元ヒーロー、市役所へ
「番号札20番でお待ちの方いらっしゃいますか?」
「はい」
「お待たせしました、どうぞお座りください。本日は国民年金に加入ですか?」
「あ、いえ……年金を納められなかった時期があったので、その手続きにきました」
「納められなかったと言いますと……?」
「急に時空を越えなきゃいけなくなって、特に免除の申請とかせずにそのままにしていたもので……」
「猶予の申請もですか?」
「……はい」
「現在はお勤め先で加入していますか?」
「いえ、いま求職中でして。ハローワークの方で相談した時に、役所でしかるべき手続きをしてくださいと言われました」
「わかりました。ハローワークへ詳しく事情を確認しますので、お名前を教えてください」
「ジルス・ラズリードです」
「何か本人確認できるものをお持ちですか?」
「えっと……免許証でいいですか?」
「念のため番号を控えさせていただきますね、ではハローワークの方に確認してみます」
「はい……あ、担当してくれたのはオカザキさんという方でした。その方に聞いてみてください」
………………
「お待たせしました。ハローワークの方に確認できました」
「良かった……。それでどうすればいいでしょうか」
「そうですね、まずは現在は未加入の状態ですので、一度国民年金へ加入していただくことになります」
「はあ……」
「年金は過去に遡って納入することができるので、過去の1年分を納めることも可能です。なので、未納分については納めていただければ問題ないです」
「あの、いまは支払いが難しいので、できれば免除の申請をしたいんですが……」
「わかりました。そうしますと、こちらの用紙に必要事項を記入してください。」
「…………」
「あ、ボールペンはこちらです」
「……っ、ありがとうございます」
「では、免許証のコピーをとらせてもらいます」
「えっと……はい、お願いします」
「少々お待ちください」
………………
「免許証をお返しします。これで免除の申請手続きは終わりです」
「ありがとうございます」
「免除には審査がありまして、後日ご自宅宛てに郵送で結果が届きます。もし結果が届く前に納税通知書がきても、それはそのままにしてください」
「わかりました。あの、保険証の手続きもしたいんですが……」
「それでしたら、ここの3つ隣りの医療福祉課で手続きをしてください」
「医療福祉課……、わかりました。ありがとうございました」
「健康保険加入の方はこちらどうぞー」
「すみません、保険証の手続きをしたいんですが」
「そーですか、でしたらこちらの用紙に記入お願いします」
「あの……だいたい支払う保険料とかわかりますか?」
「はい、こっちで計算できますので少し待ってもらえれば」
「じゃぁ手続きと一緒に保険料も教えてください」
「わかりましたー。ちなみに現在はどこの保険組合にも加入してないですよね?」
「そうですね、してません」
「ジルス・ラズリードさん」
「はいっ」
「お待たせしましたー。こちらが新しい保険証になります」
「ありがとうございます」
「それで保険料なんですが、納入時期が4期あって……1期あたりこのくらいですね」
「……結構ありますね」
「こればっかりは前年度の所得によりますからねー」
「去年はいなかったんですが……」
「…………それって、時空超えた系ですか?」
「えぇ、まぁ……」
「本当ですか! うわぁ……やっべ」
「は?」
「あっ、すいません! 先輩から最近少なくなったって聞いてて。実は俺、超ファンなんですよ」
「ファンって」
「だってリスク高いから今はあんまりいないって聞きますよ」
「でも“元”ね、今はこんなんですよ」
「いやいや、俺みたいな役所勤めには一生経験できませんからね。あの、握手いいっすか?」
「えっ?! ……ああ……まぁ、自分でよければ」
「ありがとうございますっ! 」
「……なんか恥ずかしいな」
「もっと胸張ってくださいよ。保険料もこんだけってことは、ジルスさん結構稼いでたんじゃないですかー」
「過去に飛ぶまではね。実際、保険料って免除とかないんですか?さすがにちょっと……」
「あ、一応ありますよー。ただ年金免除と違って、審査が厳しくて免除されにくいって聞きますよ」
「そうなのかぁ……でも申請していきたいな」
「申請はここじゃなくてずっと奥になりますね」
「奥っていうと……」
「ずっと先の13番窓口っすね」
「わかった、13番だね。色々ありがとう」
「いえいえ、俺の方こそ握手してもらっちゃって。なんかあったらまた来て下さい」
次回更新予定
・元ヒーロー、魔の13番窓口へ
もしくは
・ヒロイン、ハローワークへ行く