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愛に至る病  作者: 深津条太
贄となる幼い希望たち
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似顔絵さがし

 いつもと同じ通学路を、いつもと同じように藍と歩く。代わり映えもしない景色の中でも、藍はどこか楽しげだった。

 心地よくなり始めているこの気温のせいだろうか、家のすぐそばの空き地には白詰草が綺麗に群生し、白い絨毯のように花を咲かせていた。

「わぁ、キレイ!なんで今まで気が付かなかったんだろ?」

 藍がその白詰草の前で屈み、それをふたつ摘み、戻ってきた。

「はい、氷雨も」

「お、おう」

 そのひとつを俺に差し出してきた。どうしろと……?結局、苦悩している隙に、白詰草を空っぽの胸ポケットに突っ込まれた。

 藍がその手に残った白詰草を自分の髪に差してから、にこりと笑う。

 その笑顔が今朝の夢の笑顔と不意に重なる。

「さ、行こっか」

「あぁ」



 いつもの交差点を通る。

 あの血だまりの跡も前より薄れていた。商店街は数日前の惨劇が無かったかのように、それなりの賑わいを見せていた。それでも、献花台には沢山の花が並んでいる。

 ただ、通行人のほとんどがその鎮魂にさえ目を背けて、自らの日常だけを生きようとしていた。いずれは献花台も消え、悲劇も空虚になるのだろうか。まるで、記憶から抜け落ちてゆく思い出のように暗闇に消えていくのだろうか。

「なあ、藍?」

「なに?」

「秘密基地、覚えてるか?」

「うん。あの湖のでしょ」

 藍が小さく頷いた。

「――ってことはあの時のこともっ!?」

 と思ったら、慌てふためきはじめた。

「あの時って、藍があそこを教えてくれた時か?」

「うきゃあぁぁぁああ!!??」

「あ、藍っ!?」

 頭を抱えた藍が屈み込み、叫びはじめた。

「わぁすれろぉぉおお!!」

 突然立ち上がった藍に肩を掴まれ、身体を乱暴に揺さぶられる。

「落ち着けって!首絞まってるッ!?」

 しばらくシェイクされ続け、解放された時には目眩すら覚えた。



「……ごめんなさい」

 やっと正気に戻った藍が項垂れながら謝る。

「話したらダメな話題だったか?」

「……ううん、大丈夫」

 ぼそぼそとした小さな返事が返ってくる。

「藍?」

「……うん」

 藍の反応は薄く、未だに俯いたままだ。

「はぁ……、怒ってないから元気出せって」

 とにかく話しにくい。

「……ほんと?」

「あぁ」

 少しだけ顔を上げ、目だけを俺に向けた藍が聞いてきた。潤んだ目で俺を見上げる。

「……うん。ごめんね?」

 いつもの笑顔を取り戻した藍が顔を上げた。

「わかった、わかった」

「ねぇ、氷雨?」

 藍の顔が鼻先まで近付いた。その目は何かを見透かしたようだった。

「なんでいきなりそんな話をしたの?」

「実は、その夢を見たんだよ」

 夢の内容、途中で目が醒めたことを藍に話した。

「……そんなことだろうと思った」

 藍は呆れたような、安心したような、複雑な表情でため息を吐く。

「あの頃からずっとさ、氷雨と一緒だよね」

 藍が唐突に話題を変えた。

「あぁ、ずっとな」

 何故かクラス分けでも毎年一緒になるし、事ある毎に藍は俺の家に来るし、結局、藍と一緒に居る時間は長くなっていた。でも、いつからこんなに遊ぶようになったのか、それは覚えていない。

「氷雨、これからもよろしくね」

「改まって、なんだ?」

「ううん。なんとなく、ね」

 上機嫌な藍がくるりと後ろを向いて、少し前を歩く。

 天然で明るい茶色をした藍の髪から覗く耳が、ほのかに赤らんでいる気がした。

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