命の引換券
僕は、今20歳。
これを書いている頃にはもう僕はこの世にいないだろう。
本当に何も無い人生だった。
それでも、僕は後悔はしていない。
なぜなら今僕は幸せだからだ。
2018年5月。
たいせいー?あんた仕事は?もう高校卒業して1ヶ月よー?
鳥のさえずりを聞いて起きたかったなぁ。
そんなことを思いながら眠い目を擦りながら今日も昼起き。
高校が終わってからの僕といえば、毎晩夜遅くまでネットゲームを楽しんで、翌日の昼頃に起きるのが日課になっていた。
「あぁ!わかってるよーなんかいいの見つけて適当に仕事するから〜」
そう返事を返して僕はまた眠りにつこうとした。
鼻息を荒くして母親が僕の部屋に押しかけてきた。
「いつまで寝てんの!?そんなことばっかしてると、ろくな大人になれないよ!?」
仕方ない。とりあえず起きるか。
体を起こし目を擦りながら
「はいはい。」
とだけ返した。
そうすると、母親は諦めたのか、ブツブツ言いながら出て行った。
もう一度寝ようかと思ったが、せっかく起きたのでパソコンの電源を入れ今ハマっているネットゲームを起動した。
下手くそな訳では無いが、これといって得意な訳でもないためかあっさりと負けた。
「はぁ。こんな昼からなんてついてないんだ!」
そう思いながらパソコンを一旦辞めスマホをいじった。
すると、LINEが来ていることに気がついた。
友達からだ。内容は
「なぁ!LINEグループ入らないか?」
僕は考えた、あーグループかぁ
高校の時にはリアルな友達がいて、ネットの友達と言うのとはLINEをしたりという機会はなかった、それでか、満更でもなく
僕は「入る」とだけ返事をした。
そうしたら、数分たってまたスマホに通知が入っていた
たいきがグループに招待しました。
あー、もう来たのか。とおもいつつ
その通知をタップしてグループに参加した
グループにはもう既に30人ほど入っていた。
僕は学校でかなりのキチガイキャラだった
そのためか、そのグループでの挨拶もかなりキチガイにした
「うぇい!たいせいでぇす!ぴぃぇぇぇぇ」
すると、既読が2、3と増えていき
返信が帰ってきた
「よろしく」
質素すぎて何だか虚しくなった。
すかさず
「ノリ大事だぜぇ?」と返した
そうしたら
「テンション高すぎな?w」
と帰ってきた
あ、僕は少しテンション高すぎたかなと思いそのあとは普通に会話をした。
そうしてしばらく喋っていたら
そのグループで通話が開かれた
興味本位で入ってみたら誰も喋っていなかった
あれ?誰もいないのかな?と確認するも
通話には4人いる
僕は
「もしもし?」
と言ってみた、そうしたら
「もしもし」
と帰ってきたので
あ、話せるじゃんと思い
たわいもない会話ネタをふり出したら
案外ウケた。それに僕は気分を良くして
どんどんネタをブッこんだ
その後、いつのまにかそのグループ通話に必ずと言っていいほど招待されるようになった
僕はなんだか嬉しくなって、毎回毎回ボケやネタを入れてその場を沸かしていった
そうして数日経ったある日。いつものようにグループ通話に招待されていたので入ったら
恋バナが開かれていた
そうしたら、そのグループ電話の中の1人が
僕に「たいせいは?好きな人はいないの?」
と聞いてきた
僕は「いませぇーん!俺無料ですだからどなたか貰ってください笑」
なんて言ってまた笑いをとった
その後あらかた話し終えてみんな満足したのかその時5人いた通話が僕と女の子1人だけになってしまった。
僕は飽きさせては悪いと思い
とりあえずネタをかました
そうしたらクスクスと笑ってくれたのだ
一安心し、僕は思い出したかのように
彼女にこう言った
「なんか悩み事とかないのー?今なら無料!聞きますぜぇー!?」
そう言ったのだが彼女からの反応はなかった
僕はとっさに
「ごめんごめん!大きなお世話でしたね!笑」
と返した。
そうしたら、彼女が小さな声で
「私は神代(ネット名)って言うの」
と言った。
僕は、
「あ、神代ちゃん?わかった!よろしくね!」と言った
そうしたら神代は
「私の相談事を聞いて。」と言った
「わかった!」
と答え、僕は黙って聞くことにした
話を聞いているとどうやらこの神代という子は、欠損家族で親からいろいろな不都合を受けて現在はネットで知り合った一人暮らしの男性の下にいると言う
そこで僕は神代に
「彼氏さんかなんかなの?」
と尋ねた
そうしたら神代は
「そう。でもね…」
と答えた。
僕はでもねの続きが気になったので、さらに追求した
「でもねどうしたの??なんでも聞くよ?」
そうしたら神代は今その彼氏から受けていることなどを全て話してくれた。
それは、今の彼氏は男だからだろうか?
体の関係ばかりを求めてくる男だと言うことがわかった。神代が女の子特有の日だとしても、行為を求めてきたり。軽い暴行を加えたりと色々悩まされていることがわかった
そうして僕は神代にこう伝えた
「他にいい人はいないの??」
神代はただ一言。
「いないよ」とだけ答えた
そして僕はそれを理解した趣を伝えその日は会話を終えた。
次の日。またネットゲーム漬けな僕は昼に起きた
なんだか昨日話した女の子神代のことが気になり連絡をしてみようと思い、スマホを見たら神代から、スタ爆とグループ通話の招待が大量に来ていた。
焦ってどうした??と尋ねたら
「暇だから。」と答えた
僕はひとまず安心して、神代に
「通話しようぜ?」と言ってみた
そうしたら「うん!」と来た
そうしてグループで通話を始めたのが
12時30分通話を終えたのは22時10分頃だった。
あまりに会話が弾んで楽しかったせいか時間なんて概念はすっかり忘れていた。
僕は通話の終わり際神代に
「また話そうぜ!楽しかったわ!」
と伝え電話を切った。
そうしてそんな感じでおおよそ1ヶ月
彼女と半日以上話すという生活が続いた。
そして。
2018年6月上旬。
僕は運転免許を取るため合宿に来ていた。
その時も変わらず神代とのライン通話は続いていた。
そしてその合宿中のある日の夜
神代から突然泣きながら電話がかかって来た。
「もう嫌だ。助けて。」
僕は必死に慰めた
「なんでわかってあげないんだろうな!
ほんと腹立つ!!俺なら絶対大事にすんのに!」何気なく言ったこの言葉が彼女の心に光を与えたのか彼女はすがるように僕にこう言った。
「私を助けて?」
僕はその瞬間、それまで抑えていた彼女への好意を爆発させた。
おおよそ1ヶ月その間僕は密かに彼女の魅力に惹かれつつあった。でも、僕は極度のビビリのせいか手を出すことはしなかった。
神代には彼氏がいたからだ。
それでも僕はそんな気持ちがその時には消え去ってしまっていた
それどころか、なんとしてでも幸せにする。
なんて決意に満ち溢れていた
その日から僕は、いろいろなものに対して熱心になった。ただひとつ大きな壁だったのがお金だった。僕は無職だ。金などない。
彼女を強引に引き取りたくても引き取れない。
それでも僕は彼女を大切にしたい。
そう考えていた。
仕方なくバイトを始めた。
嫌で嫌で仕方なかったバイト。それでも彼女のため。と思えばなんとか続けることができた。
そうして
2018年12月
僕はバイトでなんとか貯めた50万円を片手に
家を借り。彼女の飛行機代などを出して
僕の住んでいる町に来させた
そして僕はひとまず安心し、彼女に軽く家事をやるように伝え
僕は一生懸命仕事した
母親からは「明日は大雪だわ!」なんて冗談を言われることも多くなった
そうして、頑張って仕事をして働いて稼いだお金で彼女に洋服をプレゼントした。
センスのない僕は女の店員さんに聞いたり、友達に聞いたりして僕なりに頑張って探した、それを彼女に渡したら
思いもよらず相当喜んでくれた
僕はすごく嬉しかった、こんな僕でもようやく役に立てる時が来たんだと喜びを噛み締めて日々を過ごしていた。
そんなこんなで年が変わり約3ヶ月。
なんの変わりもなく順調にことが進んでいると感じていた矢先。悪魔が彼女を襲った。
2019年3月下旬
〜病院にて〜
先生!彼女はどうなんですか!?どこか悪いんですか!?僕はそう必死に先生に聞いていた
というのは、今から5時間前のことであった。
もうすぐ四月だね?お花見したいなぁ
なんて話をしていた時だった。
彼女が急な頭痛を訴え倒れてしまった。
そうして病院に緊急搬送され、手術を受け一命を取り留めたのであった。
その後、医師に呼ばれ現在に至るのである。
先生!どうなんです!?彼女はなんか重たい病気なんですか???
と僕が凄い勢いで聴くと医師はおもむろに口を開いてこう言った。
「あなたの彼女さんは脳みそが溶けて消えていく難病にかかっています。この病気が進めば自分のことはおろかあなたのこともわからなくなり、最後は必ず死んでしまいます。
もって後、3ヶ月の命です。」
僕は開いた口が塞がらなかった。
僕は必死に先生に問いかけた
「治せないんですか!?どうやったら治せますか!?いくら、いくらあれば治せるんですか!?!?」
医師は冷静にかつ、冷酷にこう答えた。
「お気持ちはわかります。
ですが、ドナーがいない限り治ることはあり得ません。お金の問題もそうですが、そもそも脳の全摘移植なんていうのは、不可能です。たとえ変えたとしてもあなたの事はわからないままでしょうし、意味はないと思います。今回は本当に申し訳ないですが、私達でもどうしようもありません。」
僕は暴れた。椅子を蹴り飛ばし足をふみ鳴らし外へ出ていった。
そうしてしばらくして彼女の病室に戻ったら
彼女が座って外を眺めていた
僕は彼女に今できる限りの精一杯の笑顔で
「おっ!調子はどうだい!?」
と聞いた
そうしたら彼女は
「うん、だいぶ良くなったみたい。
心配かけてごめんね?」と言った
僕はその顔を見て思わず泣きそうになったがそこは涙をこらえ笑顔で強く抱きしめた
そして次の日、医師に呼ばれたので病院に行った、そしたら先生は僕にこう言った
「昨日お話しした通り、彼女には治るすべもなく、先も長くはないので、お外に言って残りの時間、一緒に過ごされてはいかがですか?」僕は、涙を流し「そうします」と答えた
病室に行くと、彼女が頭を抑えていた。
僕が急いで近くにより「どうしたの?!」
と聞くと、彼女は僕に「名前が思い出せないのよ、なんだっけ?私達がこの前話してた、やろう?って事」僕は答えた
「あー!お花見だよ!笑なんだよーわすれんなー?笑」僕は全力で笑顔を作ってそう答えた
もうこんなに?!こんなに病気が来てるの!?なんで!?なんで彼女だけ…
そう考えることばかりになっていてぼーっとしていたら、彼女が必死に話しかけているのを気づけなかった
急いで「ごめん!ごめん!どした?」と返すと彼女が不安そうな顔で、「私、死んじゃうの?」と聞いて来た。
僕は笑いながら「大丈夫!ちょっとした疲労障害らしいから、休めば治るよ!」と言った
そうしたら彼女はどこか疑問な顔を浮かべながらも「うん」と頷いた。
その次の日。
「退院できてよかったね!」そう言って、
僕は車椅子に彼女を乗せて、病院を出た。
2019年4月上旬
桜がひらひらと舞い散る季節になった。
引退してからおおよそ7日たった。
彼女の忘れは今や自分の名前すらわからない状態になっていた。
僕は彼女に精一杯の笑顔を振りまいた。
彼女はそれでもよく笑っていた。
そしてある日、僕は何気なくネットを見ていると、こんなのが目に移った
「脳移植手術史上初か!?」
僕はそのページをクリックし、画面に食いつきながら読んだ。
そこにはどうも、心配が停止してしまった家族の脳を移植したとのことが書かれていた。
僕はその時、初めて自分の命の価値を知った。僕の脳なら彼女は僕との記憶も無くさず生きていけるかもしれない…!
そう考えた僕は、すぐに病院に行き先生に相談した
「先生、ドナーがいればいいんですよね?」
先生は驚いた顔で、「そうですけど…
ドナーはいませんよ??」と言った
僕は深呼吸し先生にこう言った
「僕の脳を全摘移植してください。」
先生は数秒固まっていた
ようやく理解したのか口を開いた
「正気ですか?」
僕は深く頷いた。
先生は困った顔でこう言った
「でも、そんなことしたらあなたは死んでしまうんですよ?あなたが死んでしまって
彼女が助かったとしても彼女は悲しみますよ?それでもやるんですか??」
僕の考えは変わらなかった。
彼女が行きていられるなら
彼女がこれから楽しくやっていけるなら
僕は命すら惜しくない。
僕は言った
「助けてあげてください。僕の脳みそを使えるなら使ってください。」
先生は、おもむろに書類を準備して僕に差し出した。
そこにはドナーに関すること。
失敗しても責任は問えないこと
などなど書いてあったが、それらになんのためらいもなく丸をした
先生は僕に、希望する日はありますか?と聞いて来た僕は先生に「6月4日にお願いします」と伝えた
それは僕の誕生日でもあり、なにより、彼女と付き合った日だったからだ。
記念日に最高のプレゼントをなんて考えでそうした
先生は、硬い表情で「わかりました。」
といってその日の会話は終わった。
そして家に戻り、もう僕のこともわかってないような状態ではあったが、桜を見にいったりして過ごした
その日から僕は、日記を書くことにした
日記にはその日その日のことを書いて
小さいことを書き記して行くようにした
そして4月、5月と楽しい時間は過ぎ去って行った。
2019年6月1日。
彼女に再検査入院をすると伝え、入院させ
自分も入院した。
先生の計らいで、相部屋に入れてもらえた
そして窓の外を2人で眺め僕は彼女にこう言った。
「長いような短いような楽しい日々だったけど僕たちはずっと終わらないよ!」
彼女はもうすでに言語すら忘れていた。
それでも僕の顔を見て、ニコッと笑顔を返した。
僕はそれをみて、本人の前で泣いてしまった。そうしたら彼女が僕にそっとハンカチを貸してくれた
そのハンカチは僕が、初めて彼女と会った時、頑張って縫ったハンカチだった。
僕はそのハンカチを見て、いろいろな楽しかった思い出を思い出した。
そして、泣きながらも笑顔を作って彼女を抱きしめた。
その夜彼女と一緒に布団に入って抱き合ったまま寝た。
2019年6月2日。
窓から入ってくる日の光が顔に当たっていたようだ顔が熱い
そして、隣にいるはずの彼女がいなくて焦ったが、よく見たら自分のベッドで絵を描いているようだ、僕はそれが気になり近くに寄って絵を覗き込んだ。
そしたらそこには、お花見に行った時の絵が描かれていた。
僕はそれを見て、彼女に「楽しかったね!」
と言った。それを聞いた彼女は掠れた声で
「うん」とだけ言った。
その日は仲良く2人でご飯も食べて早めに寝た
2019年6月3日
この日は、僕は久し振りに朝の6時に起きた。
長い間昼の10時や12時に起きていたせいか少し眠いが、今日はなんだか晴れた気持ちだ朝を迎えられた
朝ごはんを済まして、彼女と絵を描いて遊んだ
そうして夜。ついに最後を迎えてしまうんだなという感覚に襲われてしまい、涙が止まらなかった。
そんな僕を見た彼女が僕の隣に座り、僕を強く抱きしめ一言つぶやいた
「大好きだよ」
僕は涙が止まらなかった。
泣いて泣いて
彼女を強く抱きしめ続けた。
それでもないて、泣き疲れてとうとう眠りについた。
2019年6月4日
ついに来た別れの日。
午前9時30分彼女を強く抱き締め
僕は一言「愛してる」と伝えた
彼女はニコッと笑って頷いた
午前9時50分麻酔薬が効いて来た。
目が開けられない。眠いなぁ。
午前10時00分。
僕は停止した。
その後10時30分彼女に僕の脳みそが移植された。
彼女が目を覚ましたのは、翌日の12時だった。
鳥のさえずりで起こされたのかと思いきや、そこには自分にひどいことをして捨てたはずの両親がいた。
「大丈夫?!」「心配したんだぞ!」
「ごめんな…」
そんな声を聞きながらも必死に何かを考えてようやく出た言葉。それは
「ねぇ、たいせいは?…」
自分の両親。僕の両親。友達。看護師。医師。
その場にいた全員が言葉を失った。
彼女は奇跡的に覚えていたのだ。
両親が事情を説明した。
たいせいは君のために自ら命を分け与えたこと。
生きることの素晴らしさを教えたかったこと
例えどんなにいじめられても捨てられても必ず必要としてくれる人がいること
なにより、愛していたこと
それら全てを両親たちは彼女に教えた。
彼女は泣いていた。自分なんかのために命を失った人間がいることに。そして、
好きな人にもう会えないことに対して。
でも、彼女はすぐに気づいた。
僕が何を伝えたかったのか。
どうして自分を捨ててまで助けたのか。
なぜ、命を引き換えに命を助けたのか。
それは命の尊さを教えるため。
なによりも
愛する人のためだった。
読んでくれてありがとうございます
意見どんどん募集します
叩きまくってください!
その分頑張って成長します!