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校内ラジオで恋愛相談をしてたはずが、気づけば学園の美少女たちに言い寄られてた  作者: 尾乃ミノリ


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兄妹って……

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでしたー」


 北原が素麺を喉に詰まらせたりなどのトラブルは一応あったものの、それからは別段大した事件めいたものは無く、俺達はほぼ同時に昼食を終えた。


「ごちそうさまでした」


 北原も軽く目を伏せて軽く手を合わせる。長いまつ毛がふぁさりと覆いかぶさる姿は、何かに祈っているような、そんな美しさを持ち合わせていた。 


 灯も似たように手を合わせたかと思うと、勢い良く席から立ちあがった。


「よし、じゃあご飯も食べ終わったし、柚葉さんも一緒にゲームする?」

「あほ、お前は食器洗うの手伝え」

「うえー、お兄ちゃんやってよー」

「うぇーじゃない、お前料理出来ないんだから、この位は手伝ってもらわないと割に合わん」

「ちぇー……」


 普段であれば『私は試食係だから!』とかなんとか言って食器洗いから逃げ出そうとする灯も、北原の前という事もあってか、今回ばかりは大人しく引き下がった。


 これが北原効果か……グッジョブ、北原。


 俺が心の中でサムズアップをしていると、北原もがたりと立ちあがった。


「あ、私も手伝うわよ?」

「いいよいいよ、客人は休んでてくれ」

「でも……」

「ウチの洗い場狭いから3人も入ったら窮屈だし、北原はソファーにでも座っててくれ」

「そ、そう……?」


 そこまで言うと北原は渋々と言った表情でソファーに座った。俺もそのまま皿洗いに移行する……。


 が、暫くして違和感に気づく。リビングの方から一切物音が聞こえてこないのだ。スポンジに洗剤をかけなおしながらふと後ろを向くと、ソファーの端っこに座って石像の様に動かない北原……。


 ……いや、まあ、そりゃそうか。来たことない相手の、しかも男子の家に放置されるなんて、緊張するに決まってるわな。だが、俺もちょうど今手が離せない。


 だが……


「何か柚葉さん固まってるね、私声かけてこようか?」

「うーむ……」


 皿を俺の元に運びつつ、ちらりとリビングの方を窺っている灯。まるで自分がどうにかしてやろうと言いたげな雰囲気だが、彼女が北原と遊びたいだけなのは目に見えている。


 だが、それで北原を一人にするのは申し訳ない……。


「しゃーない、構ってもらって来い」

「はーい、遊んでもらってきまーす!」


 言うや早いや、灯はさっきまでの3倍くらいのスピードでソファーへと駆け抜けていった。


「柚葉さーん、一緒に遊びましょー!」


 これが良い選択かは分からないが、まあ適当に話をつなげてもらえばいいだろう……。


「柚葉さん、折角うちに来たんですし、なんかします?」

「あ、いえ、大丈夫。影山君がお皿洗い終わったら帰るから……」

「そんな私たちの長年の仲に気遣いなんて不要ですよ!」

「長年って……初対面よね?私達……」

「細かい事はいいんですよ、あっ、そうだ柚葉さん、ちょっと面白いものがあるんですけど」

「いえ、だから私はもうお暇するから……」

「ふふふ、これを見ても同じことが言えますかねぇ?」

「こ、これは……っ!」


 初めはがやがやと揉めていたようだったが、次第に声は聞こえなくなっていった。

 ちらっと見た感じ二人で何か熱心に覗き込んでいるようだった。


 ふう、仲良くなったみたいで一安心……。


 俺もそのままちゃっちゃと皿洗いを終えて、手を拭きつつリビングへと戻っていった。


「これ……中々凄いわね……」

「そうでしょうそうでしょう?」


 だが、二人は俺が戻ってきたのにも気づかず、熱心に何かを覗き込んでいる。


「二人して何見てんだよ……おっ!?」


 俺の目の前に広げられていたのは……大量の俺の写真。

 うちの家族は俺達兄妹の写真を大量にとっているのだが、俺の成長記録のアルバムが広げられていた。


 だが、灯は一切気にしている様子はない。短パンで肩に携帯ラジオを掛けている俺の写真を指さす。北原の視線もそちらに移る。


「それで、これがアンテナ持ってラジオ電波受信しに山登ってるお兄ちゃんですね」

「なるほど……この頃からラジオ好きだったのね」

「ちょいちょい待て待て!」


 当人ガン無視で熱心に写真を見続ける二人からそのまま本を奪い去る。


「あっ……」


 名残惜し気に声を上げる北原。見せるわけ無いだろ恥ずかしい。


「お風呂の写真……」

「見せるわけ無いだろ恥ずかしい!」


 ほんとに何しようとしてるのこの人!?嫌な震えが足元から登ってきて、無駄に分厚い写真集を絶対に手離すまいと脇にかける力が強くなる。


「まあ、そんな冗談は置いておいて」

「お前の冗談は随分火力が高いなともりぃ……」


 薄目でこいつを引っ張り出してきた元凶を睨みつけるも、あくまでけろっとした表情だ。お前のアズキバー全部冷蔵庫に移すぞコノヤロウ……


ピコン

 

 そんなことを企んでいた、丁度そのタイミングで灯のスマホが鳴った。机の上においていたスマホを開き、何やら操作する。


「あ、私友達に遊びに行かないかって誘われちゃった……」

「おお、そっか。じゃあ出かける準備しないとな」


 俺も腰を浮かせたが、灯はスマホを持ったままためらいがちな表情。普段なら喜び勇んでいくところだろうが、灯は少しためらいがちな表情を浮かべている。


「いやぁ、でも柚葉さん来てくれてるし……」

「そんな、私に気を遣わなくて大丈夫よ?折角の夏休みなんだし……」


 パタパタと手を振る北原。すっと立ち上がり、ワンピースの裾を軽く整える。灯も少し迷ったらしいが、北原の姿を見て決心したらしい。少し笑顔を浮かべてスマホに返信を打ち込んだ。


「よし、それじゃあ私準備してくる」

「場所は?」

「市民プール。お兄ちゃんはどうする?」

「俺はこのままでいいよ」

「このまま……?」

「オッケー、りょうかーい!」


 小首をかしげる北原。灯は俺の返事を聞いて勢いよく廊下へと飛び出していった。


 俺と北原が二人残されて、あんなにも騒がしかったリビングは急に静寂に包まれる。


「悪いな北原、折角来てくれたのに」

「いえ、そろそろお暇しようと思ってたから、気にしないで」


 北原は多少余裕が出てきたのか、いつもの落ち着き払ったトーンだった。


「それにしても灯すごかっただろ。何か変な事されてないか?」

「いえ……距離感が近くてびっくりしちゃったけど、それだけ」

「あはは……アイツ普段はもうちょっと距離感とか見極めれるタイプなんだけどな、よっぽど北原の事が気に入ったんだろ」

「そ、そう……」


 素直に伝えると、北原はなんだか恥ずかしそうに目をそらした。彼女の場合、人から好かれこそしても遠巻きに眺められるのが精々だっただろうしな……。こういうグイグイ系は慣れないんだろう。


「にしても、アイツももっと俺への対応が優しくなればいいんだけどな……」


 いくら懐いたとはいえ、北原へのテンションと俺への対応が大違いに見える。だが、北原は満足げににこりと笑った。


「でも、多少生意気言えるくらいがちょうどいい距離感じゃないの?」

「そうかねぇ……」

「ええ、少なくとも灯ちゃん、影山君の事はちゃんと大切だと思うわよ?」


 それならもっと俺に優しくしてくれてもいい気はするが……。主に家事とか手伝ってほしい。だが、それを北原に言っても仕方がないので黙っておく。


「まあ、灯はあのタイプだからな、北原が嫌だったらちゃんと嫌だって言ってくれていいんだぞ?」

「あーいや、それに関しては全然」

「そうか?」

「ええ、なんて言うか、妹が出来たみたいで……」


 と、そこまで言ってから、北原は俺の顔をじっと見たままフリーズした。そして、そのままの格好で元々赤かった顔がさらに朱に染まっていく。


「い……今のはそういう意味じゃなくて!その、妹が出来たって言っても血縁的なあれじゃなくてあくまで比喩表現というか、さっきお昼ご飯の時のが咄嗟にフラッシュバックしたというかだからその勘違いしないでくれると嬉しいと言うか……!!」

「ど、どうした突然?」


 突如顔をそらしてペラペラと話し始める北原。なんだなんだ、何がトリガーだったんだよ今の?


「……ご、ごめんなさい。取り乱したわ……」


 相変わらず呼吸は荒いが、冷静さは取り戻した様子。


「まあ、兄としては妹とは仲良くしてくれると嬉しい、な……?」

「え、ええ。灯ちゃんとは清い関係を続けさせてもらうわ」


 なんだかまだ動揺しているようにも見えるが……まあいいや。


 その時、どたどたという騒がしい音と共に、誰かが階段を駆け下りてくる音が聞こえてくる。


「お、灯も準備終わったっぽいな……じゃあ俺も出るか」

「影山君は、これからバイト?」

「ん?いや……」


 不思議そうに首をかしげる北原。俺が訂正しようと思ったら、ちょうど灯がリビングに続く扉を開いた。


「こっちは準備終わったよー」

「よし、じゃあ行くか」


 灯の姿を確認して、俺は手に持っていたアルバムをもとの位置にしまった。


「ちょ、ちょっと待って」

「ん、どうした北原?」

「その、まさかとは思うけど……影山君も一緒に妹さんとプールに行くの……?」


 恐る恐ると言った聞き方の北原。その台詞に俺と灯は思わず顔を見合わせて……、二人で大爆笑した。


「ちょ、ちょっと柚葉さん!お兄ちゃんと一緒にプールとか冗談きついですよ!」

「そ、そう?」

「そりゃそうだろ、中学生がプールで遊ぶのに俺がついて言ったら変だろ」


 二人で顔を見合わせて爆笑する俺達。当たり前だろ、妹のプールに兄同伴とか完全にブラコンシスコン拗らせすぎだろ。


「なるほど、じゃあ影山君は別のどこかに出かけるのね……」

「いや、灯を送っていくけど」

「……ん?」


 突然混乱した様子の北原。指をこめかみに当てて何か悩んでいる。


「あの……一応確認なんだけど」

「どうした?」

「市民プールって、ここから歩いて15分くらいよね」

「そうですね、だから突然呼ばれても大丈夫です!」

「……だけど、影山君が送ってあげるのね」

「まあ、道中何があるか分かんないしな」


 北原は俺達の返事を聞いて更に混乱した様子だったが、何かに折り合いをつけたようにぎこちない笑みを浮かべた。


「……随分、兄妹仲がいいのね?」


 北原の質問に、俺と灯は顔を見合わせる。そして、同時に北原の方を向いた。


「「いや、兄妹ってこんなもんじゃないか?(ですか?)」」

「……そ、そう」


 曖昧に笑う北原には、何故か戸惑いの色が見えた。

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