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校内ラジオで恋愛相談をしてたはずが、気づけば学園の美少女たちに言い寄られてた  作者: 尾乃ミノリ


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第47話 海の家「多漁丸」

 白く照り付ける太陽、陸側から吹き付ける熱気、そして人々の活気……。


「きゃはは、ちょっと冷たいよ~」

「ほらほら、もう一発行くぞ~」


 夏のある日、地元の海水浴場はやはり活気だっており、どんな場所にいてもカップルや家族連れの楽しそうな声が聞こえてくる。


 俺、影山翔吾も当然のそんな人々の活気に負けず劣らずのテンションで、この海水浴場を盛り上げる1ピースとなるのであった……。


「苺とブルーハワイのお客様ー?」

「はい、焼きそば2つとフランクフルト3本ですね、合わせて1600円になります!」

「影山、後で足りないシロップあったら補充しといて!」

「了解です!」


 勿論、店員として。


 ♢


「海の家?」

「そう、僕のお友達がやってるんだけど、今年急に欠員がでちゃったみたいで……影山君は言ってくれないかな?」


 とある日のビアンカのバイトも終わり、そのまま帰ろうかと考えていたところ、俺は店長に呼び止められた。

 新作のケーキの試食会かと思っていたら、告げられたのはこんな話だった。


「一応他の子にも声かけてみたんだけど、皆夏は忙しいみたいで断られちゃって」

「はぁ……」

「影山君はいっぱいバイト入れてくれてるからこんな事言うの申し訳ないんだけど、一週間くらいでいいから、そっちの方に移動してくれないかな……?」


 店長は大きな手をギシギシとこすり合わせながら頼んでくる。なるほど、高校生にもかかわらず暇そうにしている俺に白羽の矢が立った、と……。


「まあ、確かに夏休みは暇ですけど……」

「だよね!」

「何ですかだよねって」

「あっ……」


 店長はうっかりという感じで口を抑えた。そのリアクションが一番傷つくんですけど……


「あー、でもほら!うちよりお給料出してくれるみたいだし、無料で海堪能できるから、悪い事ばっかりじゃないと思うよ!うん!」


 最早それはフォローになっていない気がしますよ店長……。だが、冷静に海の家について考えてみる。


 俺に声を掛けるという事はキッチン担当が欲しいんだろう。実際に利用したことはあるが、確かメニューは焼きそばとかかき氷とか、簡単目な奴ばっかりだった記憶がある……。


 色々と考えてはみたが、断る理由がないようにも思える。


「いいですよ、どうせ暇ですし、バイトしますよ、海の家」

「ホント!?ありがとう~」


 こちらを拝み倒してくる店長を軽く制しつつ、試しに脳内で海の家で働く自分をイメージしてみる。


 ……海辺で一人黙々と焼きそばを作る俺の元に、注文しにくる水着のお姉さん。その視線はなぜだか焼きそばではなく俺の顔に向けられている。だが、俺はあくまでバイトに徹する、仕事人に余計な雑念は必要ないからだ。


「こちら、注文の焼きそばです」


 だが、お姉さんたちはパックではなく俺の手を軽く押さえる。


「ねえ、お兄さん暇?良かったら私と一緒に遊ばない?」

「……いえ、仕事中ですので」


 毅然として断ろうとしたが、無下に断るのも申し訳ないかと思って一瞬答えに窮してしまった。


だが、その返答をどう捉えたのか、俺をみてお姉さんは蠱惑的に笑う。そして、顔をぐいっとこちらに近づけて俺の耳元に口を近づける。


「……バイト終わるまで、待ってるから」


 彼女は俺の返事も聞かず、スタスタと自分の席へと戻っていった。

 ちゅるちゅると焼きそばを啜る彼女。最早俺はバイトに集中してはいられなかった……。


「影山君?おーい、大丈夫?」

「……店長、まだ焼きそば作ってる途中ですけど、一旦バイト抜けてもいいですか?」

「……よく分かんないけど、多分駄目だと思うよ」

「でも、俺が行かないと、お姉さんが焼きそばを食べ終わるまでに……!」

「とりあえず、影山君は行けるって伝えとくね」


 スマホを取り出してどこかに連絡を取る店長。待ってろ海の家……!待ってろお姉さん……!



 ♢


 と、思っていた時期が俺にもありました……。


「影山!イカ焼きで来たからそっち持って行って!」

「はい、了解です!」

「後ジュースもついでによろしく!コーラ3にグレープ2のレモン2!」

「うーっす!」


 端的に言うと、舐めてた。


 海の家なんて所詮カフェより規模も小さいし、料理も比較的簡単に作れるものばかりだろうと思っていた。

 だが、その実情は回転率の暴力。客数もカフェとは比べ物にならないくらい多いし、作れるメニューの種類が少ないとはいえカフェのケーキセットなどとは違い、組み合わせは無限大だ。


 しかもずっと焼きそばを焼いていればいいという訳では無く、客によってばらばらな注文リストと現場の状況を考慮して一番効率の良い提供のされ方が求められる。そんな体に追い打ちをかけるように容赦なく照り付ける太陽……。


(これ、ぶっちゃけビアンカよりキツイ……!)


 屋根があるとはいえ外の熱気はある程度そのまま差し込んでくる。鉄板の熱気のダブルパンチが脳に響く。アドレナリンでどうにかなってる感がすごい。


「ふう……」

「影山!ぼさっとしてないで早く調理しな!お前をここに送った村瀬が泣いてるぞ!」


 後ろを振り返ると、すらっと背が高く、ポニーテールにタオルを頭に巻いているお姉さんがこちらに怒声を浴びせてくる。


 この人は海の家「多漁丸」の店長、本宮カオリさん。非常に溌剌とした感じのお姉さんなのだが、御覧の通り非常に人使いが荒い。


「了解です、店長!」

「私の事はカオリちゃんと呼べ!」


 そしてどこぞのアイドルみたく名前+ちゃん付けを要求してくると言うおちゃめな一面も持ち合わせていらっしゃる。おかげさまで俺の夏のロマンス計画は半分つぶれてしまった。


 小さくため息をついて、俺は手早くジュースと焼きそばをパックに詰める。


「13番でお待ちの方ー!」

「あ、はーい、私でーす」


 俺が声を張り上げると、番号札を持ったお姉さんがとことことカウンターに近づいてくる。ビキニ姿のお姉さんが近づいてくる。


「こちら焼きそばとレモンスカッシュですねー、結構熱いんで、気を付けてお持ちください」

「はーい、どうもー」


 間延びした甘ったるい声を出しつつ、お姉さんは焼きそばのパックを受け取った。


「あのー、お兄さん凄くイケボですね~」

「え、あ、そうですか?」

「はーい、正直私的にもめっちゃ好みって言うか~」


 そう言いつつ、多分俺より少し上、大学生くらいのお姉さんは焼きそばをカウンターに置いてこちらに体を寄せてきた。


 ま、まさかこれは……!


 俺の心のセンサーがガンガンに反応し始める。手を一瞬でも止めたら後ろからカオリちゃんにどやされるから、手はあくまで焼きそばに集中しつつ、お姉さんに反応する。


「お兄さん、休憩時間いつからです?私一人で来たんですけど暇で~」

「あ、まあもう少ししたら1時間くらい休憩になるかもですね」

「え、それなら私待ちますよ~」

「え、ホントですか!?」


 マジか、これはワンチャンあるのでは?夢のお姉さんとの海なんじゃないのか!?瞬間的に辺りを見回すが、アイツはいない。よし……今のうちに約束を取り付けてしまえば……!


「じゃ、じゃあ1時間くらいしたら、反対側の浮き輪貸出てるところで落ち合うってのは—————」

「何やってるんですか、先輩」


 瞬間、場の空気が10度くらい下がったように思えた。ゆっくりと視線を動かすと、カウンターに張り付くようにして、半袖Tシャツを着た小柄な少女がこちらを細い目で睨みつけていた。


「あ、木南……」


 しまった、接客してると思って完全に油断した。ビアンカの看板バイトは太陽に負けないくらいまぶしい営業スマイルを浮かべる。


「お客様、あちらのお席空きましたので、よろしければそちらにどうぞ」

「あ、はい、どうも……」


 木南のただならぬ気配を感じたのか、お姉さんは素直に木南に示された席へと座りに行った。


「あっ、予定は……」


だが、俺の声に振り返ったのはお姉さんではなく木南だった。殺されるんじゃないかって勢いでその目に光は無い。


「先輩……浮ついてないでちゃんと仕事してください」

「はい……」


 くるりと俺に背を向ける木南。背中にでかでかと「多漁丸」という文字が見える。


 前門の後輩に後門の店長。見事なまでの挟み撃ちで、俺の海の家でエンジョイ計画は早くも幸先が怪しくなるのであった……。

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