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#7 光と竹刀

最初の修行から命懸け!

遼と鈴の勇者の力が発現!!

負けるな遼、鈴!

 「師匠(マスター)この光は!」

 ルルが眩しさで目を細める。

「ふん、まぁ頼りなさそうとは言っても一応勇者は勇者か。なんとか発動させたみたいだなエンブレムを。」

紋章の中で倒れている遼と鈴の体から黄金の光が溢れ出していた。

  クロサイトは訝しげな表情で二人を様子を見つめている。

「何故だ、まだ何か・・・」


陽介と真理は遼と鈴に顔面を殴られて二階の廊下に仰向けで倒れていた。

遼と鈴は初めて人の顔面を殴りつけた感触にビビりまくっていた。

殴りつけた右手だけでなく、全身が小刻みに震える。

寒いわけでは無いが二人とも震えが止まらない。

「人を殴るって・・・、こんなにも怖いことなんだ。」

「お兄ちゃん、お母さん殴った手も痛いよぉ。アレ、本当にお父さんとお母さんじゃないよね。」

「鈴、俺も手メッチャ痛い。けどそれよりお父さんの姿してるアレ殴ったことの方がイヤな感じやわ。」


「痛いな、突然顔面殴り付けるとは酷い息子と娘だな。」

「本当よ、こんな子に育てた覚えは無いのだけど。」

仰向けに倒れていた陽介と真理が音も無く重力すら無いかのようにフワリと立ちあがった。

遼と鈴が殴った二人の顔が溶けて崩れかけている。

「うわっ!気持ち悪っ!やっぱり父さん達じゃないぞ、鈴!逃げろ!!」

遼が陽介と真理に思い切り体当たりをかました。

狭い通路に隙間が生まれ鈴は素早くスルリとそこを抜け階段を駆け下りた。

遼も鈴の後を追って行こうと階段の方へ身体を向けた。

「「待て!!」」

体当たりを受けて倒れた陽介と真理の手が遼の左の足首やズボンの裾を掴んだ。

「イタタっ!!なんて力!!ちょっと、このぉっ、離せよっ!」

二人は掴んだところから何とか遼の身体へ這い上がってこようともう片方の手を遼に伸ばす。

ヤベェ、凄い力、引き摺り込まれる!

ダダダダッ

「このっお兄ちゃんを離せぇっ!!」

鈴が玄関先に置いてあった遼の部活の竹刀を取って階段を駆け上がってきた。

鈴は思い切り陽介の胸目掛け竹刀を突き出した。

「グァッ!」

遼の足から手が離れた陽介はバランスを崩して真理を巻き込んで後ろへと倒れ込んだ。

「ナイス鈴!今だ逃げるぞ!」

二人はすかさず階段を駆け下り、玄関から外へと飛び出した。

「ひっ!!」

「マジかぁこれ!」

団地の街並みには変化はない。

ただ遼達の家の周りを二重三重に取り囲むような形で近所に住むおじさんやおばさん、子供達が立ち塞がっている。

一様にみんな血の気のない白い蝋人形のような顔色をしており眼は虚ろで何処を見ているのかわからない。ただ全員が家から飛び出て来た遼と鈴の様子を伺っているように見える。

鈴は異様な雰囲気に怯えて遼の背中にサッと隠れた。

「遼、鈴。ここからは逃げられないよ。さあ、お父さんの言うことを聞いてここで一緒に暮らそう、永遠にな。」

陽介の声が階段の方から徐々に近づいてくる。

「鈴!竹刀を貸せっ!こうなったらやるしか無い。これは試練なんだ!こんな最初でヤラレちゃったら超カッコわりい。彼女も欲しいから死ぬのもイヤだ!絶対クリアしてやるっ!」

「私だって嫌だよ!優しい彼氏欲しいもん!ハイっお兄ちゃん!」

鈴は遼にポイっと竹刀を放ってよこした。

遼と鈴は近所の人達が徐々に近づいてくると慌てて玄関の中に入り内鍵を閉めた。

そして背後に立つ陽介と真理に正対し、遼は正眼に竹刀を構える。

鈴は玄関収納に飛び込むと中から陽介が日曜大工で使う1メートル位の1×4の木材を持ち出し遼を真似て同じく正眼に構えた。

陽介と真理は顔を一度見合わせてから遼達の方へ向き直り、

「そんな物で私達と戦う気かい?」

「舐められたものね、ねぇあなた。」

「もうお父さん達は許さないよ。二人とも死んで償ってもらおうか。」

そう言った陽介の姿の顔や身体の皮膚が溶けるように落ちていく。

隣にいた真理の顔も溶け落ちる。

溶け落ちた後に残ったのは穴だ。

顔の部分だけ空間を切り取ったかのように黒くスッポリ穴が空いている。

黒いボーリングの球が服を着ているようにも見える。

「 ヒィ〜っ!お兄ちゃん、気持ちわる〜い!」

鈴が木材を上段に振りかぶって首をフリフリする。

「このぉ〜っ!面っ!胴っ!面っ!」

遼が竹刀で元陽介だった人型のものに三連撃を繰り出した。

打撃を加えられた人型は半歩程後ろに下がったものの殆どダメージを受けている様子はない。

「無駄ですよ。私達にそんな普通の攻撃は通用しません。」

「さあ、諦めて二人とも死んでしまいなさいな。」

「クッソ〜、さっきぶん殴ったみたいに手が光んないとダメージ与えられないのか。さっきはなんで光った?考えろ、考えろ!諦めんな!」

「お兄ちゃんっ!助けてっ!」

鈴が近づいてきた元真理の人型に振り回した材木が掴まれ、引っ張り取られようとしていた。

「鈴っ!!」

その瞬間、遼の右手から再び黄金の光が迸り、遼の右手の竹刀を包み込んだ。

「これこれっ!なんか分かんないけど出たぞ!」

遼は黄金に輝く竹刀を素早く木材を掴んでいた元真理の右手目掛け振り下ろした。

「小手ェッ!!」

遼の黄金竹刀は何の抵抗もなく一瞬で元真理の右手首を切断した。

「ああがああががぁぁががぁっ!」

切り取られた腕の部分を押さえ、何処から声が出ているのか分からない悲鳴とも取れる呻き声が元真理から聞こえた。

「うぉっ、凄い斬れ味。これならいけるぞ!面っ!」

ぐぎゃぁあああああああああああっっ!

元真理の真っ黒な頭部の穴に当たった竹刀は軽々と頭部から身体まで真っ二つに両断し、遼の竹刀はガツリと地面を叩いた。

「スゴ〜っ、お兄ちゃんばっかズルい!どうやったらその光出せるの?」

「わからん!けど手が光った時もさっきも絶対負けたくないって気持ちがあった。多分それがエーテルだ。鈴、ビビるな!絶対諦めるな!あの親父もどきをぶっ倒せ!」

「うん!このニセモノぉっ!どっかに行っちゃえ!お父さんのマネすんなぁっ!」

鈴は叫びながら思い切り木材を突き出し、元陽介の人型に突っ込んだ。

その瞬間、鈴の手から黄金の光が材木に向けて迸った。

があああぁぁああぁぁっ!

元陽介の腹に深々と黄金に光った材木が突き刺さった。

しかし、まだ元陽介の人型は力尽きてはおらず鈴の頭部を左右から挟み潰そうと両の手を左右に大きく広げた。

「鈴っ!しゃがめ!」

鈴は遼の声で反射的に材木から手を離し膝を折ってしゃがみこんだ。

遼は直ぐさま黄金竹刀を元陽介の頭部目掛け思い切り投げつけた。

遼の手を離れた竹刀は光の矢と化し一瞬で黒いボーリング玉のような人型の頭を通過し、一階玄関の天井をぶち破り二階の床すら突き破って二階の鈴の部屋の天井に突き刺さった。

黄金の光が通過した元陽介は糸の切れたの人形の様に声すらあげずパタリと後ろへ倒れた。


遼は二体の人型を倒した安堵感からか、全身の力が入らなくなりヘナヘナと床に座り込んだ。

鈴は遼の方へ少し身体を近づけ同じく床に座り込む。


ハァ〜〜・・・すっげ。コレが勇者の力?

けど滅茶苦茶疲れるぞ。全身の力を全部持っていかれたみたいな・・・ね、むぃ・

遼はそのまま床に倒れこんだ。

鈴も座り込んだまま疲労感で全く身体が動かせない。


「おに、ぃちゃ 」


鈴の意識もそこで途絶えた。


勇者の力を使い果たした2人。

家の外の白い顔したご近所さんどうすんの!

次回「ご近所さんなんて大っ嫌い!」


なんつって。


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