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記録10 塊

翌日の昼、渋谷ハチ公前

10~20人程の男達が各自街の設置場所から

取って来たであろうAEDを持って四方八方から

集まって来た。

彼らの仲間らしき男達はその様子を撮影して

Youtubeに生放送しているようだった。


SNS上で繋がったのか以前から仲間だったのか

分からないが、彼らは渋谷ハチ公前の

広場に集まり、各自持っていたAEDを

地面に投げ捨て踏みつけ、蹴り飛ばし始めた。

破壊されたAEDを彼らは一カ所に集め、

可燃性の液体をかけ、火をつけた。


集められたAEDは勢いよく燃え続ける。

その炎に背を向け10~20人程の男達は

周囲の人ごみに向かって

「AEDなんてクソだ!!」

「新しい法律を許すな!!」

「政府はクソだ!俺達をバカにするな!」

「こんな法律認めないぞ!」

などを大声で叫び続けた。

仲間の男達はその様子を引き続き

Youtubeに生放送し続けていた。


周囲の人ごみの中から男達が

一人また一人と、AEDを燃やしていた男達の

抗議行動に同調し、参加し始めた。

参加する男はどんどん増えて行った。

最初10~20人程だった集団は

およそ200人程の規模になっていた。


SNS上ではその様子を報告するポストや

撮影したポストが一気に溢れかえった。


彼らは最初のメンバー以外は初対面の

赤の他人の筈だが、多くを語らず同調し

声を上げる男は増え続け、更に多くの男を

呼び寄せて行った。

彼らは計画的と言うよりはその場の

勢いで盛り上がって決まったというような

突発的、衝動的な印象で一方向へ歩き出した。


その後SNS上にあるポストが浮上した。

掲載


XXXXX  20XX年X月X日


男達よ、国会議事堂に集まれ




その後SNS上には同調するポストが溢れた。

一部抜粋


XXXXX  20XX年X月X日


俺も行くぞ 皆も来てくれ!



XXXXX  20XX年X月X日


やってやるよ!皆も集まろう!



XXXXX  20XX年X月X日


男を舐め過ぎた罰を与えてやろう



XXXXX  20XX年X月X日


決めた 俺は今日命を捧げる!




渋谷ハチ公前から歩き出した男達は

SNS上の情報から判断すると、

国会議事堂へ向かってるようだった。

渋谷ハチ公前から国会議事堂までは

歩いて1~2時間位。

無謀な距離では無かった。

彼らが歩き続ける内に同調し参加する男が

続々と増えて行った。

参加した男達はSNSで仲間を呼び、

更に仲間を増やしていった。

男達の集団はおよそ1000人規模に

なっていた。彼ら男の集団はまるで

一つの巨大な蠢く生き物のような塊となって

国会議事堂へ進み続けた。

その様子は多くの人達が動画を撮影し、

SNSやyoutubeにアップして更に世間に

知れ渡り、更に参加する男を増やしていった。


集団が国会議事堂前に着く頃には

集団の規模はおよそ5000人程になっていた。

物凄い数の集団だった。


国会議事堂前には大勢の機動隊が待機していた。

道路を塞ぐように横に大勢が列を組んでいた。

その数およそ2000人位だっただろうか。

銀の盾を構えた機動隊達が綺麗に並ぶ姿は

まるで連なった固い壁のようであった。


5000人程の男達と2000人程の機動隊達は

30メートル程の距離を開けて睨み合った。


男達の間では「この数なら俺達が勝てるぞ」

「俺は死んでも構わない」

「全力で突撃したら押し返せるぞ!」

など、自分達の優勢を予感する声が

多く上がっていた。


なぜこんなに詳しいのかと言うと、

私自身もこの抗議集団に参加していたのだ。

AEDを燃やす動画を見て参加した。

私もその時は死を覚悟していた。

男の権利や尊厳が守られる未来を

次の世代に託そうと本気で思っていた。


東京警視庁の機動隊なら実力は最強であろう。

横一列で盾で突進して

こちらを制圧して来ると予想できる。

催涙ガスや放水なども使って来るだろう。

対してこちら男達の集団は、衝動的に集まった

集団故に武装してる者は殆ど居なかった。


にも関わらず逃げ出すものは一人も居なかった。

男達は多くを語らず結託しあっていた。


指揮官車の上から拡声器で機動隊が

「直ちに解散しなさい!でなければ

強制手段に出る!」と叫んだ。


男の集団の最前列付近の男が

「みんな!逃げるなら今のうちだぞ!

死にたくないなら今すぐ帰れ!」と叫んだ。

帰る者は一人も居なかった。

男達の集団の中から

「行くぞ!」「やってやる!」

「覚悟はいいか?!」「おーー!」

と、戦意をあおる声が上がり始め

集団の全体に広がって行った。

この5000人程の数なら本当に

2000人程の機動隊達を

押し返せるかも知れない。

いよいよ衝突が始まるかと思われた時、


機動隊の一人が指揮官車に駆け寄り、

「指揮官!今日で辞めさせて下さい!」と

指揮官らしき隊員に告げ、

男達の方を向いて、盾とヘルメットを

外し、地面に捨て、横側へ立ち去って行った。

指揮官が「貴様何を考えてる!」と激高した。

その後「自分も辞めます!」「右に同じ!」

と、武装解除して立ち去って行く機動隊員が

現れ始めた。指揮官が

「お前ら何を考えとる!」と叫ぶ中

機動隊は立ち去る者や武装解除して

両手を上げる者などが多く現れた。


機動隊が組織として機能不全になり始め、

暫くの沈黙が周囲を包んだ後、

男達5000人程の集団の最前列付近の男が

「……帰ろう」と言い、横側へ帰って行った。


徐々に男達は各自散開し、5000人程の

男達は帰って行った。

男達の怒りを具現化したような巨大な人の塊は

少しずつ消えて行った。


男達の抗議集団と機動隊の大規模衝突は回避され

負傷者、死傷者は居なかった。


この地獄の扉を一瞬開きかけたような出来事は

その夜のニュースで全国に放送された。


次項へつづく





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