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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

"火鸡"

掲載日:2025/12/04

───咀嚼



「これ」


「鶏ですか?」


僕たちは食卓に並んだ炙り肉を頬張りながら、神父さまに尋ねる

肉は筋張った部分を残しながらも、噛むと脂の甘さが口腔に広がっていく

脂をたたえた表面は、濡れた様に艶めかしかった


神父さまはいつもと変わらない美貌で「そうですよ」と答えたが、僕にだけは神父さまが昨日と違う様に思えて居た


とは言え、悪い変化ではない

昨日までよりも、神父さまが一層若々しくなった様に視えたのだ


神父さまは背も低く、服装以外は、まるで僕たちみたいな子供にすら視える

魔法みたいだったので理由を聞いた事もあったけど、「信心によるものです」と、いつもはぐらかされて居た



年少の子が肉を口に運びながら「七面鳥!」と言うと、神父さまは彼に優しく頷く


貧しかったせいか、僕は七面鳥なんて硬くて美味しくないものしか食べた事が無い

「こんなに美味しい七面鳥も有るんですね」と、僕はきらきらした眼で神父さまに言った


神父さまが、少し困った様子で口をつぐむ

僕はそれが一瞬だけ気になったが、子供たちが先を争う様に肉を食べていく事に気が付き、直ぐテーブルの上に関心を移した




無償の孤児院でもある教会は、常日頃から飢えた子供たちで溢れていた

その為、クリスマスの晩餐とは言っても、数分もすれば食べ尽くされてしまう


テーブルに並んだ七面鳥の肉は、最初の頃こそ数え切れない程の量に視えたが、それでも長くは保たなかった


年々、食べ尽くされるまでの時間が短くなって居る

貧しい子供が増えているのかも知れなかった



僕は、教会の奥へと通じる扉の前に立っていた


ここから先に人が招かれる事は無い

でも、僕は子供だからそこまで厳しくは怒られないかも知れない


いざとなったら、「片付けを手伝おうとして、来てしまいました」と言い訳しよう


楽しい夜を過ごすうち、今夜は教会に泊まりたくなってしまったのだ



扉の先は廊下になっていて、真っ直ぐな通路の片側に扉が幾つも並んで居る


反対側は窓だ

規則正しく並んだ窓からは、外に積もった雪に照り返されて月光が差して居た



一番奥の扉から光が漏れている事に気が付き、僕は廊下の奥を目指した


教会の廊下は静かで、足音だけが心地良く夜に響いていく

突き当たりまで辿り着くと、僕は部屋の扉を開いた



よく片付いた薄暗い部屋の中では、神父さまが大きなテーブルで自分の夕餉を頂いて居た


僕たちに振る舞った料理と同じ大皿に、赤黒い肉や骨、眼球、臓物が散らばって居る

『きっと七面鳥を解体したあとの端材を、御自分では召し上がられて居るのだ』と、僕は神父さまの苦労に胸が締め付けられたが、神父さまは僕に気付くと、こちらを視て優しく笑った



その時、初めて僕は気が付いた


皿の横には視知った顔

瞠目して血の気の引いた、神父さまの真っ白な首が置かれて居た



「毎年、聖なる夜が近くなる頃には」


「躰が新しくなるのですよ」


事もなげに、神父さまが説明する



「これも信心と思い、皆に振る舞って居ます」


言いながら、皿の上の腸をカトラリーで切り裂いてフォークに刺す

神父さまが、それを僕に向けて差し出した



「私の総てを」


「食べ尽くしてくれませんか?」



僕は、自分の心臓の音が早くなっている事に気が付いた

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