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百合の花と母を思う。

作者: 織花かおり

背の低い母が心を込めて育てた百合の花。

皆さんだったら、どんな思いを抱き、なんと言葉をかけるでしょうか?

パソコンで文字を打っていると、疲れる。

目が辛いな、ひじが疲れたな、休憩して飲み物でも飲もう。

そう思った時。

ふわりと百合の香りが漂った。

高貴な女性を思わせる、強いようで優しい香り。

そうか、百合が咲く季節か、そう気づいてふっと笑う。

背の低い母が、一生懸命育てた百合。

どうして、庭で咲いている時点で気づかないのか、自分の鈍感さが嫌になる。

一つ一つ花が咲いて、母が花瓶にいけたのだ。

見に行くと、黄色、ピンク、赤紫、と本当に美しかった。

花の香りは、何のためにあるのだろう。

以前、小学校の教科書に掲載されていた話に、蝶は色で花を見分けると書いてあったが、確かだろうか。

しかし、たいがいの昆虫は、きっと百合の香りに惹きつけられるのだろう。

人間である私も惹きつけられた。

でも、私を惹きよせても、百合にメリットが何もないことが大変申し訳なく感じられた。

人間は、花によって心に潤い、癒し、幸せ感など大変好ましい感情を抱かせてもらう。

それなのに、私ときたら、花瓶の水さえ取り換えたりしていない。

私も何かお返しがしたかった。

だから、心を込めて言った。

「ありがとう。とてもきれいよ」

もっと何か言いたい。

でも、世話をしたのは母だ。

おいしい所だけをつまむようで、私はまた申し訳なく感じる。

だから、母に心を込めて言った。

「百合、とてもきれいね。ありがとう」

それでも、足りない。

どうしてこんなに健気に咲けるんだろう。

どうしてこんなに人の心を打てるんだろう。

どうして何も言わなくとも、花と母の愛は伝わるのか。

いつか、百合に心底納得いく言葉が返せる日がくるだろうか。

そして、決して若くない母にも。

百合を思う。

母を思う。

できること、ひとつずつ。

百合が一輪一輪咲くように。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

何か感じたことがございましたら、感想などいただけましたら幸いです。

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織花かおりの作品
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作成:コロン様
― 新着の感想 ―
[良い点] 私の母と重なりました。母は若い頃華道を習っていたので、花を生けるのがとても上手なんです。いつも庭の花を生けてくれて。「百合の花と母を思う。」って、私にも身近な話題で「ありがとう」と思う気持…
[良い点] 植物に想いを寄せて表現するのに感じるものがありました。母子の関わりに感謝を伝える姿は素晴らしいことだと思います。 [一言] 我が家にも百合は咲いています。そこに美しさを読み込むのは人の営み…
[良い点] 百合の花は、球根を植えてから咲くまでに、9~10ヶ月もかかるので、育てるのに根気が要りますよね。 途中で、水不足とか水のやり過ぎ、肥料のやり過ぎとかをしてしまうと、綺麗な花を咲かせること…
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