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レインボー  作者: 詩音
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第4話:生きる者に出来る事

『……それから奏はあんな風になってしまった。歌も歌わなくなった』

将吾と浩貴は何も言えなかった。自分達は奏の事を何も知らないで、平気でバンドを組もうと言った。2人は自分を恨んだ。蜜柑はそれに気付き、

『将吾君達のせいじゃないょ。逆に私は嬉しかった。だって奏、ちょっとだけ元気になった気がするもん!!……だから……お願い!!!奏を助けて、闇の中から救い出して。君達にしか頼めないの。奏にもう一度、歌う幸せを…歩く道しるべを作ってあげて!』

っと、泣きながら2人に頼んだ。

『奏はどこにいるんだ?』

将吾が言った。

『…樹と最後に行った海と思う。』

『浩貴、蜜柑を頼む。蜜柑、奏を絶対に救い出す。約束する。』

そぅ言うと将吾は走り出した。



『樹…私はどうすればいいの?』

奏は海に向かって呟いた。本当は将吾の真っ直ぐな言葉は嬉しかった。だけど、歌ったら樹を裏切る事になると思った……

『……大丈夫だょ、樹。私は樹を裏切らないから……』

奏は、そう言いながら泣いていた。っと遠くから奏を呼ぶ声が聞こえた。将吾だった。

『どうして、この場所が分かったの?』

『蜜柑から全部聞いたんだ。さっきの場所は、樹が死んだ場所だったんだな?』

奏は将吾を睨んだ。

『蜜柑から聞いたんなら、もぅいいでしょ!?ほっといてょ!歌わないってあの時決めたの!!!』

『奏は、どうして過去ばかり気にして前に進まないんだ?』

『あなたに私の気持ちなんて分からないくせに!!!』

『あぁ、分からないさ。けどな、樹の気持ちはどうなる?樹は今の奏を見たら、きっとがっかりするだろうな。だって奏は自分から逃げてる。逃げてばかりで自分からは何もしようとしない。そんなのズルイょ!!』

『でも……樹はもぅいないもん……どこにもいないもん!!!』

『…いるじゃんか………』

将吾は優しく言った。奏は下を向いて泣いていたが、将吾の言葉で顔を上げた。

『奏の心の中で生きてるよ。だから奏は、いつまでも悲しいんだろ?』

奏は声をあげて泣き出した。

『奏、もう1度俺達と歌おう。俺が奏の苦しみも悲しみも全部受け止める。奏を1人にしない。』

将吾が言った。

『少し考えさせて……』

今の奏にとって精一杯の答えを言った。

『いつまでも待つょ。』

そぅ言うと、遠くで見守っていた蜜柑と浩貴に合図した。2人は喜んでいた。


将吾と浩貴が帰ったあと、奏は涙もふかず、海を見つめて座っていた。その顔は穏やかだった。蜜柑は後ろからそっと見守っていた。


将吾と浩貴がが帰ったあと、奏は涙もふかず、海を見つめて座っていた。その顔は穏やかだった。

あれから1週間が過ぎた。将吾と浩貴は、放課後、蜜柑のとこへと行った。

『奏は?』

将吾は聞いた。奏はあの日から学校に来ていないし、連絡もとれなかったのだ。蜜柑は首を振った。

『ダメ。部屋に閉じこもって、何か考えてるっぽい。親も心配してるし…』

『蜜柑…奏の家まで案内してくれ。』

突然、将吾が言った。

『俺、奏に言わないといけない事があるんだ。』

『………分かった。着いてきて。』



将吾達3人は凄く豪華な家に来ていた。奏の家はお金持ちらしい。

『話はいつも蜜柑ちゃんに聞いてるわょ。奏がお世話になってます。』

奏の母親が言った。奏とそっくりで、綺麗で若く見えた。2人はみとれていたが、蜜柑に足を蹴られ我にかえった。

『あっ………はぃ。あの…奏は?』

『奏は部屋から出てこないの。心配だけど………まっ、大丈夫でしょ☆☆☆』

奏の母親はニッコリ笑って言った。

『あの、奏の部屋はどこですか?』

『そこょ。』

奏の母親は一室を指さした。

『将吾君、浩貴君、蜜柑ちゃん。奏をこれからも支えてあげてね。』

3人は強く頷いた。

将吾は奏の部屋の前に立った。そして、ゆっくりと話しかけ始めた。

『奏、聞こえるか?』

『………………ぅん。』

小さい声だが奏から返事が返ってきた。

『俺、奏に言わなきゃいけない事があったんだ。奏に最初に会った時、声がSTARsのカナテに似てて、凄く興奮して

「カナテだ!」

って思って、奏の事を何も知らないで、平気でバンドに誘った。けどさ、奏に断り続けられて、それで奏と少し話すようになって、ちょっとずつ気持ちが変わってきたんだ。そして、奏の過去の事を聞いて、その気持ちがハッキリした。』

『何?』

『俺は今、STARsのカナテじゃなくて、奏自身…望月奏という子とバンドがしいんだ。奏の歌が聞きたい。STARsのカナテじゃない、本当の奏の歌を……。』

奏は思い出した。樹の笑顔を……樹は、いつも奏が歌ってる時、笑っている時に、樹も笑顔になった。今、樹が自分を見たら、きっと悲しむ……奏の心にまた、歌いたいという気持ちが宿り始めた。 『じゃぁ、明日学校で待ってる。』

将吾がそう言い、蜜柑と浩貴に合図して、帰ろうとした時、奏の部屋のドアが開いた。そこには、冷たい目の奏はいなかった。

『将吾…浩貴……………私から、お願いがあるの。』

『何だ?』

『私をバンドに入れて下さい!!』

奏が頭を下げた。3人は、それぞれ顔を見合わせ、将吾が

『喜んで☆☆』

っと言った。奏は顔をあげた。そこには、将吾、浩貴が初めて見る奏の笑顔があった…。

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