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半日かけて歩いて、ついに着きましたよ!最初の町に!!名称は………ん?《アトラスヴィル》って言うんだ。へぇー。
いやぁ~こんなに長く歩いたのって、もしかして人生初じゃないだろうか?
……あ、初だわ。私、転生したばかりだし。
何かもう、日本てか地球とは大分違うんだよね。色々と。
まず、町――いや、都市かな?取り敢えず、建物の集団の周りを分厚い壁が取り囲んでた。スッゴい眺めだったよ。
で、入り口は関所って言うのかな……大型トラック荷台がやっとこさ通れる幅しかないの。
そこすぐ横に交番みたいなものがあって、そこで兵士らしき人が荷物やら何やらを調べてる。私も調べられたけど……残念ながら、荷物は全部《異空間収納》の中だよ?意味ないよね。ま、手ぶらは怪しいだろーけど。
町中は中々の壮観だった。人の活気があって、町並みも綺麗!
驚いたことに、見た目は中世ヨーロッパ風って異世界あるあるな感じなんだけど、上下水道は整っているらしい。……垂れ流しじゃなくて、ホント良かった!
でも、そう言えば……イリオスが『過去にも転移・転生者を招いたことがある』って言ってたっけ。もしかすると、その人たちのお陰かな。ありがたや。
でも、まぁ……人が多けりゃそれなりに問題は起こるわけで。
「おい、そこの兄ちゃん!ちっと、面ぁ貸しな!」
はい、絶賛絡まれ中にございます。
禿頭――マイルドに言えばスキンヘッドのおっさん一名に、目ぇつけられたっぽい。やれやれ。
今、私がいるのは冒険者ギルト。
この世界での身分証が欲しくて、冒険者登録に来てたところ。流石のイリオスでも、身分証ばかりは用意出来なかったらしい。残念。
ちなみに、身分証の登録方法は大きく分けて三つ。
一つ、生まれてすぐに親が領主or王家に届け出を出す。
この方法は、親がある程度の身分――主に貴族――を持ってる場合に多い。あと、お金持ちとか。
二つ、冒険者ギルトで登録する。
私が取ろうとしたのがこの手段。十歳から誰でも登録できるらしい。みんな大体コレ。
三つ、教会に届け出て登録する。
この世界にも宗教はあって、祭神は言わずもがなの《イリオスヴァスィレマ》。イリョス神って言われてる。
で、ここのが一番確実。ただし、けっこうお金がかかるそう。
その中で私は、イリオスにギルトで登録するように念を押されていた。
何故なら、転生者である私は《神の眷属》。教会に登録すると、もれなくそれがバレて教会に囲われてしまうらしい。その末路は想像しなくとも分かりきってる。……自由がなくなるなら、そんなのお断りだ。
あ、話が逸れた。
とにかく、そんな理由でギルトに居たんだけど……受付までは、すんなり行ったんだよ?
そこでキレーなオネーさんに身分証――通称・ギルド証――の発行申請と手続きをして、後はカードの完成を待つだけだった。
だから、待ってる間にカウンターでお酒――私の好物、カルヴァドスに似てるヤツ――を呑んでて。そこにやって来たのが、現在進行形で絡んできてるおっさんってわけ。
でもさぁ、酷くないか?
だって、このおっさん……私のこと、『兄ちゃん』って呼んだんだよ?こちとら、生まれてこのかた――いや、転生する前からずっと女だっての!
た し か に っ!
確かに、私はズボンだしローブマントで体型も分かりにくくしてるよ?パッと見では、分からないぐらいにはね。でも、さすがに酒の匂いが分かるこの距離で間違えるとか……ないでしょう。
「……行く理由がないので、断ります」
「あぁ?新入りにキョヒケンなんて、ねーんだよっ!」
煩い、がなりたてるな。鼓膜が死ぬ。
もう、いいよね?プッツンしても、いいんだよね??
「まだ登録が終わってないので、私は新入りですらありませんが?」
「チッ、つべこべ言ってねーで……来い、つってんだぁ―――ろぅおっ?!」
私のフードに手を出そうとしたところで、手首を掴んで捻りあげる――が、勢いがつき過ぎたのか、おっさん大回転。地面に伸びちゃった。
あ、やべ。チートスペック忘れてた!
「……せ、正当防衛。だよね?」
足先でツンツンと突くと、「ふげっ」と呻き声が上がった。……よかった、生きてる。
うっかり(テヘペロ☆)な、殺人だけは勘弁だからね。
「これは何の騒ぎだ?」
「っ!ギ、ギルドマスター!?」
私が(内心で)オロオロしているうちに、カウンター奥から、えらい強そうな男の人が出てきた。年齢は床で気絶中のおっさんと同じくらいに見えるけど、身体から溢れるオーラが違う。
ギルドマスター。
迫力のある男の人は、そう呼ばれていた。
なら、この人がここで一番偉い人なんだろう。……ハルバードが似合いそうだ。
「申し訳ありません。絡まれたので、少々反撃を」
「君は……?」
「先程、こちらにギルド証を発行しに来た者です。字を『ハルア・キラ』と」
この世界、本名を明かすのは基本的に身内だけなのだ。故に、ほとんどの人が字か二つ名、通り名を名乗っている。
ちなみに私の登録した字は、清明と言う名前の元ネタになった安倍晴明からきている。
なんでも、私の父は、私が生まれるまで男の子だと信じていたそうだ。病院では、性別確認をしなかったらしい。
で、用意していた名前が『清明』。勘違いしいな父は、かの有名な安倍『晴明』を『清明』と覚えていたのだ。なんて傍迷惑な……。
幸い、母が『清明』を女の子っぽい名前である『さやか』とも読むと知っていたので、事なきを得た。
……まぁ、二年後に弟で似たような問題を起こすのだが、ここは割愛しよう。
その事を小学生の、『自分の名前の由来を聞いてくる』と言う宿題の時に知った私は、正直拗ねた。一週間は父と口を利かないほどに。
しかし、私の名前の元になった人物には興味がでたので、一応調べてみたのだ。そこで知ったのが『晴明』を『はるあきら』とも呼ぶらしいと言うこと。
以来、私はゲームネームによく『ハルア・キラ』と使っていた。響きが気に入ったからね。
「なるほど、理解した。……君も災難だったな。俺も、こいつにはよく困らされてるんだ」
「いえ、私こそやりすぎでした」
そう言って、軽く頭を下げるとポンッと撫でられた。子どもをあやすようにするのは、ギルドマスターの大きな手。
うわぁ、イイ歳して慰められ方が……恥ずかしいよ。
「おや、丁度カードが出来たようだな。……今日は、早めに宿に戻るんだな。―――お嬢」
「うあぅ……はいぃ」
何だか今日は疲れた……。
転生してからまだ一日目のはずなのに、どーしてこーなった?もう、宿とってさっさと寝よ。
読んでいただき、ありがとうございます。