第2話:飛べない天使
〜次の日〜
将吾と浩貴は、3-Cに向かった。
しかし、そこには奏と蜜柑の姿はなくクラスの人に聞いたら中庭に行ったと言われた。中庭に行くと、大きな木の下で鳥と戯れている奏がいた。まるで天使のように美しい奏に、2人は見いってしまった。その時、2人を呼ぶ声が聞こえた。振り返ると、蜜柑が立っていた。奏も2人に気付き、こちらを向いた。鳥は飛びたっていった。
『2人ともどうしたの?私達に用事??』蜜柑が聞いてきた。
『昨日、これも落ちてて。』
将吾は、奏に生徒手帳を渡した。
『ありがとう☆☆☆探してたんだ。』
奏はニコッと笑った。その笑顔に将吾は、ドキッとした。奏は、将吾の顔が赤くなっていくのを不思議そうに見ていた。将吾は見られてるのに気付き、顔を背けた。
奏が聞いた時、ようやく将吾は本来の目的を思い出した。
『1つ望月さんに聞きたい事があるんだ。』
『名前見たんだ。じゃぁ、奏って呼んで☆☆んで、何?』
『えっとぉ、奏はSTARsのカナテじゃないのかなぁ→って思ってさ。それだったら、俺達とバンドを組んで欲しいと思って。』
すると、奏の顔つきが厳しくなり、蜜柑は涙目になってきた。
『……どうして、そんな事を思ったの?』
『声が似てるなぁって思って。俺、STARsのファンで特にカナテが好きでCDとかいつも聞いてて、それで……』『……私は、STARsのカナテじゃない。私の前で、その話しをしないで。STARsなんて大嫌いなの。それじゃ。』
奏は冷たい目をして、そぅ言い放ち校舎へ歩いていった。
『感じワルッ!!』
今までずっと見ていた浩貴が言った。
『感じ悪いのはあんたたちだょ!!』
蜜柑が涙いっぱいの目で2人を睨んだ。
『2度と奏の前に現れないで。』
『どぅゆうことだょ。』
浩貴の問いかけに蜜柑は答えず、走って奏を追い掛けた。
『俺達はただ、カナテか聞いただけなのにな。』
将吾が言った。
『まぁ急に、
「カナテですか?」
って聞くのは失礼だったかもな。でもあそこまで嫌がらなくてもなぁ……あっ!もしかして本物のカナテかもしんないな!!なぁ将吾??』
『おぅ!!粘って、俺達のバンドに入ってもらおう!!!!』
〜数日後〜
『奏!!バンド組もうょ☆☆☆』朝から将吾は奏を見つけ、いつものように誘っていたが、今日も奏にシカトをされて終わった。
将吾と浩貴は、あの日から毎日奏を誘っていた。いくら嫌われようが、シカトされようが2人は諦めなかった。
奏と会ってから、将吾は奏にどんどん惹き付けられていた。最初はSTARsのカナテと思ってバンドを組みたいと思っていた。でも今は望月奏としての奏とバンドを組みたいと思っている。 しかし、将吾には奏と会った時から気になっている事があった。それは、奏が1度も心の底から笑った顔を見た事がないのだ。愛想笑いばかりで心を見せないようにしていると感じていた。それに、奏の目はいつも冷たかった。いつも遠くを見つめていた。その目を見ると将吾はとても胸が痛くなった。何故そうなったのかを知らないといけないと思った。 あれから数週間が過ぎた日、将吾と浩貴が家へと帰っていると、
『あれ、奏じゃない?』
と浩貴が前を指さして言った。将吾が指さした方を見ると、少し離れた所にホントに奏がいた。奏は花束を持って立っていた。2人が声をかけようとした時、奏が泣いているのに気付いた。2人はただ見ているしか出来なかった。ほんの少しして、奏が2人に気付いた。奏は涙を拭き、平然をよそおった。
『どうして、ここに?』
『いゃ、帰り道だから……それより、どうして泣いてたんだ?』
『………ゴミが目に入っただけょ。』
そぅ言うと奏の目が一層冷たくなった。
『なぁ、どうして奏は、そんなに悲しい目をしてるんだ?』
『君達には関係ないでしょ!!』『関係あるょ!奏は俺達の仲間になるんだから。』
『だから、ならないって言ってんでしょ!!』
『教えてくれ。奏はSTARsのカナテなのか?』
奏は一瞬言葉につまったが、意を決したように、
『分かったょ。言えばいぃんでしょ?そぅょ、私はSTARsのカナテょ。これでいぃの??』
と言った。奏の目から涙がこぼれた。奏はそこから逃げ出すように走りだした。
将吾と浩貴が奏を追い掛けようとした時、後ろから2人を呼び止める声がした。蜜柑だった。
『奏を追ってどうするの?中途半端な気持ちで奏を追わないで!!奏をこれ以上傷つけないで!!!』
『俺達は奏がいぃんだ。奏を助けたいんだ。だから、蜜柑教えてくれ!!奏が何であぁなったのか。』
将吾は蜜柑に言った。蜜柑は、その言葉で確信した。この2人は、奏を闇の中から救いだしてくれると……そしてまた、奏に希望を与えてくれると…………
『……分かった、教える。奏の過去を……』