表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魅霊の檻  作者: 黒谷しゅん
1/1

火焔のヒト

こんこん と扉を叩く音。 扉から顔を出したのは成木実瓜(なりき みか)だった。 「悠ちゃん、またあの家で視た人いるみたいよ。 今度は火だるまだったんだって」 物騒なことを言いながら実瓜は手にしてた缶ジュースを飲み、僕の隣に腰掛ける。 

 ここは僕のアパートの一室。 ボロアパートだけど、風呂もついてるし生活に困ってはいない。むしろ快適だ。 「あっ、また悠ちゃんご飯食べてないでしょ。 ダメだよ、ちゃんと食べなきゃ」 勝手に台所を漁る実瓜を横目に、僕はテレビから流れるある事件に耳を傾けている。  

ー都内の大学に通う前田凜さん、 18歳が焼死体で見つかりました。 火災の原因は…ー

 「悠ちゃん、聞いてる? だからちゃんとご飯食べなきゃ…」

 「聞いてるよ、というか今日は何の用だい?」

 「用がなきゃ来ちゃダメなの?」

 「いや、そうじゃないけど…」 実瓜のこういうところにはどぎまぎする。   

 「とりあえずさ、今から鈴夜さんのとこ行かない? あの家のことも気になるしさ」

 「えー、今から~」 しぶしぶ僕は支度をする。 



成木実瓜とは高校からの友人だ。 幼い頃に何度か会ったことがあるみたいだがもちろん、覚えてなどいない。 僕は今、社会人?だけど実瓜は女子大生でこうやって大学が終わると訳もなく僕の家を訪れる。 

 「でね、その視た人なんだけど、それがね…大学の友だちなの。 だから鈴夜さんに言っておこうかと思って…」

 実瓜の話をまとめると、実瓜の大学の友人、阿南怜。 この阿南怜という女性が近所で有名な幽霊屋敷に大学の友人数名と肝試しに行ったらしい。 その幽霊屋敷で 火だるまの人 を目撃したようだ。 どうにも阿南怜にしかその 火だるまの人 は視えていないらしく、肝試しに行った他の数名に話しても信じてもらえず実瓜に話したということだそうだ。 そこで、僕たちは今ある9階立てビルに向かっている。  このビルの最上階に自宅兼事務所を持っている、【鈴夜】と呼ばれる人物に会いにきた。 

  9階立てなのに何でエレベーターないんだろ…

 「古いもんね~ このビル」  むっ、地獄耳だなぁ…

 なんて雑談しながら階段を登り鈴夜さんの自宅兼事務所の扉を開ける。  

 「ノックはするもんだよ~悠君」

 「階段登るのに疲れてそんな余裕ないですから」

 「私はこんなか弱い女性なのに毎日上り下りしてるんだ、まぁ慣れもあるけどね」

 「僕は慣れたくありません」

 「慣れてもらわなきゃ困るよ~ ほら、仕事のこともあるし。 でも、今日は仕事のことじゃないんだろ?」

 「はい、実瓜が話があるそうで…」


この【鈴夜】という女性は僕の勤める便利屋の社長で、【鈴夜】はペンネームらしい。 社員の誰も本名は知らない。 と言っても社員は僕ともう一人しかいないんだけど…。


 「何で大学生はそういうスポットに行きたがるんだろうね~。 ああいう場所はね、私たちの領域じゃないんだ。 まぁ、若気の至りなんだろうけど」

 「世の中の大学生全員がそんな元気ないですよ、鈴夜さん。  で、実瓜の話聞いてどうでしたか?」

 「悠君も年齢的に大学生だけど、そんな元気なさそうだし… あっ、実瓜ちゃんの話かい? 私もあの家はよく知ってるよ。  昔、仕事で行ったことがあってね。 こればかりはその 火だるまの人 を視た本人に話を聞きたいねぇ、 実瓜ちゃん、今からその娘に会えるかい?」

 「連絡してみますね! えっと…」

鈴夜さんが興味を持ったってことはまた 異界の者 絡みだろう。

 僕、挫木悠が勤めている便利屋【箱のトリ】。

表向きは便利屋、裏では、この世の現象ではない異界の事柄についてを生業としている。

 僕だって自分でも予想なんてしてなかったさ。 1年前に鈴夜さんと会うまでは… 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ