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元ヒーロー、ハローワークへ行く

「ジルス・ラズリードさんですね、担当のオカザキです。どうぞお掛け下さい」

「はぁ……、どうも」

「えーと、再就職をご希望ですね。前職は……ヒーローですか」

「そうです。よろしくお願いします」

「ヒーローって言っても、色々ありますが何系ですか?」

「え、何系って言われても……」

「大きく言えばふたつあります。

①多くの人々に認識され、エンディング後は賞賛された

②存在は人々に認識されず、エンディング後はひっそりと暮らした

ジルスさんはどちらですか?」

「えっと、②の方です」

「そうですか、では少し厳しいかもしれませんね。①の方だと書類選考の段階でポイントを稼げるのですが……②は結局のところ知名度ないですからね」

「そうなんですか……」

「ま、焦らず一緒に頑張りましょう。ところで雇用保険の手続きはされましたか?」

「それが……、個人でやっていたので雇用保険はかけてませんでした」

「……本当ですか?」

「……はい。ついでに言うと労災も健康保険もかけてませんでした」

「そう、ですか……ケガをした時は大変だったでしょ、全額負担だから。」

「そうですね……、その時はとにかく宿屋で休んで体力を回復してました」

「賢いですね。アイテムを買うよりも装備にお金を回したんですね」


「そういえば、1年くらい国民年金が払えなかった時期がありました」

「何かあったんですか?」

「その間は過去に飛んでました」

「飛ぶ前に免除もしくは猶予の手続きはしましたか?」

「いえ、時間がなかったのでしてません……。時空のひずみに引っ張られる形だったので」

「なるほど。では、それは後ほど役所のほうでしかるべき手続きをしてください」

「わかりました。……あの、雇用保険が貰えないと生活が厳しいんですが」

「そうですよね、個人で活動されていたのでそこは難しかったかと。せめてどこかに所属していたら良かったのですが」

「あの時は探す余裕なんてなかったんですよ! 」

「ジルスさんっ、落ち着いてください。最終的にはこちらのハローワークの方から国王に援助するように求めますから」

「できるんですか……?国王は一番最初に殺されましたよ」

「そうだったんですか……では、次に国王になった者に連絡をとってみます」

「なんとかお願いします……」

「はい。ついでに、時空手当ての方も貰えるか確認をとってみますね」

「時空手当てって何ですか?」

「時空手当ては、過去や未来など時空を超えた場合に貰える特別手当てのことです」

「そんなのあったんですねっ……」

「まぁ、リスクが大きいですからね。時空を超えると、本来過ごしている時間軸には存在していないことになり、簡単に言うと歳をとりませんからね」

「やっぱりそうですか! 戻って来た時に親戚に言われたんです。全然変わってないなって」

「こればっかりは個人の方も援助するように条例があるんですよ。ちなみにこの手当ては課税の対象外です」

「そうなんですか! 良かった……稼ぎもないのに税金ばかり取られるのは辛いですから」

「そこは安心してください」


「では、一日も早い再就職を目指して、まずは得意な事を教えてください」

「得意な事ですか、…………剣術ですかね。最終奥儀まで必死で覚えました」

「なるほど。もしかして、勇者系ですか?」

「はい。まぁでも、認知度ないんで影の勇者ですけど。勇者系、結構いますか?」

「最近は結構多いですね」

「他の人たちは再就職できたんですか?」

「どこかに勤めると言うよりも、独立される方が多いですね。ジルスさんのように剣術が得意な方は、道場を始めるとか」

「あー……王道ですね」

「聖騎士だった方は病院を開業しましたよ、簡単な治療くらいならできるとか」

「…………なんか羨ましいですね」

「あとは自叙伝を出す方もいましたね。そのままベストセラーになって映画化されて、印税暮らしです。なんて言いましたっけ、ほら、指輪が出てくるやつ」

「あ、それなら僕も読みましたよ! 有名ですよね」

「ジルスさんは独立は考えないんですか?」

「そうですね、資金がないので無理ですね。ラスボスを倒してもみんなの知らないところで世界が救われただけなんで、ほぼボランティアみたいなものですよ」

「せめて土系の魔法を覚えていたら優位だったんですけどね」

「どうして土系なんですか?」

「今って建設業界で人が不足してるんですよ。都心も色々と建設ラッシュじゃないですか」

「確かにそうですね。こんな事ならクラスチェンジしておけば良かった……あの時は攻撃力重視だったんで違う方にいきました」

「クラスチェンジと言えば、ジルスさんの髪の色はその影響ですか?」

「そうです、あ……やっぱ黒くした方がいいですよね?」

「面接の時の印象は良くしたいですからね。茶髪くらいなら今は許されると思いますが……」

「わかりました、髪は明日染めます」

「素晴らしい心がけですね。そのやる気があればきっと再就職できますよ」


「なんか話が長くなっちゃってすいません。色々ありがとうございます」

「いえいえそんな、言ってしまえばコレが私の仕事ですので」

「ははっ……なんか安心しました。ハローワークって初めてだったんで正直怖かったんです」

「いつでもご相談に来てください」

「はい! あ、そうだ……前職で知り合ったヒロインにもオカザキさんのこと紹介してもいいですか?」

「それは構いませんが、その方も退職されたんですか?」

「そうなんです、ちょっと色々あって。あいつにもここの電話番号教えておきます」

「では、お待ちしてますね。ジルスさんは今日、あちらのカウンターで求職登録をしてから帰ってくださいね。時間があれば求人票も見てみるといいでしょう」

「わかりました、じゃぁまた来ます」

「ええ、いつでもお待ちしてます。それでは、お疲れさまでした」


次回更新予定

・元ヒーロー、市役所へ

もしくは

・元ヒロイン、ハローワークへ行く


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