表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あゆみ  作者: 夢霰
5/17

PART4『日常の破壊』

 昼過ぎの午後、雨が降りそうな雲は太陽を隠していた。

 廃墟地帯の廃ビルには空也と静香がいた。

 空也は本を読み、静香はソファーで寝ていた。

 学校がない日曜日だった。

 空也は私服で、静香は制服で来ていた。

 もちろん、二人で待ち合わせして来た、ということではない。

 空也が朝起きて廃墟地帯へ行くと、すでに静香がソファーに座っていたのだ。

「なんでいるんだよ」

 空也が先にそう口を開いた。

「なんでって、ここあなたの家なの?別に私が来てもいいでしょう?」

 静香にそう言われて言い返せなくなった空也は乱暴にベッドに寝転がった。

 そしていつのまにか、静香は寝ていたのだ。

 静香がここで寝ている以外は今までと特に変わったことはなかった。

 この部屋に本をめくる音と静香の寝息しか聞こえなかった。

 それからしばらくすると、雨音も聞こえた。

 ついに降り出したか、と窓のほうを見た。

 大粒の雨が黒い雲から落ちていた。

「これはしばらく止みそうにないな」

 空也はそう独り言をつぶやいた。

 そしてなんとなく、廃墟地帯を見渡した。

 捨てられたビル、工場、そこらへんに散らばるガラクタ。

 それらの中に見慣れない人影があった。

「なにしてるのよ」

 それを見つけたとき、背後から声がした。

「起きたのか、鈴永」

「あなたの独り言でね。雨、降ってるの?」

「降り出したな」

「朝から雲ってたから不思議ではないわね。で、なに見ていたの?」

「あー、なんか人影があったんだ」

 静香はにやっとした。

「おもしろそうね、ついていきましょうか」

「おまえ……なに言い出すんだよ」

「どうせ暇でしょ!」

 声を弾ませて言う。

 その声に押し負けて、二人は傘をさして外へ出た。

 雨が傘をはじく。

「どっちのほうに居たの?」

「向こうだよ」

 空也の指差す方向へ静香はステップを踏むように歩いていく。

 ビルとビルの間。

 自分のいつも歩く通学路とは同じで、異なる。

 違う世界のように感じる。

「あ、こっちに足跡がついてるわ!」

 先々進む静香にようやく追いつく空也。

「もうちょいペース落とせよ」

 そう言っても雨音で声はかき消された。

 ビルの角を曲がり、静香が見えなくなった。

 小走りをしてそのビルを曲がる。

 角を曲がった少し行ったところに、静香は突っ立っていた。

 何かを見ているようだ。

「おい、なに見てるんだ?」

 空也が近づいてもなんの反応も示さなかった。

 後姿でなにを見ているのかまったくわからなかったので、空也は前に回り込もうとした。

「もう帰りましょう」

 静香はそれだけ言うと空也の横を通って歩いていった。

 ちらっと見えた静香の手にあるそれは、なにかノートみたいなものだった。

 そして、その表紙に書かれてあったタイトルのようなものはこう書かれてあった。

 『あしあと』

本文に出てくる『あしあと』は日記風小説として前作を投稿しています。

まだの方はそちらからお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4324dx/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ