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?章 幸福
?章 幸福
限られた空間の中で、一人の男の子が一点を見つめている。視線の先には、楽しげに会話をする人の姿が見える。
複数いる人のうちの一人が、こちらの方に視線を移し、笑顔で何かを言っている。言葉の内容は分からないが、とても嬉しそうだ。
男の子は、静かにその光景を見つめる。幸福が目の前には存在し、それをずっと眺めていられる。そんな光景に一つの音が鳴った。それは、扉をノックする音だった。
扉をノックする音の後、悲鳴が起きる。幸福な光景が燃え尽きる蝋燭の火のように消える。そこからは何があったのかは、分からない。
ただ分かっていることは、幸福な光景が存在していた場には、一人の男が立っていた。その男の手には、血塗られた刀が握られていて、男の視線がこちらに向けられる。その時、男の子は人生で初めて、死を直感した。