#4 エーテルと負のアウラ
遂に世界が滅びる理由が明らかに!
師匠の性格は私譲りでしょうね。
イジワルです。
「ルル、叔父さんは止めてくれないか?。」
ルルは男性の前まで進み出ると肩をすぼめて謝罪した。
「ご、ごめんなさい我が師ロード・クロサイト」
「うむ。さて今回はこの二人が勇者なのだね。これはまた随分と頼りなさそうな勇者様達だ。」
男性は右手で顎下を撫でながら無愛想な表情で話した。
ルルは後ろにいた遼と鈴の方を慌てて振り返り、
気まずそうな表情を浮かべてからまた男性の方に向き直ってそれは言っちゃダメと言わんばかりに
「師、師匠〜」
と声をあげた。
いくら中学生と小学生でもその男が自分達のことを馬鹿にしてることくらいは理解出来る。
あ?なんだこのマッチョ。全部聞こえてますけど。
いきなりこの勇者様をバカにしちゃってくれてますけど。
「ちょっと、会った早々いきなり酷いこと言わない
でよ!私達も好きでこの世界に来たわけじゃないんだから!」
「お、言ってやれ、言ってやれ、鈴!」
「大体オジさん誰よ!」
「ふむ、私は事実を言わせてもらっただけだがね。それとも私の見込み違いで君達は人に頼ってもらえるほどの強さと勇気を備えているのかな?」
「そんな力は無いけど・・。」
「それに年長者に対しその言葉遣いはどうかな。君達の親はそんな事も教えてくれなかったか?」
「それは・・・言われたことあるけど・・・」
「ではなぜ言われたことをしないのかね?」
「だってェ・・」
これはマズイ。煽ったもののどう考えても鈴の方が分が悪い。なんだか父さんに叱られてるみたいになってきた。
散々父さんや母さんに生意気な口の聞き方を注意されてるし、拳法の道院長にも言葉遣いの大切さは指導を受けている。
耳タコだと思って聞き流してた結果がコレだ。
あー父さんがこの状況見てたら絶対こう言うな、「自業自得だ。言い訳すんな。」って。
結局勇者様になっても良い方に転がるか悪い方に転がるかは自分達の行い次第ってことかぁ〜
遼は溜息を一つ付いてから覚悟を決めて男性の前へ進み出る。
「あの、ロード・クロサイトさん。初めまして。私は加藤遼、妹は加藤鈴。ルルさんに呼ばれて地球から来ました。」
「ほう。やれば出来るのだな。君はリョウと言うのかね、良い名だ。レイと言う名も響きが良い。二人共御両親から良い名を付けて貰ったな。」
「ありがとうございます。あの、私達はこの世界の事を何も知りません。なぜ私と鈴が呼ばれたのかも。この世界で何が起こっているんですか?修行って何をするんですか?」
「やれやれ、ルルはまだ何も説明してないのか。まあいい。いきなり君達に全てを説明するのは大変だ。どうせ修行には時間が掛かる。おいおい説明してやろう。」
「それより」
ロード・クロサイトは眼を細め厳しい表情をして遼とその背後にいる鈴の顔を見てから
「先ず君達に問いたい。君達は勇者としてこの世界を救う気持ちはあるか?」
「だってやらないと地球が消えちゃうんでしょう、やるしかないじゃないですか。」
「修行は嫌だよ、帰れないっていうならやるしかないでしょ。」
ロード・クロサイトはやっぱりなという表情をして
「まあ、普通そうだろうな。いきなりこの世界に連れて来られて全力で頑張って勇者してこの世界を救ってみせますっ!と言う奴の方変なのだろう。
前回来た奴は 変人だったからな。しかし、アイツは強かった。エーテルの輝きは、数多いる勇者の中では一番だった。<太陽の勇者>の二つ名は奴にはピッタリの名前だったな。」
「じゃあ、その人が来れば良かったのに。」
鈴が呟く。
「そういう訳にもいかんのだよ。勇者は18歳までの男女と決まっているんだ。召喚されなかったということは奴は18歳は越えてしまったのだろう。」
遼が挙手をした。
「あのエーテルって何ですか?」
「うん?ああ、それだ。君達が今一番の無いものだよ。そして、この世界で最も重要なものがエーテルだ。君達の世界で言えば「キ」というヤツだ。」
「「キ?」」
「バトルアニメとかでレーザーみたいに飛び出したり爆発したりするアレの事?カメカメ波〜っみたいな」
「お父さんや道院長が拳法の練習の時に何時も言ってる気合の事じゃないの?」
「エーテルとは人の心が生み出すエネルギーのことだ。物事に対し積極的であれば心からエーテルが出てよりパワフルに活動することができるが、消極的であればエーテルも出ないため活動も出来ない。
心と身体は切り離すことができないのだよ。全てはエーテル次第だ。」
「つまりはやる気って事かなぁ、やる気があるとエーテルが出て、やる気がないとエーテルが出ない。」
「簡単に言えばそうだな。そしてそのエーテルは魔力にも当たる。その魔力を変換して筋力や瞬発力の身体能力や、身体の硬度等を上げること、そして魔法を発動するための魔力とする事が出来る。」
「じゃあ俺達が一番無いって言ってたのは・・・。」
「この世界を、そして君達の世界を自分が絶対救ってやるという確固たる強い想いだよ。そして、それが無いと君達はこの世界で死ぬことになるだろうね。」
死ぬという言葉に遼は驚いた。
「死ぬ?!いや嘘でしょ。だってオレ達勇者でしょ、死なないんじゃないの?だって死んだら世界が」
「ああ、滅ぶね。私たちの世界も君たちの世界も。」
鈴は泣きそうな顔で恐る恐るロード・クロサイトの方へ目を遣り尋ねる。
「じゃあ、お父さんやお母さんも。」
「全てが滅ぶ。例外はない。当然、私もルルも死ぬ。」
「中学生と小学生のオレ達に一体何と戦えって言うんだよっ!死ぬような相手と戦うなんて嫌だっ!」
遼は面と向かってロード・クロサイトに噛みつくが彼の顔はピクリとも表情が変わらない。
「リョウ、君が戦わなくてもこのままでは世界は消えて全てが死ぬ。戦えば全てが生き残れる道が開ける。君らが戦うのはエーテルとは対極に位置する負のアウラだ。」
「何だよ、負のアウラって。エーテルが気って言ってたから負のアウラってマイナスの気、マイナスのオーラって意味か?」
ロード・クロサイトは僅かに口元に笑みを浮かべ
「なかなか察しが良いな、そういうことだ。」
と遼を褒めた。
「この世界は大きく分けて五大陸で形成されている。永久に溶けることのない蒼氷の大陸「タンザライト」、灼熱の大地が広がる紅焔の大陸「ルビーラ」、美しく光り輝く透水の大陸「クリスタ」、大森林と獣人の住まう深緑の大陸「エメラルディア」、そして四大陸の中央に位置し光魔の大陸「アレクサンドル」。
今この五大陸全てに負のアウラが広がりつつある。」
「負のアウラが広がるとどうなるの?」
鈴が隣にいたルルを見上げて尋ねた。
「負のアウラは少しづつ人の心に侵食していきます。最初はヤル気がなくなり、身体が重く感じ、だんだん身体が動かなくなって何もしたくなくなります。
無気力になった人は食べることも面倒になりやせ細っていき最後は心臓が動かなくなって死んでしまいます。」
「まあその途中で何もかもが面倒になって自殺する奴もいるがな。」
「でも、そんなの目に見えないじゃないんですか?どうしろっていうんですか?」
「原因はある。強い負のアウラを持つ者が出現したからだ。そのアウラを感じた者から連鎖的に負のアウラが広がっていく。それは同様に君たちの世界にも連鎖する。感受性の強い者や負のアウラが強い者がこちらの世界のアウラを感じ取りそこから広がっていく。その結果はこちらと一緒だ。」
「じゃあ、そいつを倒せばいいって事だよね!」
「簡単に言えばそういう事だ。だがそれだけでは解決せんがな。今はそれで良い。」
「「??」」
ちょっと引っかかる言い方だけどまいっか。
次回こそは修行モードに突入!したいなぁ。