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校内ラジオで恋愛相談をしてたはずが、気づけば学園の美少女たちに言い寄られてた  作者: 尾乃ミノリ


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影山家の食卓

 季節は7月、冷房のお陰で涼しい室内。最近買い替えた冷房は静音が売りなだけあって非常に快適だ。そんな中で、うちの食卓ではずるずるとそうめんを啜る音だけが響き渡っていた。


 いや、そうめんを啜る音だけというのは語弊があったな。


「柚葉さん柚葉さん!このそうめん美味しいですね!」

「え、ええ、そうね……」

「……」

「あ、柚葉さん!赤いそうめんありますよ!いります?」

「あ、いや、別に……」

「食べてくれないんですか……?」

「……いえ、頂くわ」

「……はぁ」


 どうしてこうなった……


 にっこにこで赤いそうめんを渡す妹を薄目で見ながら、俺はチャーハンを一匙掬うのだった。



 ♢


 話をしよう。あれは36万……いや、20分くらい前の事。いつになく慌てた様子の灯に連れられて玄関先へと向かった俺が、水色の服に包まれた北原と邂逅したときにさかのぼる。


「北、原……?」


 俺があっけに取られていると、北原は口元を木箱で隠したままサッと目をそらした。


「あの、その……お母さんにこないだお出かけした話をしたら、お礼持って行きなさいってうるさくて……、それで、これ……」


 途切れ途切れになる北原から木箱を受け取る。


「うお、お高いそうめんだ……」


 俺の陰に隠れていた灯がひょこっと顔を覗かせて、ぽつりとつぶやいた。

 北原母からの贈り物は、スーパーでも売ってるワンランクお高いそうめん……その、高級版。

 桐箱の重みがずっしりと俺の両手にのしかかる。


「いや、こんなの貰えねえよ、元はと言えば俺が巻き込んだわけだし……」

「その、お母さん張り切っちゃって、絶対渡して来いって言われたから、是非、貰ってほしい……」


 桐箱が無くなったせいか、北原は所在なさげにしている。

 正直俺としてもこんなの貰う程の事はしていない。どう考えてもオーバーだ。


 ……だが、一度受け取ったものを突っ返すのはそれもそれで申し訳ない。わざわざここまで来た北原を成果なしで帰すのもな……。


「……じゃあ、ありがとう。受け取っとくわ」


 不安だったのか、北原はぱっと顔を明るくさせる。


「あ、うん。じゃあ、そういう事で……」


 重たい桐の箱は譲渡され、手ぶらになった彼女はそのまま回れ右をする……。


「ちょーっと待ったぁ!」


 しかし、うちの妹がその状態にストップをかけた。北原もびくっと体を硬直させて振り向く。


「うわっ、これすごい高いそうめんですよね!私こんなにお高いそうめん初めて見ました~!ええと、北原さんですよね?ありがとうございます!」

「あ、いえ……」


 初対面の灯に北原は明らかに動揺している様子。だが、灯はそんなのお構いなしに畳みかける。


「あ、自己紹介が遅れました!私、この人の妹の影山灯って言います!」

「あ、どうも……北原柚葉です……」

「おい、この人ってなんだよ……イデッ!」


 こいつ……思いっきり足踏みやがった……。だが、隣で悶える兄なんていないかのように、灯はグイっと体を北原の方に近づける。


「なんか、話を聞く感じお兄ちゃんがお世話になったみたいですよね?」

「あー、ええ、この間縁あって一緒にエミプラスまでお出かけして……」

「エミプラス!お兄ちゃんがこんな美人さんと一緒にお出かけなんて凄いねぇ!」

「何がだよ、別に友達なんだから普通だろ」


 灯に踏まれた足を軽くさすっていると、北原は少し顔を曇らせた。


「そ、そう……友達……」

「あれ?なんか歯切れ悪いですね」

「い、いえっ!友達、そう!友達なんです、私と影山君!」

「……ふーん」


 北原のリアクションを見て、灯は手を顎に当てて何か考え込むような仕草をする。その様子を見て北原はぎこちなく笑みを浮かべた。


 まあ、初対面でこんなグイグイ来られたら北原じゃなくても怖いわな。俺がフォローを入れるか……。


「おい、北原も暇じゃないんだ。挨拶はその辺に……」

「いやーこんなお高いそうめん貰っちゃって、庶民派な影山家的には食べ方分かんないね!」

「いや、別にそうめんなんだから普通に食べれば……うっ」


 こいつ、さっきより強く踏みやがった……。思いっきり睨みつけるも、彼女はあくまで笑顔で北原の方を見ている。


「ちなみに北原さん、お昼はもう食べました?」

「あ、いえ、まだだけど……」


 北原の返事を聞いて、灯はぱあっと顔を明るくして手を合わせた。


「奇遇ですね!ウチも今丁度お昼にしようとしてたんですよ~」

「は、はぁ……」

「だから、良ければ北原さんも一緒にご飯食べていきませんか?」

「おい灯、勝手に誘っても迷惑……うぐっ」


 コイツ、さっきより(略)しかも今のは思いっきり体重が掛かっていた。まるでいいから黙ってろと言わんばかりの勢い……、俺が何したって言うんだ。


「ね?どうですか北原さん!こんな良いそうめん私たちだけで食べちゃうのもったいないですし!」


 北原は少し考えたそぶりを見せたが、最終的には目をキラつかせる灯に押し負けるような形で頷いた。


「じゃ、じゃあご相伴にあずかろうかしら……」

「是非!そうと決まればささ、上がってください!」


 ニコニコで北原を案内する灯、おい、どうすんだよ俺もうチャーハン作り始めてるぞ……。

 呆れる俺に、灯はこちらを振り返り満面の笑みを浮かべた。


「それじゃあお兄ちゃん!そうめんチャーハンセット!3人前ね!」


 どんな食い合わせだよ。見た事ねえよそんなセット。


 ♢


 そして、今……。


「ふふふ、美味しいですね~、柚葉さん」

「え、ええそうね……」


 俺が調理しているときに二人で何か話していたようなのだが、その時何を話したのか、灯はなぜか随分と北原に懐いた。


 さらに、灯の発案により席替えが発生し、普段俺が座っていたはずの席は今や北原のポジションとなり、灯をはさんだ三角形が形成されて、俺と北原は向かい合うような格好となった。。


「うーんいいしょっぱさ、やっぱり美味しい素麵は違いますね~」

「塩味に関しては麺つゆの問題だろ」

「……むー」

「それにチャーハンも引き立ててる!流石おいしい素麺ですね~」

「チャーハン引き立てる素麺ってどんなスーパー麺類だよ」

「ちょっとお兄ちゃん黙ってて」


 ツッコミを入れる俺に、灯は冷たい視線を向けてくる。が、すぐに満面の笑みで視線を北原の方に移す。


「あ、柚葉さん氷いります?うちの冷蔵庫、製氷機無駄にデカいんでいっぱい入れれますよ~」

「あー、いえ、お構いなく……」


 苦笑いしながら遠慮して、北原はパクリとチャーハンを口にした。


「……影山君、料理上手なのね」

「ウチ両親共働きだからさ、最低限は作れるよ」

「そ、そう……凄いわね……」


 褒められているのに、なんだか北原はガックリと肩を落とす。


「あ、もしかして口に合わなかったか?それとも苦手な物入ってたか?」


 そう言えば確認をし忘れていた。完全にミスった……。北原はハッとした表情でぶんぶんと手を振る。


「い、いえ、そうじゃ無くって!なんと言うか……美味しいから、逆に敗北感というか……。その、お弁当イベント的な……」

「お弁当イベント?」


 なんだそれ、おかず交換会的なあれか?北原となら普通にやってみたいが……


「あー、気にしないでいいですよ柚葉さん、お兄ちゃん家事スキルだけは高いんで」

「そ、そうね……」

「お前は逆に家事をしなさすぎなんだよ」

「お兄様いつも助かってます~」


 急ににっこり笑顔でこちらを見つめてくる灯。これでも中学じゃ憧れの生徒会副会長様らしいから驚きだ。

 そんな俺達のやり取りを見て、北原は気まずそうに俺達に交互に視線を向けた。


「その……良かったのかしら?折角の妹さんとの水入らずのお昼ご飯を邪魔しちゃって……」

「別に、気にすることないぞ」

「そうですよ!私とお兄ちゃんなんて水入らずどころか水流まくりですし!流れ過ぎて最早濁流ってレベルですから!」

「どういう意味だそれ……」


 訳の分からないことをペラペラと話し続ける灯。


「それに、私の事は妹さんじゃなくって灯って読んでください!もしくはともちゃんとか、ともりんとか、ともっぺでもいいですよ!」

「あ、じゃあ、灯ちゃんで……」


 ぐいぐい攻めまくる灯に北原は完全にタジタジになっている。見かねて灯の頭を軽く叩く。


「やり過ぎだ灯、北原引いてるだろ」

「えー」


 不満そうな顔をしながらもやり過ぎた自覚はあったのか、灯はすごすごと引き下がっていった。


「悪いな、騒がしい妹で」

「いえ……」


 灯が離れて心に余裕が出てきたのか、北原は口角を小さく上げた。


「兄妹仲がいいみたいでうらやましいわ」

「そうか?うるさいだけだぞ?」

「それを言うならこっちのセリフですー」


 対抗するように灯はべっと小さく舌を出す。それを見て北原はまた少し笑った。


「いえ、私は一人っ子だから、灯ちゃんみたいな妹がいたら楽しかっただろうな……って」


 ぽつりとつぶやいてから恥ずかしくなったのか、北原は誤魔化すように素麺をざるから一束掬った。


 しかし、我が妹、影山灯はそんな北原をじっと見つめている。そして何を考えたのか、素麺を啜っている北原を見ながら満面の笑みを浮かべた。


「でもぉ私、柚葉さんにならお姉ちゃんになってもらっていいですよ?」

「ぶふぉ」


 灯の言葉に素麺を啜っていた北原は吹き出しそうになる。が、すんでのところで堪えたらしい。


「だ、大丈夫か北原?」

「え、ええ、ちょっと気管に入っただけ……」


 そうは言いつつも動揺しているのか、北原がすぐそばにあったコップを手に取りぐいっと飲む……


「って、それ……!」

「~~~~!!!!」


 が、俺の制止もむなしく北原は麺つゆの入っているコップをグイっと飲んでしまう。一度ガクッと体を硬直させたかと思うと、すぐさま咳き込み始めた。


「大丈夫か北原!ほら、水飲め!薄めろ!」

「あ、ありがとう……」


 口元を隠しながら咳き込む北原に今度はちゃんと水の入ったコップを渡す。そんな様子を見ながら灯は納得したように小さく頷いた。


「なるほど、お互いそういう感じか……」

「灯、お前も素麺啜ってないで何か拭くもの持ってこい!」

「は~い」


 適当な同意をはさんで、灯は一人タオルを取りに行くのだった。


 ……何故か、弾むような足取りで。


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