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⑻『甘い音は、風に乗って』
⑻『甘い音は、風に乗って』
㈠
甘い音が、群衆の中核から、突拍子もなく溢れ出す。奇跡の墓地のことなど、更々脳内にはなくても、或る場所に誘われるかの如く、我々の我々が動き出すのである。小説家Aは、そんな風に、こんな風に、文章を書くのだろうか、その現場を見た訳ではないが。
㈡
それにしても、分からないことが多すぎる、という一種の訳の分からない矛盾点は、明示されるだろうから、宇宙の果てに、それも、銀河という銀河の果てに、暗室なる空間があって、それは実は、自明の理であるにも拘らず、知らないことでも、周知の事実に変容するだろう。
㈢
そういったことも、小説家Aは理解しているようだから、脳内の小説家Aによって、俺は必然的に、意識の狭間で叫ぶかのように、文章を殴り書きして、到達点までダッシュするのである。もしくは、奪取、こんな笑えない、馬鹿らしい言葉遊びも、小説家Aなら、笑って許してくれるだろうから。