ブラウン管が見る世界
僕の人生には色がなかった。
僕の目に映る全てのものは色を失った姿で、その細部を確認しようにも靄がかかっているようで見ることができない。
僕は何も喋れない、何処へも行けない、何も作り出せない、誰も必要としないガラクタ同然だ。
だけど僕に期待し、手を差し伸べてくれる人がいた。
「君は本当は凄いんだ、人々に影響を与えることが出来る、それはとてもとても素晴らしい力だ」
必死に励まされた、だけど僕には無理だ、僕に出来ることなんてない。
こんな奴に何を期待しているんだ。早く見捨てろ。ゴミは何してもゴミにしかなれない。
酷い言葉を投げつけられた、でもその通りだ、僕に力なんてあるはずがない。
自分に可能性なんてないことに自分が一番わかっている。何をしても何も変わらない。
それでもこんな僕に可能性を感じて更に沢山の人が手を差し伸べてくれた。
すると、誰かと協力することで新しいものを作り出すことに成功した。
その光景を見て笑顔で手を取り合っている人たちがいた、僕はその姿を見ていると、どこかふわふわした気持ちになった。
更に手を差し伸べてくれる人が増えた。
僕は沢山の人の助けにより喋れるようになった。
僕が初めて言葉を発した瞬間歓声が上がった。
その光景を見ていると体がとても熱くなる、熱い熱い、なんだこれは心が破裂してしまいそうだ。
戸惑う僕に周りの人が教えてくれた。
それはね、’喜び’って言うのだよ。
僕は喜びの感情を覚えた、同時に僕は人を喜ばせられるということも覚えた。
その瞬間僕の世界に色が生まれた。
赤、緑、青、黒、白・・・
ああそうか、これが皆が僕に見せたかった世界なのか。
僕の世界に色という概念が生まれたことに多くの人が驚いた、そして感動してくれた。
僕はようやくあの人の言葉が理解できた。
僕には人々の心を動かす力がある。沢山の人が僕に手を貸してくれて、長い時間を掛けて、僕にそれを気付かせてくれた。
じゃあ次は僕の番だ、次は僕が沢山の人に感動を届けよう、そして更なる感動を生み出すための橋渡しとなろう。
僕の可能性を信じて手を貸してくれた人達、彼らの思いを次に届けるために、また新たな感情を人々に与えるために
僕は僕の人生を捧げよう。