第一話
アナタは自分自身に『お前は誰だ?』と問いかけた事がありますか?
普通ならばそんなマヌケな事はよほどの現実逃避者か暇人しかしないだろう。でも、僕は現実逃避者でも暇人でも無い。いや、今この状況を見たら現実逃避をしたくなるを通りこして鬱になる。
何故なら僕は……僕の目の前にある鏡に映った少女に惚れかけてしまったのだから……
「だ……誰?」
僕が朝、最初に目を覚まして鏡を見た時の第一発言がそれでした。普通ならば僕の姿がそのまま鏡に映るはずなのに目の前にいるのは可愛い可愛い女の子。
そりゃ、僕は小さくて童顔だからクラスの子にも可愛い可愛いとは言われるけれども、ここまで可愛い顔だったとは思えない。それに、ペタンコだけど柔らかい胸、股間にあるはずの物が無い。僕は……僕は……
「えっと……女の子に……なっちゃったの……かな?」
僕は叫びたくなる気持ちを抑えながらも仕方が無いので制服に着替えて両親の元へ向かう事にした。
しっかし茶髪のショートヘアに童顔、低い身長……マニア受けする事間違い無しのスタイル。
「可愛いなぁ……」
一瞬だけ鬱になりかけた自分のホッペタを叩いて制服へと着替える僕は一体何なんだろうか。
「おかあさぁ〜ん。ご飯まだぁ?」
「あら、アンタ声が少し高く……ぶっ!」
母は運んでいた料理を床にぶちまけて、父さんは飲んでいた緑茶を盛大に新聞にぶちまけた。それもそのはず。息子が急に娘になったのだから……
「ま、まぁ……何だ? 父さん、今日は早く帰ってくるから……ゆっくり話し合う機会を設けようじゃ無いか……な? まだ、未成年なんだから、そんなイメチェンは……な、なぁ母さん」
「え、えぇそうね。うん。今日は母さん少し腕を奮って夕食作っちゃうからね。真綾の好きなハンバーグ作ってあげるから。ね?」
あぁ〜両親に意味不明な心配をかけてしまったようだ。
「別に何も心配しなくても良いから……」
僕は親が落としたご飯を拾ってから食べて学校に向かった。はぁ……今日は朝から憂鬱だ。
学校は学校で教室に入った瞬間に妙な空気になった。もちろん誰も見た事が無い美少女が急に教室に入って来たら誰でも驚く訳で……
「どこの人ですか? 転校生ですか?」
僕のクラスメイトで学校一の女好きの称号を持つ男の子が僕に話しかけて来た。
「はぁ……キミは本当に見かけが女の子だったらそれで良いのかぃ? 僕だよ。ま・あ・や」
「えぇっ! お前……ふっ、とうとうソッチに……」
友達が一人づつ僕の肩を叩いて行く。僕は何が何だか判らなかったけど、今までと変わらない日常を過ごす事が出来ると確信した。
確信してたのに……