ウチの大嫌いなあの人のこと
ウチは、ミコノ。
何処にでもいる、フツーの中学一年生だ。
親友もいるし、勉強だって運動だってそこそこできる。自慢じゃないけど、絵も上手い。
そんなウチには、大っ嫌いな人がいる。
小学生の頃から大嫌いで、多分あっちもウチが嫌いだと思う。
ウチはそいつから逃げるために、おんなじ中学に行かないためにわざわざ中学受験してこの中高一貫校に来たのに。
あっちも、この学校を受けた。
そんで、受かってしまった。どっちも。
そいつの名前は、イチカと言う。
イチカは、小学四年生のときに小学校に転入して来たヤツだ。
眼鏡におさげ、一人称は「私」の典型的な隠キャのくせに人には好かれやすいタチだった。
当時のウチは、一軍で、学校の中心だった。どっちかといえば。
そんなときに現れて人気を掻っ攫っていったイチカは、この学校に来た時から敵視してた。
でも、それだけだったら大嫌いになったりしなかったはずだ。
ウチらの関係が変わってしまったのは、あの日のことがあったからだ。
あの日は、イチカが転校して来て二ヶ月、学校にも慣れて来た頃のどしゃ降りの六月のことだった。
その日、ウチは友達のアヤナと帰りにコンビニで買い食いしようと決めていた。アヤナ以外にも、同じグループのマナやカコを連れて。
それを、イチカに見られた。
隠キャで融通のきかないイチカのこと。
すぐ次の日、センセーにチクられた。
案の定、ウチはセンセーに呼び出された。
そう、ウチだけ。
他にも、アヤナとかマナとかカコとかいたのに、怒られて、全校集会で全校生徒の前で謝罪させられたのはウチだけだった。
全校集会でステージの上から見えたイチカの、あの憎たらしい笑みは一生忘れない。
それから、クラスのみんなはウチを仲間はずれにする様になった。
誰も、味方にはなってくれなかった。
全員、大っ嫌いだった。
あのクラスの中心にいたイチカは、もう、一生許さないと誓った。
「…このー?ミコノー?ミコノ!」
はっ。
そう、此処はもうあの教室ではない。
中高一貫校の中学部、一年二組の教室だ。
目の前にいるのは、中学校で新しく友達になったカスミ。…あの憎たらしい笑みを浮かべた、イチカではない。
「うん、どうしたの?」
「…大丈夫そう?あんまり辛かったら保健室行くんだゾ。あ、そうそう。『この街文化祭』のことだけど、ミコノの絵画出るんでしょ?」
そう。ウチらが今話してるのは、毎年恒例行事、この街で開催される『この街文化祭』のこと。
今年は何と、ウチの作品が提出されるんだ!
「そうそう。でも、今までと作風が全然違うから、びっくりされるかもー?そうゆーそっちこそ、部で演奏するんでしょ?楽しみにしてるよ!」
カスミの部活、吹奏楽部も演奏するらしい。
「えーちょっと〜プレッシャーかけないでよ〜緊張するじゃん」
カスミは、周りを盛り上げるのが得意。
だから一緒にいて、居心地が良い。
「見にくるんならいいけど、ガッカリしないでね!あ、もうチャイムなるよー。次の授業って技術でしょ、早く移動しないと!じゃあね!」
ウチは移動しながら、絶対に吹奏楽部の演奏は見に行くと決めた。
そんなこんなであっという間に時は過ぎ、『この街文化祭』当日!
ウチは、早速吹奏楽部の演奏を見るために市民文化会館へ向かった。
吹奏楽部の演奏は素晴らしかった!
全員の息が合っていて、嗚呼、この感動を誰かに伝えることができればどんなにいいだろう!
最後の曲、友達がいる前の方の列ばっかり見ていたウチは、後ろの方も見てみようと思った。
最後列、一番端っこにいたのは。
髪をベリーショートに切り揃え、随分と日焼けして、眼鏡はもうかけてないけど、すぐわかった。
「イチカ…」
あの時とは全く違う姿で、トランペットを吹いていた。
今は不思議と、見ていて悪くないと思う。
「ありがとうございました!」
「「「ありがとうございましたー!」」」
演奏が終わって、みんながお辞儀をする時、イチカが、ウチに向かって微笑んだ…様な気がした。
もう舞台発表に興味はないので、文化会館の外に出る。
そしたら、誰かに話しかけられた。
「ミコノ!どうして…」
「イチカ…?」
「ミコノ、だよね?…来てくれないかと思ってた。」
「カスミに、誘われたから。でも、イチカが吹奏楽部だってことは聞いてなかった。」
「そっか。…ごめん、ミコノ。小四のときのこと、ずっと謝りたくって。もう、遅いかもしれないけど…」
「イチカ…」
そっか。イチカはイチカで、反省してたんだ。…それをウチが、ずっと避けて来たから…
「こっちこそ、ごめん。…イチカ、かっこよかったよ。びっくりした。」
「ホント⁈良かったあ…もうホントどうしようって考えてた…」
なんだかいい雰囲気になりつつあるところで、何かが飛び出て来た。
「お、いいじゃん!仲直り、仲直り!」
「「カスミ!」」
え、ってことは、もしかして…
「全部全部、カスミの作戦だったの⁈」
「あったりー、ミコノ!」
カスミはへへっと舌を出して見せた。
「うまくいって、良かった」って。
「アタシは、ミコノの友達でも、イチカの友達でもあるんだから!仲は取り持ってあげないとね!」
…そういうことか。カスミは、ウチらの関係を心配してくれて。
ありがとう、カスミ。そしてイチカ。
口に出すには小っ恥ずかしいことを、ウチは心の中でそっと言った。
天気予報通りの、からっと晴れた青空だった。
はじめまして、castellaです。
ちょくちょく、気が向いたら投稿します。
だいたい短編です。
どうぞ、宜しくお願いします。




