#5 ハードなハート
既にキャラが勝手に喋り出してるので思うように話が進みません!
「私のことはこれから師匠と呼びなさい。今日は急にこの世界に呼ばれて混乱して精神的に疲れているはずだ。これから食事をとって、もう休みなさい。本格的な修行は明日からだ。
ルル、リョウとレイを食堂へ、スープとパンがあっただろう。部屋はルルとレイが同じ部屋、リョウはその隣の部屋を使いなさい。私はまだやる事があるからここで別れる。
ルル、後は頼んだよ。」
「はい!マスター!」
ルルはマスターに仕事を任された事が嬉しいのか、弟弟子、妹弟子が出来たことが嬉しいのか満面の笑みを浮かべて師匠に向かって思い切り手を上げた。
「さあ、これで勇者様も私の修行仲間です!私の方が先に弟子になってますから姉弟子です。さあそれでは食堂へ行きましょう!出発!」
遼と鈴はルルの後をついて行き、鈴、ルル、遼の順で大きな丸い木のテーブルの周りにある切り株を加工した椅子について食事を摂った。
ルルから出された食事は質素なもので、固いフランスパンのような形状のパンとキャベツのような野菜とトマトのような赤い実と何かの肉が入ったスープだった。
不味くはないが上品な味付けというか、薄い味付けだ。
「おかあさんの料理が食べたいよ〜。」
「同意見。唐揚げ食いたい。」
「え〜、ルルの手料理ですよ。美味しくないですか?」
ルルが遼にズイっ顔を近づける。
「!! ちょおーっと!近い、近いよルルっ!!この距離はオタの中二病男子には毒だ、毒!!」
「??、何ですか?リョウ病気ですか?」
鈴は横でニヤニヤ笑いながら
「ルルお姉ちゃん。お兄ちゃん、女の子に免疫が無いから。お姉ちゃんみたいに可愛い子が近づくとドキドキしちゃうんでしょ。」
「鈴!うるさい!おまえよく免疫なんて単語知ってンな。」
「ふっ、少女マンガの知識さ。」
鈴は右手の親指と人差し指を伸ばしてL字型にして顎の下に当てる。何時もの鈴の決めポーズだ
「ええと、あの、その・・・」
ルルは耳まで真っ赤にして、両手で頰を押さえてイヤイヤしながらも遼の方をチラ見している。
ヤバい。何の仕草、可愛いぃ。
しかも嫌がってるような感じじゃない。
来た?遂に俺にもリア充来た?!
異世界でリア充、最高っ!
可愛さは地球の女子なんて目じゃない!
ここはひとつ料理を褒めておけば更に好印象ゲット!
「ええっと、ルル。このスープ美味しいよ。これ何の肉?」
「本当ですか?!良かったぁ。今日狩ったばかりのドリルミミズの肉です。新鮮で柔らかくて美味しいでしょ。」
遼の顔が青ざめていく。
「ドリル、ミミズ・・・ミミズ・・・
あ、うん。お、美味しいよ。うん・・」
鈴はルルの目が遼に向いている間にこっそりと肉をルルの皿に移した。
「気に入ってくれて嬉しいです!じゃあ私の分のお肉も食べてください!」
ルルはテーブルの上の自分の皿を掴みニコニコしながら遼の皿にスプーンで肉を取り分ける。
「あ、うん、うわーやったぁ。美味しそうだなぁー」
「お兄ちゃん、棒読み。
ガンバっ!」
「リョウ、沢山食べてくださいね♡」
「・・・うん、ちょっと胸は一杯なんだけどね。いろんな意味で。」
それから小一時間程して遼が青い顔をして食事を終え、ルルと鈴、遼はそれぞれ別々の個室に入っていった。
「 はぁ〜、疲れた。」
遼は窓際にあるベッドに身を投げ出し仰向けになって眼をつぶり、もう一度大きく溜息をついた。
世界を救う?俺が?マジで?出来んの?
なんで俺?失敗したら世界消滅って・・・
どうすりゃいいんだよ!?
・・・ちょっとレイちゃん。あまり見ないでください。
恥ずかしいです。
ええ〜すご〜い。ルルお姉ちゃん肌凄く白くて綺
麗〜胸も大っきいし。
あ!ダメです、レイちゃん。
ちょっと、あん、触らないで!
やわらか〜い、いいなぁ。
・・・メッチャ聴こえてるんですけど!
隣の声丸聞こえ!大っきい?胸?触る?
コレわぁぁぁぁ!いやマズイでしょ。盗聴?!
確実にあっちの世界じゃ捕まる?
いや、でも勝手に聞こえてくるんだから仕方ないよね。うん。
クッソぉ〜鈴の奴、同性だからっていい事して!
なんて羨ましい!いやなんてけしからん!
次の展開は?
鈴、次はどうするんだ?
遼はベッドから立ち上がると隣の壁に耳を引っ付け聞き耳を立てる。
ねえ、お姉ちゃん、本当に私達がこの世界を救わな
くちゃダメなんだよね。
・・ええ。
選ばれた勇者しか救えません。
そっか。お兄ちゃん頼りないけどこういう冒険してみたいって思ってたし、いざとなったらきっと何とかしてくれるよ。
私もちょっと心配だけど頑張ってみるね。
・・・でも、もし、もし失敗しちゃったら、どうしようって凄く怖くなるの。
お父さんもお母さんも友達もルルお姉ちゃんもみんな死んじゃったらどうしようって。
嫌だよそんなの、絶対にやだよ〜っ!
レイちゃん。
どうやら鈴が泣いているみたいだった。
「俺がやんなきゃダメなんだな 。鈴のお兄ちゃんだしな。」
遼は黙ってベッドの手前の床に両拳を立てて拳立てを始めた。
ベッド側の窓から朝日が差し込み部屋が山吹色に輝き出し小鳥のさえずりが優しく心地よい音楽の様に聴こえ出した。
「いてて。あ?あのまま寝ちゃったのか?」
遼は床の上で身体を起こす。
服も昨日の服のままだ。
腹筋やってたトコまでは覚えてるんだけどなぁ
ちよっと寝足りないからベッドに転がってもう一眠りしよっかな。
遼がベッドへ転がり込んだ直後にドアがノックも無く開いた。
「お兄ちゃん、おはよ!ご飯いこっ!」
昨日泣いてたとは思えないほど元気な、何時もの鈴だ。
「鈴、お前、大丈夫か?」
「ん?何が?」
鈴が首を傾げる。
「イヤ。別になんでもない。」
「変なの。早く行くよ。」
「ハイハイ。」
遼はベッドからのっそりと立ち上がり鈴の後を追って食堂へ向かった。
「昨日は眠れたかな。」
「はい、部屋を貸して頂きありがとうございました、ええっとマスター。」
「うむ、ここにいる間は二人とも昨日の部屋を自由に使いなさい。さあ朝食にしよう。朝食を摂ってから早速二人とも修行に入るぞ。」
「分かりました。よろしくお願いします。」
「お願いします。」
「リョウ、レイちゃん。ちょっとお手伝いお願いします。」
ルルが竃の方から笑顔で声を掛ける。
「今日の朝食はブロックの野菜スープと黒パン、
ワニリートの玉子焼きです!」
今度こそ修行編に突入!
果たしてマスターにどんな修行をつけられるのでしょうか?