努力が結果に繋がらない男
どうぞお読みください。
1月4日 改稿作業しました。少し付け足した部分もあります。
努力とは、
「目標を実現するために、心や身体を使ってつとめること。」
なんだそうだ。
しかし俺は質、量込みで2年毎日20時間の勉強をしてきた大学入試を落とした。
学校にも行かなきゃならないから睡眠1時間。もちろんバラバラ。食事は5分で。風呂の浴槽なんか入ってられないからシャワーを3分だけ。
人の限界を試しているようなものだった。両親は俺が努力し始めると一直線なのを知っているので、何も言わずにサポートに徹してくれていた。
大学入試落ちた後は引きこもった生活を送るようになってしまった。まあ入試前も学校以外で家の外に出ることは無かったのだが。両親もずっと勉強していた俺に甘くなった。
最後には、「遺産を全て残すから」と両親二人共まだまだ元気なのに亡くなった時の俺のことまでも考えてくれていた。
それを相談された時、俺は自分の弱さを恥じた。大学入試に落ちた人はいっぱいいる。その人たちももう次に向けて勉強しているはずだ。それなのに自分だけ部屋の中にひきこもっていてはダメだ、と。
ただ、今は勉強する気になれない。だから、「引きこもっていないで外に出る」これをひとまずの目標にしようと。
目標達成への具体的な道筋を考える。
まず、目標達成とするのは「スーパーに買い物しに行く」こととする。最悪、両親が亡くなってしまったとしても、食料を買いに行くことはできるようになっておきたい。
次に家からスーパーまでの間で邪魔になりそうなものは、、、無い。1本道なのだからある方が難しい。ただ、横の路地からの車に気をつけないと。半年のブランクは大きい。信号や車を見落とす可能性もある。
最後に証拠として買い物をするためのお金だ。、、、ある。貰ったけど使ってないやつが。その中から適当にとる。
そして、行く。
俺は勉強の時もそうだけど、やる、と決めたらすぐやらないと気が済まないタチだから、二階にある部屋を出て、階段を降り、リビングにいる親に伝える。
「ちょっとスーパーに行ってくるわ。なんか欲しいものある?」
「はっ?今なんて?」
半年間、家の中に引きこもっていたのだ。そう言われても無理はない。
「だからスーパー行ってくるからなんか欲しいものある?って聞いてるの。俺も変わらないといけないからさ。」
「ああ、うん。突然過ぎてな、ちょっとビックリしとった。で、欲しいもの?お菓子でも買ったらいいんじゃないの。柿ピーとか。」
そう言った親の顔は涙を流していた。
*
久しぶりに出た外は寒かった。人は少ない。
スーパへと向かって歩く、歩く、歩く。
住宅街は不気味なほど静かだった。寒い上に風が吹いているからだろうか。
10分くらいすると橋を渡る。しかし橋のたもとでは数人のおばちゃん達が井戸端会議中だった。もちろん俺は顔を半分隠しながら進む。
まもなくスーパーだ。
ただ、スーパーの前には大通りがある。そこは人が意外と歩いていた。俺にとっては結構な難所だ。
足が、すくむ。
周囲の人全員が全員、自分に向かって笑っているように思えた。
だから、スーパーの前の大通りに出るところで逡巡した。
自分が笑われているわけではない、と分かっていてもやはり止まってしまう。
でもどうにか、前へ一歩を踏み出す。
その一瞬、一歩目の右足の足裏が地面につくかという時。
ドーン、後ろからの衝撃とともに意識が飛んでいく。
車のブレーキ音といろんな方向から何かがぶつかっていく音がする
視界はだんだん不明瞭になって行く。
グシャ。背中にまた衝撃が来る。
意識が、なく、なる。
お読みくださりありがとうございました。