不運な小銭
自動販売機に小銭を入れようとして、財布から百円玉を落としてしまう。
拾おうと頭を下げたところで、自動販売機に頭を打ち付ける。
ぐわっ、と思わずのけぞって、後ろに倒れて地面に後頭部を強打した。
そんな不運が重なった結果、ボクは命を落としてしまう。
そして、ボクは自分の遺体の前であぐらをかいて座り込んでいた。
目の前に倒れる自分は眠っているようにしか見えなかった。
近くを行き交う通行人にもそう見えたらしく、当たり前のようにボクの遺体の前を通り過ぎていってしまう。
あまりにも突然すぎる間の抜けた事態に、ただ呆然とするしかない。
倒れた自分の体に触れてみるが、すり抜けてしまう。
ピッタリと重なるように寝転んで、起き上がろうとしてみるが、すけたボクのカラダが持ち上がるだけだった。
再びあぐらをかいて座り直した。
「あのー……」
背後から声をかけられる。
「いま忙しいんで――」
声の主を振り返ることなく、ボクは無下に断った。
「じゃ、じゃあ向こうのコンビニで立ち読みしてますんで、それが飽きたら来てくださいね」
そう言い残して声の主は離れていった。
なんの用かは知らないが、ボクはいま自分のことで頭がいっぱいなのだ。
その後も思いつく限りのことを試してみたが、どうすることも出来なかった。
そうこうしていると、制服を着た警察官が現れた。
ついにダレかが通報してくれたようだ。
警察官がボクのカラダをゆすりながら、
「おにいさーん、こんなところで寝てると風邪引いちゃ――」
声をかけながらボクの顔を見て、すぐに異常に気がつく。
脈を確認して、警察官はめんどくさいと言わんばかりの表情をした。
おもむろに、警察官がたおれているボクをロープでまとめ始める。
一分も経たず、ボクのカラダは気をつけの姿勢でキレイに縛り上げられていた。
「よいっしょ……っと」
警察官は、縛ったボクのカラダを肩に担ぎ上げた。
警察官とボクの遺体は、ボクを置き去りにしてコンビニへ向かう。




