PART11『疑惑』
静香に現実と思えない話をされ、頭が痛い。
だが、まぎれもなく事実なのだろう。
冗談を話すような人ではない。
あの後空也は家に帰り、自分の部屋のベッドに寝転がっていた。
「そういや、明日は姉が一時的に帰宅するとか言ってたなぁ……」
ふと思い出しながら、空也の意識は遠のいた。
なにか大きな音が聞こえる。
空也は目を開けた。
下で誰かが騒いでいるらしい。
空也は自分の部屋を出て、階段をおりた。
どうやら姉が騒いでいるらしい。
「この家に知らない男がいる!」
姉はそう言った。
その言葉で空也は固まった。
え、泥棒でもいるのか?と思った。
そう思った矢先、両親が姉を抱えて病院に向かったらしく、声が遠ざかっていった。
空也は誰かいるのではないかと不気味に思い、そのまま廃墟地帯にむかった。
廃墟地帯につくと、いつもと変わらず静香がいた。
「ちょっと、頼みたいことがあるんだけど」
空也は静香に言った。
「わかったわ」
静香はそう言うと、立ち上がり、空也を追い越して歩き始めた。
「頼みたいことも、その内容もわかってたってことか……」
空也はつぶやきながら静香についていった。
空也の家の前までくると、静香は少し止まった。
「誰もいないわね」
静香はそう言った。
「なにやら騒がしいからずっと秋元の家を気にしていたけど、秋元以外に人はいなかったわよ」
廃墟地帯に着いたのはついさっきなのだろう。
「と、なるとどういうことなんだ?」
「秋元のお姉さんが言った知らない男がいるというのはあなたということになるわね」
とんでもないことをさらりと言われた。
「本当に誰もいないのかよ」
空也は必死に静香に聞いた。
「ええ、誰もいないわ」
静香は一呼吸おいて、真剣にこう言い放った。
「あなた、本当に秋元家と血がつながっている?」
その一言に空也はめまいがした。
どうやって廃墟地帯まで行ったのかわからないが、空也は廃墟地帯のベッドに寝転んでいた。
ずっと空也が悩んでいたことは、もしも空也が秋元家の人間じゃないとしたら一つに繋がってしまう。
空也は冷静に考えようと努めながら頭のなかを整理した。
なんにしても、自分が秋元家の人間かどうかを調べる必要があると思った。
ただ、空也は秋元家の人間であることを疑ってはいなかった。
自分は秋元空也なのだから……。