ。
コスプレ写真の一件以来、夏芽は自室のカーテンを閉じるようになった。いつまた撮られるか分からないとなれば、安心して外を見ることはできない。夏芽の部屋から見える百合園は最高の眺めだ。夏芽にとっては、どんな絶景よりも美しい光景だろう。部屋着なら見ることができるが、彼女自身はコスプレ衣装をお母さんに見せてあげたいと願っている。身の安全が保障されるまではそれができない。
皮肉なことに、夏芽は1番好きなはずのコスプレによって幸福追求権を奪われている。
学生生活を終えた後も苦難は続くだろう。どこか職場に入ったとしても、コスプレ写真を同僚の誰かに送られるようなことがあれば、職場にいられなくなるところまでが見えた。
私が夏芽の敵ならそうする。だがそこまでして夏芽から居場所を奪いたい理由が分からない。
裏切り者は非常に狡猾で、一刻も早く夏芽から居場所を奪うことを考えていて、夏芽にコスプレの趣味があることを知っていて、一度は夏芽と顔を合わせたことがあり、学年で最も立場の強い人物が荒井君であることを知っていて、かなり身近にいる人物だ。少なくとも、距離の遠い相手ではない。
最初こそハウスキーパーである瑞浪さんを疑ったが、瑞浪さんの人柄を考えればそれはない。住み込みで休日なんてないし、夏芽とはとても仲が良い。何なら狭山社長よりもずっと仲が良いまであるし、事実上の育て親みたいになっているのが何とも滑稽だ。まず除外していい。冬美が夏芽の趣味を知ったのは最近だし、当然冬美も除外される。知らないふりをしていた可能性もなくはないが、あれだけいじめを受けている状況で演技をする余裕などないし、裏切り者はいじめを行う側だ。
「璃子、どうかしたの?」
「あー、いや、何でもない」
「何か悩んでるんだったら、何でも言ってよ」
「どうして?」
「どうしてって……だって私たち、友達じゃん」
「そうそう」
夏芽も冬美も忌憚のない笑顔を私に向けた。私は喜ぶどころか、罪悪感さえ抱いてしまった。私は他人のことを駒としか思っていない。味方の駒であれば長所を探して活かす。敵の駒であれば弱点を探して味方の駒に潰させるか、剣を突き立てながら距離を置く。敵は遠ざけるに限る。
敵か味方かで二分してしまうのは良くないと思いながら、私自身がそうせざるを得ない状態である。結論から言えば、それは私自身の立場が弱いことの裏返しだ。立場を気にしなくてもいいのは、世界の頂点に君臨する猛者だけだ。私が強い立場なら、いじめを目撃した時点で誰かに止めさせる。
昔はどこのクラスにも番長みたいなのがいて、問題が起きれば、番長を頼る選択肢があったが、今はその番長がいない。当然だが、最上位グループのリーダーは権力を乱用しているだけで、みんなにとって頼りになる番長の器ではない。今の大人たちが子供を十分に育てきれていないのだ。
「――じゃあ言わせてもらうね。私はずっと、裏切り者は誰かを考えてたの」
「裏切り者って、夏芽を陥れようとしている人のこと?」
「うん。だってさ……堂々と趣味ができないって悲しいじゃん」
「璃子……」
顔を赤らめながら私を見つめる夏芽。なんかいつもより可愛い。
桃百合の女王は、いつの間にか女王様気質が鳴りを潜め、本来の明るい性格を取り戻しつつあった。
「その件だけど、私も協力する。璃子には恩があるから」
割り込むように冬美が言うと、私は冬美も私の傘下に入ったことを確信する。
しかし、私の平和主義を嘲笑うかのように、裏切り者は姿を見せぬまま、月日だけが経過する。
私と冬美は度々夏芽の家を訪れるようになり、様々な趣味に興じた。冬美にもとびっきり可愛いコスプレ衣装を着てもらうと、同じくコスプレ衣装を着た私と夏芽とスリーショット写真を撮り、冬美とも不可侵条約を結んだ。事実上の三国同盟となり、私たちのグループに確かな結びつきが生まれた。
夏芽に友達と呼ばれた時……凄く嬉しかった。
こんなに良い子がいじめられっぱなしでいいはずがない。
7月を迎えると、私は10歳の誕生日を迎えた。
夏休みはあっという間に過ぎた。お兄ちゃんは1ミリも宿題をやろうとしないが、コーヒーだけは自由研究のように没頭している。これを自由研究にしても学校側から理解されることはない。子供は子供らしくという呪縛が、結果的に評価を歪めてしまっている。
自分の興味で集中できることが幸せなのだと、お兄ちゃんは教えてくれているようだった。
読んでいただきありがとうございます。
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