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元ヒーロー、再びハローワークへ

「こんにちは、ジルスさん。お越し頂きありがとうございます」

「とんでもないです。ちょうどオカザキさんに相談に来ようと思ってたんです」

「そうでしたか。それでお電話でお話ししたかと思うのですが、雇用保険についてです」

「貰えることになったって本当ですか?」

「はい。現在の国王に確認したところ、通常の場合と同じく雇用保険を受給すべきとの判断がされました」

「良かった……」

「本来なら保険というのは月々の掛け金を払っていてこそ貰えるものですから、今回は特例のようですね」

「え、特例ですか?」

「世話になったから、と国王が仰ってました。ジルスさん実はかなり凄い事をしてたんじゃないですか」

「いやまさか! むしろ今の国王とは接点が全然ないですよ」

「そうなんですか? まぁ、ジルスさん過去にも飛んでますし、人と人はどこで繋がってるかわからないですから」

「ん~……気になるけど今は考えないでおきます」

「では、雇用保険の受給についてお話してもよろしいですか?」

「あ、はい。お願いします」


「まず、ジルスさんの場合は手続きが済み次第すぐに貰えます」

「え?! 3ヵ月くらい間が空くかと思ってました。知り合いに聞いたら、みんなそのぐらい待ったって……」

「それは自己都合で会社を辞めた場合ですね、ジルスさんは自己都合にあてはまりません。言ってしまえば会社都合による退職です」

「会社って……、なんか変な感じがしますね」

「ジルスさんは自己都合で世界を救ったわけじゃないですよね?」

「自己都合ですか?」

「そうです。例えば、

・ラスボス前にサブイベントの回収をしていた

・意味もなく地図で行った事のない場所に飛んでいってみた

・レベルを限界値まであげていた

・カジノでお金を使い切る

などです」

「そんなことしてる余裕なかったです! 一日でも早くなんとかしないといけなかったんで……」

「素晴らしいです。大抵の方は先ほど申し上げた事をやってるんですよ」

「そりゃ今になってみれば、やっておけば良かったかなって思いますが……」

「そういう訳でジルスさんは自己都合ではなく……そうですね、世界都合とでも言っておきましょうか」

「……なんかスケール大きいですね」

「人々に知られていないとはいえ世界救ってますから」

「あ、ありがとうございますっ……」


「それでは、手続きのために写真が必要になりますが、お持ちいただけましたか?」

「はい、あの……普通は顔写真なんじゃないんですか?なんで全身写真……」

「ああ、顔は頑張れば真似できる時代になりましたからね。ほらメイクとかで」

「そうなんですか?」

「はい、少し前に流行ったんですよ。女性でもメイク次第で男性の顔を真似できるらしくて」

「え、流行ったんですか? おかしいな……知りませんでした」

「もしかしたらジルスさんが過去にいってる時ですかね」

「なるほど、それで全身写真なんですね」

「えぇ、さすがに身長や体格は真似するのにも限界がありますからね」

「確かに……」

「不正受給を防止するためです。それでは、こちらお預かりします」

「あ、はいっ……お願いします」


「そういえば、ジルスさんのご相談というのは?」

「はい、あの……求人票のことで。たくさん見てるんですが、いまいちピンとこないんです」

「なるほど。条件を絞ったりしていますか?」

「いえ、とくに。出てきたのを上からばーっと見てます」

「それだと色々と悩むはずですね。目移りもしやすいですし、何より目が疲れますね」

「はい……検索する機械の画面も近いんで、かなり目が疲れてます」

「では、仕事を探す上で譲れない条件ってありますか?」

「譲れない条件、ですか……」

「それさえ決まっていれば、“何でもいいから良い仕事ないかなー”状態の方は見つけやすいかと」

「ん~……」

「例えば、休みは年間100日以上欲しいとか、ボーナスはありがいいとか、場所はこの辺がいい、などです」

「なるほど、そういう条件だったらあります」

「ではまず、その譲れない条件だけを入れて検索してみてください。ただし、あまり多いと逆に何もヒットしないので、ベスト3くらいがオススメです」

「ベスト3ですか……」

「はい、難しいかもしれませんが」

「やってみます! その後はどうすれば……?」

「ヒットした中から、気になった仕事を見ていけばいいんですよ。特殊でない限りは、実際に働いているうちにやりがいを見い出せるはずです」

「それでもいっぱい出てきそうですね」


「では、ここで注意することをひとつお伝えしますね」

「注意ですか?」

「はい、求人票を出している会社の中には業務内容がぼんやりとしたところもあります。こういう会社は賃金が良く書かれているので目を惹くと思います」

「確かに」

「ですが、実際は何をするかわからないので危険です。業務内容を読んでみてイメージできないところは応募しない方がいいです」

「なるほど、わかりました」

「もし気になった求人票があったらご相談ください。こちらである程度の情報はお伝えすることはできますので」

「…………オカザキさんって本当にいい人ですよね」

「いえいえ、これが仕事ですから。最近は、実際に雇われて労働条件が違うというご相談が多いんです」

「なんか怖いですね」

「そうならない為にジルスさんもしっかりと求人票を読み説いていきましょう」

「はい! 頑張ります!」

「では、この後は雇用保険受給者の説明会に参加していってください」

「わかりました。ありがとうございました」

「それでは、お疲れさまでした」


次回更新予定

・元ヒーロー、失業認定日に

もしくは

・元ヒロイン、自己分析に苦戦


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