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社会不適合者が凄腕のショコラティエになっていた件  作者: エスティ
第1章 学生編
12/70

12粒目「地獄のテニスコート」

 次の週がやってくる。私の机の上には偏見ばかりの教科書、びっしりと書かれたノートがある。


 いつものように授業は淡々と進み、白川先生は遅れている生徒がいることにも構わず、次々と内容を進めてしまっている。授業についていけている生徒は少なかった。


 例年通りであれば、度々定期テストを挟むだろうが、ここまでの担任は全員漏れなく、習っていない漢字や計算方法などを使うことは禁止している。白川先生は事前に禁止事項を告げてくれるだけまだ優しい。初めての社会や理科の授業は新鮮だったが、私は特に強い興味を示すことなく、答えをただの記号として暗記し、これから訪れるであろう定期テストを制覇していく構えであった。


 私の席の前に立ち止まる静乃。


「ねえ、君もテニスクラブだよね?」


 5時間目が早めに終わると、噂の転校生として注目を集めていた静乃が話しかけてくる。


「うん。静乃ちゃんだっけ?」

「静乃でいいよー。名前は何ていうの?」

「……葉月璃子」

「ふーん、璃子はテニス得意なの?」

「私は全くの初心者なの。だから友達に教えてもらおうかなって」


 ――どうしよう……どうしても外国人として見てしまう。どう接していいのか分からないと、最初こそ思ってはいたが、日本語が分かるなら何の問題もない。


 日本人が相手なら、テキトーに話を合わせていればやり過ごせる。外国人が相手だと、通用するかどうかは分からない。だが静乃が日本人としての側面もあることはすぐに分かった。


 静乃は好奇心が赴くまま、私に惜しみもなく質問を繰り返した。


 親戚にも外国人はいるし、慣れている分まだ楽だ。


「へぇ~、璃子って何でも知ってるんだね」

「ふふっ、何でもは知らないよ。たまたま知っていることを聞かれただけ」

「……やっと普通に話してくれた」

「えっ?」


 安心しきった静乃の顔に、一瞬だけ素が出てしまった。


「あっ、ごめんごめん。あんまり大きな声じゃ言えないんだけど、このクラスで私と普通に喋ってくれた人って、実は璃子が初めてなの」


 静乃が言うには、そもそも話してくれない人や、外国人に合わせた不慣れな話題ばかりを出してくる人ばかりなんだとか。みんなが無意識の内に静乃が外国人であることを意識して、ぎこちないながらも他人行儀と言えるほど気を使ってくれている姿勢は、彼女にもしっかりと伝わっていた。


 何も言葉だけがコミュニケーションではない。顔の表情、声の強弱、場の空気で相手が何を考えているのかがおおよそ分かってしまう私にとって、ごく普通に接することが最適解であると気づくのは非常に簡単だ。静乃はみんなと同じ人間として扱ってほしかったのだ。


「静乃ちゃん、早く行くよー」


 クラスメイトからの呼び声に静乃が後ろを振り返った。


「うん。璃子、また後でね」


 静乃がウインクをしながら教室を出ていく。


「璃子、一緒に練習しよ」


 更衣室に移動する途中で夏芽が声をかけてくる。


「うん。でも私は初心者だから、ちゃんと手加減してよ」

「分かってるって」

「夏芽、私にもテニス教えてよ」


 冬美とも合流すると、テニスコートの近くには更衣室があり、私たちは女子更衣室に入った。


 女子更衣室の中では、既に何人かの女子生徒が着替えており、私たちは端っこのロッカーで着替え始める。だがこの時、私はあることに気づいてしまった。


 ――あれっ? ……昔より胸が大きくなってる。


 いつの間にこんな状態になったのかと、私は青褪めながら目を疑った。


 傍から見ても分かるくらいに大きな膨らみを見せており、何度見ても大きさは変わらない。これは非常に由々しき事態である。プールの時期がやってくれば、必然的に全裸を晒すことになる。その時になってクラスメイトたちにばれないかが心配だ。


 以前、胸の大きい生徒がいじめられた話をお兄ちゃんから聞いた。


 理由は女子たちの劣等感を煽ったからだ。好きで大きくなった人の方が少ないだろうが、こんな不可抗力的な理由であっても、いじめは起きてしまうのだ。


「璃子、どうしたの?」

「あっ、いや、何でもないよ」


 夏芽と冬美が同時に首を傾げた。


 このままじゃいつかばれる。でも優先すべきはここじゃない。


 テニスクラブには、各クラスの最上位グループが集まっている。魔境ではあるが、お互いに相手を牽制し合っている状態なのであれば、矛先がこっちに向かずに済む。


 むしろ迷彩戦略と相性が良いのではないかとさえ思った。


「ねえ璃子、静乃ちゃんって、あの金髪の子?」

「うん、そうだよ。ウクライナのキーウっていう場所から来たみたい」

「とても活発みたいだね」

「うちの学校、黒髪以外は事実上禁止だから心配なの」

「地毛証明書だったら、もう出したって、静乃が言ってたよ」

「そういう問題じゃないの。地毛証明書は、黒髪以外の人にも寛容な姿勢を示していますっていう建前なの。でも実際は提出した後も、みんなのお父さんとお母さんがやってくる運動会とかで、度々黒髪に染めるように言われた生徒がいたの。生まれつきだからと言っても全然通用しないし、もしかしたら、静乃にとっては大きな壁になるかもね」

「「……」」


 ほとんどは髪色を黒に染めさせられる。茶髪の生徒が全く目立たないのは学校の仕業である。


 ここ最近まで、この学校で黒髪以外でやり過ごしているのは、うちのお兄ちゃんだけだった。


 お兄ちゃんは生まれつき茶髪ということもあり、それが度々いじめの原因となった。地毛証明書は盾にもならなかった。あくまでも黒髪以外の髪色で登校するための許可証というだけで、いじめを受けずに済む権利を伴うものではなく、むしろ格好の獲物である。


 この学校の生徒たちは、厳しめの集団生活を送らされ、常にストレスが溜まっている。自分と違う存在を受け入れる土壌などないばかりか、鬱憤晴らしの餌にされてしまうため、黒髪以外どころか、目立つ程度の個性は全て事実上の禁止と言っていい。あいつだけずるいと思い込ませる心理が生徒たちに浸透しているのも、個性を発揮することへの抑止力となっている。


 タブーに触れた瞬間から、いじめは始まっているのだ。


 まるで軍隊の宿舎だ。居座っているだけで息が詰まる。1人だけ違う軍用服を着ていたら指摘を受けるように、静乃は日本の学校の洗礼を受けることとなるが、誰にも止める術はなかった。


「おい、そこの金髪!」


 威嚇するように張り上げた声が、静乃の背後から突き刺さる。


「……私のこと?」

「そうだ。お前、コートに立てよ。俺たちが腕を見てやるよ」


 言われるがまま連れて行かれる静乃。


 不運にも隣のクラスの最上位グループの生徒たちから早速目をつけられた。


 私は夏芽と冬美と後ろから静乃の様子を見守っている。誰かと一緒に移動する時、1番前に出てはならない。グループの代表と見なされる。前からは見えないよう、真後ろについておけば、私たちのグループが誰かに目をつけられた時、私の前にいる人が盾になってくれる。


 静乃は運動神経に優れた男子たちの前に全く歯が立たない。


 担当教師は見て見ぬふりをするばかりか、職員室へと帰ってしまった。


 表面上は自主性を重んじる方針とのことだが、教師にとっては最初と最後以外、職員室で休める貴重な時間でもある。これは放任主義ではない。ただの放置である。何か問題があったとしても、その場にいなかったとして、関与がないと見なされるばかりか、証拠がなければ立証することもできない。


 無論、それはいじめっ子たちも把握済みのようで、証拠は全て揉み消されてしまう。何なら担当教師が揉み消してくれるまである。この牙城を崩すのは決して容易ではない。警察が入る余地もないこの状況こそ、まさに無法地帯と言っても差し支えないだろう。


「ううっ……」


 静乃が全身に擦り傷を負いながらも立ち上がり、プレイを続けることを余儀なくされる。今にも倒れてしまいそうだ。タイムすら許されないまま、隣のクラスの最上位グループの生徒が目にも止まらぬサーブを打ち、ワンバウンドしたボールが静乃の頭にぶつかった。


「ああっ!」


 その場に音を立てながらバタッと倒れる静乃。


 結局、1ゲームも取れないまま、ゲーム&マッチとなった。


 この1マッチは、1時間よりも長く感じた。私たちは静乃が蹂躙される様子を、ただひたすら見守ることしかできなかった。迂闊に助けるようなことがあれば、助けた者までもが赤札を張られる。これが腐った王国のルールである以上、ここにいる間は助けられない。


 いじめっ子にかかれば、どんな球技であろうとも、紳士のスポーツから相手にボールをぶつけてKOする鬼畜な罰ゲームへと早変わりする。静乃は見せしめにされたのだ。


 誰かが弾圧しろと言ったわけでもなく、ただ人と違っているからというだけで、好きなだけ甚振ることを許容する空気が生徒の心を支配している。特に恨みはない。最上位グループの目についたというだけだ。うちのお兄ちゃんは運動部を勧められたが、これは帰宅部になって正解だ。


「ちょっと行ってくる――」

「待って」


 私は反射的に夏芽の体操着を引っ張り、静かに忠告する。慌てて後ろを振り返る夏芽だが、自ら火の粉を被る必要はないと言わんばかりに、火の海を広げまいとする私の手が夏芽を離そうとしなかった。幸いなことに、隣のクラスの最上位グループにはまだばれていない。


 正義感は時として己に牙を剥くこともある諸刃の剣。迂闊に抜いてはならない。


 自分なりの正しさがあると言いたいのは分かる。だが自己主張してもいいのは、それが意味を成す立場でいる時のみ。自らが世間に信頼され、従わせるだけの権力を握り、価値を証明して大多数を納得させた時だ。力なき正義など、何もないのと同じ。来るべき時までは力を蓄え、世の変化を見てから動くべきである。結論ありきでしか語れない連中と話すことなどない。彼らとぶつかりそうになった時は、テキトーに満足させ、嵐が過ぎるまで耐えるのが正しい対処法だ。


 夏芽は危うく罠に嵌るところだった。立場の弱い人間のために動けるのは立派だけど、助け舟を出したところで、沈められてしまえば、それは助けなかったことと同じであり、ただ喧嘩を売るだけの結果となることは目に見えている。被害者が1人増えるだけだ。


「でも……」

「もし逆らったら、次は夏芽がコートに立つことになる。相手は県内ナンバーワンクラスの男子。夏芽でも厳しいよ。勉強だったら勝てるかもしれないけど、ここはスポーツマンの狩場なんだから、まず勝てないと思っていい。渡辺君たちが何で動けないのか、少しは考えたら?」

「……」


 夏芽は自らの正義感を内に秘め、私に従ってくれた。


 彼女は不可侵条約(コスプレツーショット)により、私にはまず逆らえない。


 絶対に裏切れないようにしてから手駒にする。戦略の基本だ。身内以外の仲間とは、利用し合うくらいが丁度いい塩梅である。ただ、それでも一緒にいたいと思える人のことを、人は友達と呼ぶのではなかろうか。無論、私にそんな友達はいない。本当の意味で友達のいない私が過酷な集団生活を生き延びるには、仲間と協力しながら守りの堅い陣形を築くしか方法はない。後は何も起こらないことを天に縋るのみ。だが天は平穏など与えてはくれず、試練ばかりを私に与えた。


 それは夏芽とて同じであった。


「おっ、これはこれは、誰かと思えば狭山じゃん」


 馴れ馴れしく声をかけてきたのは、荒井亮太(あらいりょうた)といういけ好かない男子だ。


 父親がアスリートという変わり種で、根っからのスポーツマンだ。県内ナンバーワンと言われる身体能力を武器に様々なスポーツに手を出し、度々入賞を重ねているが、素行が悪いところがある。頭は良くないようで、学校の授業にはついていけないばかりか、人をいじめてはいけないという簡単なルールも理解できない。私と同じクラスになった時も、荒井君を中心とした最上位グループが形成され、私もその中に紛れ込んでいたくらいの腕っぷしと威圧感を持ち、喧嘩が大の得意である。


 女子が相手でも容赦はしない。目をつけた相手は容赦なく甚振る野獣。


 まともな学校であれば、出席停止処分になっていてもおかしくはない。


「荒井君、久しぶり」

「聞いたぞ。お前、コスプレの趣味があるんだってなー」

「それ単なるデマだから。あたしがそんなことするわけないでしょ。あれは江藤君のドッキリ企画」


 平静を装っている夏芽が荒井君をいなそうとする。


 一瞬、このテニスコートに熱風のような緊張感が走る。


「……だよなー! あんな趣味持ってたら大恥だよなー! 俺だったら怖くて表歩けねーよー!」

「これで分かったでしょ。二度とそんなこと言わないで」

「じゃあさ、これは一体何だ?」

「!?」


 荒井君が夏芽に渡したのは、1枚の写真だった。


 そこには以前と同様、夏芽のコスプレ写真が写っている。


「……冗談きついんだけど」


 夏芽が写真を片手で握り潰し、またしてもクシャクシャに丸めてしまった。


 何であの時と同じ写真を荒井君が持ってるの?


 江藤君の時もそう。やっぱり夏芽の知り合いの中に……裏切り者がいる。


 裏切り者が夏芽のコスプレ写真を何枚も複製し、それなりの影響力を持った生徒の靴箱にさりげなく投入し、またしても夏芽を陥れようとしていることはよく分かった。


 絶対に許さない。でも私が直接手を下すのは足が竦む。


 ここは当事者である夏芽に解決を促すべきかな……。


「俺のロッカーに入ってたんだよ。結構楽しそうに着こなしてんだな」

「だからそれは合成写真だって。最近は技術も進歩してきたし」

「――コートに入れよ」

「「「「「!」」」」」


 怖気が走った。夏芽はこの瞬間から赤札を張られてしまった。


 クラス内だけでも厄介なのに、クラブ活動の時間は違うクラスの生徒ともつるまなければならない。


 つき合う相手を選べないのは、集団生活最大の欠陥である。できることなら家に引きこもって、のんびりとチョコレートでも作って食べていたい。それが私の密かな夢である。だがそんなことを実行する余裕はない。面倒なことに、生活をするためには稼ぐ必要があるからだ。全ての貧困者は生活を人質に取られ、働くことを余儀なくされている。学校は働くことを余儀なくされている大多数が、誰と出会ってもうまくやり過ごすための訓練所という見方もできるが、いかんせん私には脂っこ過ぎる。今にも気持ち悪くて吐いてしまいそうだが、ここは耐えなければ。


 夏芽は黙ったまま、さっき静乃がやられたコートに入った。


 所々に静乃が必死に走り回った痕跡がある。試合に負ければ髪を黒染めするという約束をさせられていたのだから無理もない。静乃はコートの角で今すぐにでも彼女に寄り添ってあげたい。でもみんな荒井君を恐れて近づこうとすらしない。私もそれは同じだった。


 ――私にもっと力があれば、こんな惨い仕打ちは回避できた。


 何もしてあげられない自分が情けない。


「あー、そうそう。狭山が終わったら、次はそこの女子な」


 荒井君が新たな生け贄を指差した。指名されたのは冬美だった。


 夏芽のそばにいたことが災いし、同類と見なされたようだ。私は荒井君からの殺気を感じ取り、足音も立てずに用事を装い、他のグループの女子に紛れていた。他の女子たちと全く同じ白い体操着であることに加え、テニスコートのそばにある白い壁に沿うように立つ。ちゃんと見ていなければ、私を含む周囲の生徒はただの背景にしか目に映らず、気づくことも困難だ。


 幸いにも、荒井君はそこまで頭が良くない。動くもの全てを破壊することしか能がないなら、動かなければ認識されない。だがこのままでは、隣のクラスの最上位グループを除く生徒全員が、荒井君と試合をさせられるのは時間の問題だ。どこかで私に辿り着くかもしれないが、その時は別の作戦を実行に移すまで。お兄ちゃんと同様、私もクラブ活動を休めばいい。


 クラブは1年に一度だけ変更できるが、正当な理由があれば、別のクラブに移動することもできる。程度によっては他のクラブに変更することも視野に入れ、スポーツがあまり得意でないことや、体が小さくてすぐに疲れてしまうことを理由に移動し、過酷な試合を強制されたと言って同情を買えばすぐに馴染める。運動会や体育の授業で手加減していたことで、運動音痴と見なされるという周囲からの認知を武器として使えるのだ。クラブ変更というカードがある私にとって、この地獄から離脱するのは至って簡単だ。その場合、夏芽と冬美を見捨てることになる。いや、ここにいる全員だ。


 お兄ちゃんならどうしただろうかと考えた。


 多分、呆れて教室にでも帰ってしまっていただろう。私も度胸があればそうしていた。


 今頃は家に帰ってコーヒーを淹れているだろう。唯一の帰宅部となったお兄ちゃんの行動は。異端ではあるが、選択肢で言えば大正解。料理クラブに入れないなら、私も帰宅部が良かったけど、義務である以上、お兄ちゃんのように帰るわけにはいかない。帰宅部という項目はなく、お兄ちゃんは名目上、野球クラブ所属ということになっているが、卒業まで一度も姿を現すことはなかった。


 そんなことを考えていると、1球のボールが荒井君に向かって飛んでいく。


「うわっ!」


 慌てて荒井君がボールを回避する。


「あー、悪い悪い。そっちに飛んじまった」


 返事をしたのは、さっきまで壁当てをしていた浅尾君だった。


 何食わぬ顔で荒井君が居る場所にまでのっそりと歩み寄る浅尾君。


「お前さー、さっきから女子ばっか相手にして、恥ずかしくねえのかよ?」

「あぁ!? 文句あんのか!?」

「あるに決まってんだろ。お前ばっか試合してるし、何で中津川と狭山をこんな目に遭わせるわけ?」

「あいつらは俺たちと違うから目につくんだよ。中津川って奴は、外人だからって調子に乗ってるし、狭山はコスプレの趣味があるんだ。ここでちゃんと教育しておかねえと、社会に出た後で困るだろうからな。ちゃんと足並み揃えることを体に教えてやってるんだよ」

「別にあいつらがどんな髪色だろうと、どんな趣味だろうと、お前の人生に関係ねえだろ。これ以上こんなつまらねえマネをするなら、俺が相手になってやるよ」

「ハッ、後で吠え面かくなよ」


 浅尾君がコートに立つと、夏芽も静乃も呆気に取られながら浅尾君を眺めている。


 結局、荒井君は浅尾君に打ちのめされてしまい、試合終了と共にチャイムが鳴った。


 荒井君は静乃との試合で何度もサーブやリターンを全力で打っていたために体力を消耗し、しばらくラリーを繰り返している内に浅尾君に押し切られてしまった。荒井君は身体能力こそ高いが、スタミナ不足という弱点が発覚した。そんなに長くプレイできないのであれば、ひたすらサーブを受け続けるだけで十分かも。ごく普通の男子だと思っていたけど、立場の強い人が相手でも物怖じしない浅尾君は、どこかお兄ちゃんに通じるものがあった。私は浅尾君のことを過小評価していたのかもしれない。


 クラブ活動の時間が終わると、職員室でサボっていた先生がやってくる。


 先生がいれば、さっきまでのような横暴な立ち振る舞いはしにくくなる。


 終礼を迎え、下校時刻となったが、何やら静乃の様子がおかしい。

読んでいただきありがとうございます。

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荒井亮太(CV:小栗旬)

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