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竜は謳ふ。  作者: てのひら
1/1

魔物は叫ぶ

授業中の暇な時間に考えた物語を

友達と話し合ううちに、

文字に起こしたいなと思い書いてみました。

第98代竜王、「ジン・モルト」。

不滅の血を宿す巨竜。竜族の最後の王にして...




かつての大戦争にて人間を謳った、唯一の竜。


「へぇーところでおばあちゃん竜って何?」


少年は聞く。


「竜の書にかかれているよ、読んであげよか?」


「うん!」



竜。




竜とはこの世の頂点に立つ獣。

竜といってもそれはいくつかに分かれている。


炎を氷を雷を吐く竜。

風を水を地を創る竜。

生と死を司る竜。


そして竜王と呼ばれ、全ての竜の頂点に立つ竜。


「不死の巨竜」


以上の八の竜が存在する。


また竜を産むと竜は死ぬ。

そして炎の竜からは炎の竜のみが一匹産まれる、

ということがわかっている。

この竜の誕生と死を「代わり」《かわり》という。


このことから、竜は世界に八しか存在しない。


また、竜の寿命は690年である。

そして竜には「怒りの刻」がある。

これは、竜の寿命の2割、138年間かけて、

体の不純物「魔力」を放出する。

この竜は狂暴性が増し、本能的に世界を

塵に還すべく、常に魔力を放ちつつ暴れる。


ちなみに、この莫大な魔力を利用し、

138年間竜と戦うのが竜騎士である。


また、竜騎士の減少を考慮し、竜の怒りを消し、2年で竜をおさめる、

「子守唄」を奏でる「竜母のハーブ」が作られた。



また、不死の竜は代わりをしない。




「これが竜じゃよ」


「へぇー」


少年はそこまで聞くと、

指を指して祖母に訪ねる。


「おばあちゃん、あれなあに?」


言葉を覚えてしばらくたつ程のちいさな少年が祖母に訪ねる。

祖母は口を開く。


「あれはねぇ、竜の王だよ。最後の竜。」


「あの黒いのがぁ?竜ー?」


少年は不思議そうに言った。


「死んどるんじゃよ。」


「でも動いてるよ。」 


祖母は目に涙をうかべる。


「あの竜は死ぬとあぁなるのよ」


祖母はそう言うと目をつむり、大きく息を吐いた。

そして少年の隣に並ぶ。

その様子をみながら少年は呟いた。

この世界で、少年にしか聞こえない小さな声で。


「どうみても生きてるよなぁ、なんでおばあちゃんは死んでるって分かったんだろう?」



空には七匹の竜が飛んでいた。






13522年前...






王都「センター」中央区


この日は古くからこの地にて崇拝されている女神、

「ドラン」に関する祭りが開かれていた。

身に付けた鎧を鳴らし、フードをかぶった若者が声をあげる。

「殺伐とした戦場、飛び交う罵声悲鳴そして矢っ!」

手に持ったジョッキを仲間とぶつける。

中の酒の泡が空中に散る。

それが太陽の暑苦しい光を反射する。

若者は光を受け、続ける。


今はこの町はとてもにぎやかだった。


「そんなこと今は忘れちまおう!今日は休戦!ぱあって行こうぜぃ!」


「ヴォイ!まだあいつが来てねぇぞ!」


もう一人の若者が叫ぶ。

そういえば来てないな...と思った矢先。


「すまん、遅れた!今日の任務は...。」


ガシャガシャと鎧を鳴らし、

金銀輝く装飾を施した黄金の槍を下げ、

巨大な城にすら劣らない鎧兜を身に付け、

祭りの場にあらわれたのは、


「17才の若さで騎士団長の座に上り詰めた金髪天才少女クリス騎士団長!」


「う、うむぅ、いかにも...。我が...」


そこまで言うと、クリスは思い出したかのように

一瞬静かになり、


「違う!皆任務はどうした!?」


「.........」


一瞬静寂に包まれる場。

無言の圧力をかける


「な、なに言ってるんですか団長ォ!今日はドラン祭じゃないですか!」


「ドラン祭ってなんだぁ?」


団長...と呆れ気味に言う若者に対し

申し訳なさそうにクリスが手で謝罪のサインをする。


ドラン祭


690年もの間生きる竜を統率する女神、ドランの誕生を祝い、

一年に一度決められた日に行われる祭。

また、ある一定の期間起こる、

竜の怒りをおさめるための儀式とも言われている。

あらゆる物や人が王都に集まり、最も金が動く行事とされている。


「...ってなワケで、今日は休戦でぇす。」


若者が説明すると、

クリスが赤面し、震えはじめる。


「まぁ知ってたけど?」


「嘘つけ!」


クリスと若者のやり取りに場は大いに盛り上がる。


「まぁ、団長はつい3日前に試験受かってやって来たばかりだしな!」


笑いに包まれた会場の中心にクリスは移動し、

集まった者たちに叫ぶ。


「団長命令だ!皆、今日の休戦でしっかり英気を養うように!」


騎士団長様の命令に、皆歓声をあげる。

それを聞き、満足したようにクリスは先ほどの若者のもとへと

戻った。


「皆、楽しんでいるようだな。」


酔いの様子を伺いつつ若者に話しかけるクリス。

しかし若者に酔いの気配はなく、

呑んでいる様子もなかった。

しかも若者はある方向をじっと見ている。

静かに、何も言わずに。


「気づいているのか...?」


クリスは若者に小さく訪ねる。


「あぁ、『なにか』が近づいてきている。

この日は竜も静かなはずだし、他国も休戦日のはずだが?」


若者はその『なにか』の来る方向に鼻を向ける。

敵襲か?と囁くクリスにかもな、と応じる。


「数は?」


「わからん、くもない。」


「というと?」


若者はかぶっていたフードをあげ、人差し指と中指を揃えた

右手で弧を描く。指先が光る。さらに若者は指を動かす。

軌跡から、どうやら弓を描いているようだ。

大文字のDに横棒ぬみの簡素な弓型の光は、

さらに光の粒に包まれ本物の弓と化した。


「無」から「有」を生み出す力、『魔法』。


若者は弓を空へ向け、矢を放つ。

太陽の輝きにすら劣らない光が

一定の方向へと一直線に進む。


「北から、約8といったところか?」


クリスが若者にたずねると、

光が飛んでいった方向をながめて、若者は言う。


「光の方向と数の通り。そうだな、8だな。」


「知らせるまでもないな」


「壁に登り、迎え撃とう、よいな?」


「分かった、走るぞ。」


壁に向かう最中、クリスは先ほどの魔法に

ついて訪ねた。どうやら魔法を使うのに必要な

「魔力」を放出する技術の応用とのことだが

クリスは魔法が使えないため、

あまり聞いていなかった。

そのせいで味方の騎士が仕掛けていた獣用の

魔法罠にかかって着ていた鎧が

溶け、大惨事となった。


クリスと若者は城を囲む壁に登る。

こちらに向かう影が見える。しかしそれは、

数こそ8だったものの、一体一体は

巨大な魔物だった。

思わず若者は叫ぶ。


「なんだあれは!?」


魔物の群れが近づくにつれ、

大地が揺れる。

町の中にも異変に気づいたものは

いたようで、壁の上に何人か騎士が登ってきた。


「...!とにかく城内にある『竜母のハーブ』を守らねば!」


若者は全員に叫ぶ。


「とりあえず城内にいれなければ良いのだな!」


クリスはこの地の伝承等には詳しくない。

それはこの辺りの魔物についても例外ではない。

しかし今迫る生きる災厄については

この場の誰もが把握していなかった。


「皆、武器を手にとれ!迎撃だ!」


騎士たちが槍、剣、弓を手に壁から飛び降りる。

魔物たちはこちらを認識したのかおぞましい声をあげる。


「オオオオオオォォァアアアア!!!」


木々が揺れる。

辺りの草や小石が散る。


巨大な生きる壁を前に

騎士たちは自らの知恵と武器を使い、立ち向かう。

魔物の雄叫びにも負けない

声で士気を高める。

散るように地を駆け、

対象に近く。


「奴等の様子を伺いつつ、隙を突け!」


「「おうっ!!」」


騎士達は弓を引く。


巨体に臆することなき騎士団は

この戦いで自らの非力さを無力さを



身をもって味わうのだった。




第1話 終わり









読んでいただき、ありがとうございました!


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