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敵同士の恋愛シリーズ

もしも私達が違う世界に生まれていたならば

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2022/01/30





 この世界で私達が結ばれる事はないだろう。

 それは私達が生まれる前からそう宿命付けられたいた事だ。

 だから、私達は決してこの世界では幸せにはならない。なれない。


 もしも、違う世界で生まれて、お互いに出会っていたのなら、私達は結ばれていただろうか。






 この世界では、戦ばかりが起こっている。


 誰かが誰かを傷つけなければ気が済まない、そんな世界だった。


 敵を許すなんて、選択肢は存在しなかった。


 はじまりの諍いが何だったのか、もはや誰も覚えていないほど諍いは繰り返された。


 争いの火は消す事が不可能なほどに、広がっていってしまったのだ。


 私のいた国は、私が生まれる前から戦を続けていて、私が死んだ後も戦を続けていくのだろう。


 生まれた時から、自分の国以外の人間は敵だと教えられてきた。


 自分の国の人間でも、敵に寝返れば敵なのだと教えられてきた。


 だから私は、自分の国以外で人を見つけたら、当然の様に敵だと思うようになっていった。


 それがその世界では正しかったから。






 子供達が学ぶべき勉強の項目には、戦い方が含まれているのが当然だった。


 武器の整備の仕方、武器の作り方なども、戦略の練り方などなど。


 生活をしていかねればならないから、ある程度の読み書きや算数などは習う。


 作物の育て方や、社会の成り立ち、歴史なども。


 けれど、一番重要とされているのは戦いの勉強だった。


 国がなくなってしまえば国民は生きていけなくなる。

 だから、それは当然の事と考えられていた。


 それらの事に、不満はなかった。


 当然だと思っていたからだ。


 遊ぶことは贅沢だと言われた。


 特別な日以外外で遊んでいる子供を見かけたことはない。


 原っぱや公園で見かける子供達は、いつも仮想敵に向けて訓練をしていた。


 贅沢をしている家庭も見かけたことはない。


 贅沢をする余裕があるなら、そのお金で武器を作り、兵器を作った方が良い事だと考えられていたからだ。


 贅沢をするのは敵に勝ってからでいいと考えられていた。


 それがいつになるのかは、誰に知らないけれど。






 そんな世界で育った私が、まわりの人間と同じように育つのはある意味必然だったのだろう。


 そのまま、同じように生きていけたら不幸などどこにもなかったはずだ。


 志半ばで倒れたとしても、自分の国を信じ切っていたなら幸せだったはず。


 けれど、そうはならなかった。






 成人して、軍に志願した私は。めきめきと実力をつけて出世した。


 そして、とある任務でその男性と出会った。


 その男性は初めは味方だと思った。


 負傷した味方兵にまぎれて、味方の制服を着ていたのだから。


 私は彼の手当てをして、彼と話をした。


 けれど、彼は敵だったから。


 血の様に赤い髪をした彼は、スパイだったから。


 すぐに許せなくなった。


 彼は、こちらの内情を敵に流していた。


 私達の軍は、情報がつつぬけになって、何度も損害をうけた。


 そしてある日の夜、その男性の手によって陣地を焼き払われた。


 その瞬間に、彼が敵だと分かった瞬間に、これまで彼とかわした会話の内容は忘れた。


「絶対に許さない」


 彼の背中に向けてはなったその一言だけを、覚えているために。








 次に出会った時は命をもらう。


 そう思って、別れたはずなのに。


 その出会いは、予想外だった。


 私のいる国が急激に力をつけていって、彼のいた国を滅ぼした。


 その国の王子様はギリギリで国外へ脱出したようだけれど、もはや国は再起不能。


 私達は、敵国の兵士達を人質にして大量に捕らえた。


 それは、どこかにかくれ潜んでいる王子を、投降させるためにだ。


「出てくれば、この兵士達をいたぶらずに一思いに殺してやる」


 上官がそう叫んだ。


 生かす、なんて選択肢はなかった。


 楽に殺してやる事だけが取引材料だった。


 そんな中、私は過去に陣地を焼き払った男性の名前を知った。


 彼の名前を知ったのはこの時が初めてだった。


 味方だと思っていた時ですら、名前を知らなかったのだ。


 どうしてだろうか。


 私はそれが少し不思議だった。


 他の仲間達の名前はすぐに憶えていたというのに。


 騙されていたとしても、あの時は、共に戦う大切な仲間達だった。


 私達は、いつ死ぬか分からない。


 だから、肩を並べて戦う者達の名前は、絶対に覚えておくようにしていたはずだ。


 けれど、彼の名前だけは覚えられなかった。


 私はおそらくその疑問を抱いた時、彼に興味を引かれてしまったのだろう。







 数日後。


 敵国の王子は生き残っていた兵士達を引き連れて、わが国に決死の突撃を行った。


 ふいをつかれたため、私達の軍はたてなおすのに、だいぶ苦労した。


 王子の首をとる事はできたが、人質たちを数名逃がしてしまったのが失態だった。


 それは、かなりまずい失態だった。


 あとから考えたら、取り返しがつかない程に。


 その時突撃してきた王子は、どうやら影武者だったらしい。


 どういうわけか、人質になっていた兵士達の中に本物の王子がいたようだ。


 一体なぜ、本物の王子が兵士のまねごとをしていたのか分からない。


 不可解な事だらけだった。


 それはともかく、まずい事になったのは事実。


 私達は責任をとらされて、辺境の地で起こっている戦場へと向かわされた。


 そこでの戦いはこれまでの戦いに比にはならないほど激しかった。


 勝てる要素が微塵もない戦い。


 それもそのはず、敵は同じ人間とは思えないほどの力を持っていたからだ。


 敵は、「魔法」なる不可思議な力を操っていた。


 だからその戦いは、ただ兵士を消耗し、壁とするだけの戦い。


 その人外が我が国と多国の争いに介入してこないようにするためだけのもの。







 そして、三度目の邂逅が果たされる。


 因縁の男性は、なぜかその地で敵にまざっていた。


 魔法を使う者達の中に、だ。


 彼のいた国は、魔法のない国だったはずだ。


 わけがわからない。


 何度彼の前でそう思っただろう。


 私はすっかり混乱していた。


 辺境の地に飛ばされた衝撃もあって、精神的に参っていた私は、彼にあっさり負けて捕虜となってしまった。


 しかし、私は殺されなかった。


 そして、そこで明らかになったのは彼の一族について。


 彼はもともとは、魔法を使う一族の王様だったらしい。


 しかし、何かの手違いで人間の国の、王様になるはずだった子供と取り違われた。


 それで、人間の国の王として生きていたのだとか。


 けれど、普通の人より力が強かった。


 それに加えて、何もないところから火を出す力を行使できた。


 だから、戦場で戦っていたのだとか。


 最後には結局、国は滅亡し彼一人になってしまったらしいが。


 その後、彼は自分のルーツをたどって、その後この地に流れ着いたらしい。


 今まで敵の事情について詳しく知る事なんてなかった。


 私は、彼の苦労話を聞くうちに、すっかり親近感を覚えてしまっていた。


 私の女の身で、戦場にでる事になるのに、だいぶ苦労したから。








 力をかくして生きていかなければならなかった事。


 力がばれてしまっても、周りの人間が受け入れてくれた事。


 そんな人たちを守りたいと、王子でありながら戦場に立つようになった事。


 そんな彼を守りたいと思って、身代わりの王子になる人が現れた事。


 私はその話を聞けば聞くほど、彼の事を敵とは思えなくなってしまった。


 彼とは戦えない、そう思ってしまうようになったのだ。







 もう軍人には戻れない。


 私はそう思っていた。


 けれど、世界はどこまでも争いの火を広めようとしていた。


 新しい兵器の開発に成功したのだろう。


 私の知らないどこかの国が、その兵器を使って魔法が使える一族を滅ぼした。


 偶然地下にいた私と、そこで話をしていた男性以外は、滅びてしまった。


 その兵器は、それからもいたるところで国を占領するのに一役かっていたらしい。


 私達は、どうすればいいのか分からなくなった。


 そこで、二人で手をとりあって、全てを忘れて生きていくと言う選択肢もあっただろう。


 争いのどうしようもない側面を見てきた私達は、協力して戦いのない生活を送る事ができたかもしれない。


 でもそれは、あり得ないお話だ。


 私達は決着をつけるために、結局争い合う事にした。


 だって、それ以外の道を見つけることなんて、教えてもらってはいなかったから。


 そんな事は、仮想の物語にすら存在しないい。


 遠い昔にあった、「和平」や「共存」の物語は、すべて戦の中で焼き払われてしまった。


 想像できないものは、実現できない。


 戦乱の世界に生まれた私達は、行きつくところに行くつくしかなかったのだろう。


 たった二人だけの決闘を行って、相打ちになった私達は、争いのない世界を想像する事さえできないまま、その生涯に幕をおろした。


 なぐさめに互い言葉をかける事なんてしない。


 もしも、なんて夢想もしてみようとしたけれど、結局できなかった。


 ただ、死に向かう意識は空白の世界におちていった。






 この世界で私達が結ばれる事はなかった。

 それは私達が生まれる前からそう宿命付けられたいたのだから。

 だから、この世界で同じ機会をもらったとしても、私達は決して幸せにはなれない。


 もしも、違う世界で生まれて、お互いに出会っていたのなら、私達は結ばれていただろうか。

 分からないのだから。そんな夢想に、意味なんてない。








「貴方の名前を教えて。怪我の手当てをする時、名前が分からないと他の人と情報が共有できないでしょう?」

「それは、後で教えるよ」

「どうして? ふざけてるの?」

「怖い顔すんなって。なんでかあんたには、教えたくないって思ったんだよ」

「意味が分からないわ。私嫌われるような事した?」

「いいや、むしろ逆だよ。変な事いったな、忘れてくれ」

「いいわよ、そんな人の事なんてすぐに忘れるわよ。興味なんてもってやらない」

「おいおい、怒るなって」


 潜入用に使った仮の名前じゃなくて、本名で呼ばれたいって思ったんだ。


 あんたが、俺と同じ国に生まれていたら、皆と同じように俺の事を名前で呼んでくれたのにな。



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