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校内ラジオで恋愛相談をしてたはずが、気づけば学園の美少女たちに言い寄られてた  作者: 尾乃ミノリ


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my new gear……

「はい、それじゃあ夏休みになりますが、最大限楽しんで、だが羽目を外さないようにしてください」


 最後のラジオが終わってから数日たって、あっという間に一学期も最後の日。去年も聞いたような毒にも薬にもならない言葉を右から左に聞き流しつつ、俺は漫然と1学期最後の時間を過ごしていた。


 夏休みなぁ……。部活出来ないしなぁ……。


 普通の部活ガチ勢なら夏合宿とかで部活への熱は途絶えることなく過ごせるんだろうが、こちとらレギュラー部員ならぬイレギュラー。合宿をしようにも合わせる相手も泊まる宿もない。


 去年は先輩たちに半ば埒られて、ラジオの電波すら届かない場所で、宇宙人と電波交信するとかいう気の触れた合宿を強行されたのだが、今となってはそれすら懐かしく感じる。


「とまあ、そういう訳だから、君たちとは一か月会わない訳だが、元気にしてください。夏休み明けに会えるのを楽しみにしています……。じゃ、日直さん号令お願い」


 そんなことを考えていたら、いつの間にか先生のお話は終わっていた。そうか……1か月この学校ともおさらばか。

 同級生はともかく、先生たちとは本当に1か月会うことは無いだろう。頭に浮かぶのはあの焼きそばパンジャンキーの先生……。夏こそちゃんと栄養のあるもの食べなきゃだめですよ、先生……。


「気をつけー、礼」

「ありがとうございました!」


 不健康街道まっしぐらな先生に心の中で別れを告げ、万感の思いを込めて1学期最後の礼をした。


「あ、影山君はこの後真城先生の所に行ってください」

「……」


 お辞儀をした俺が、ごすっと勢いよく頭を机に打ち付ける音が教室に響き渡った。



 ♢


「俺の感傷を返してください」

「何だよ開口一番」


 俺が折角センチメンタルな気分になっていたにもかかわらず、先生は相変わらずの雰囲気だった。俺の姿を見て、はぁと小さくため息をついた。


「抜け殻みたいになってないかと心配したが、その調子じゃ大丈夫そうだな」

「ああ、そういう……」


 どうやらこの人なりに心配してくれていたらしい。なんだかんだ生徒想いの先生だな……。


「去年は放送部も合宿とかやってたけど、今年は何かやるつもりはあるのか?」

「あれをもう一度やるとか正気の沙汰じゃないですよ……」

「まあそれもそうか」


 去年引率だった先生はけらけらと笑う。ちなみに本人は酔って覚えてないだろうが、真城先生はUFOを追う先輩達と一緒に外星人のイケメンを追っていた。


 ……改めてなんだよイケメンの外星人って、メフィラス星人とかか?


「でもなんだかんだお前も楽しんでたけどな、随分はっちゃけてたし」

「それは先輩たちにテンションを合わせないとやってられなかっただけです」


 それか夏の魔法とかにやられただけだ。恐るべき、サマーマジック。


「ふーん、どうだかねぇ……」


 だが、先生は俺の主張を軽くいなして、椅子の背にもたれてグイっと背筋を伸ばす先生。


「それで、今日は何の用事で呼んだんですか?」

「んー?教え子に別れのあいさつでもしようと思っただけだが?」

「……帰ります」

「待って待って、冗談だよ!新任ジョーク!」


 席に座ったままバシバシと俺の胸辺りを叩いてくる先生。ったく、教師とは思えんテキトーっぷりだな……。


 俺が白い目を向けていることも一切気にする様子も無く、先生はポチポチとスマホを操作した。


「これで……よしっ、と……」


 丁度そのタイミングで、俺のスマホが鳴る。見ると、「Izumi Mashiro」と書かれたsドレスと、何かのページのリンク……


「ラインを教えてもらおうと思ったんだがな、そういや去年登録してたわ」

「ああ、それこそ合宿の時ですよね」


 画面に表示されているアイコンは恐らく先生の後ろ姿。見覚えは無いから、多分去年登録した時とは変わっている。


 ……うっかり見えてしまったプロフィール欄に関しては、ここでは言及しないでおく。


「じゃあ、そのリンクを踏んでくれ」

「……怪しいサイトじゃないですよね?」

「お前は私を何だと思ってるんだよ」


 呆れたようにため息をつく先生。いや、あなたその資格ギリギリ無いからね?正直ここからどんなサイトが出てきてもおかしくはない。


 とはいえ流石にウイルスが仕込まれてるなんてことは無いはずだ。このまま帰るわけにもいかないし、大人しくそのリンクを踏む。すると、そこに開かれたのは……


「……トイッター?」


 俺のスマホに開かれたのは有名SNSの画面。老若男女、全ての世代に愛されているコミュニケーションツール。そのとあるアカウントのプロフィール画面だった。


「あの、先生これは……」

「ん?やっぱり今は情報化社会だろ?うちの放送部も積極的に活用していくべきだと思ってな。夏限定で影山もSNSでの恋愛相談をやったらどうだと思ってな」

「ああ、なるほど……」


 アカウントの固定された呟きの所には、とある質問サイトのリンクページが張られており、おそらくここから恋愛相談などの質問が出来るようになっているのだろう。


「お前はラジオがなくちゃ倒れるマグロみたいな奴だろ?夏休みの間だけでも、こういう形で生徒の質問を募集したらいいリフレッシュになるんじゃないかと思ってな」


 自信満々に頷く先生。確かにSNSを使って質問を募集、そして答えるこのシステムは多少なりとも俺のラジオ欲を抑えてくれるものかもしれない……。


 だが、問題はそこではない。俺の視線はゆっくりと上に移動していく。固定つぶやきから、プロフィール、そして、肝心のアカウント名に……


 明仁高校放送部【公式】~Kの真夏の出張恋愛相談所~


「ってなんですか、このアカウント名!?」


 非常に画期的なアイディアのはずだったこの質問箱システムのメリットを叩き潰して余りある程、信じられないくらいダサいアカウント名。


 その辺の怪しいお店だってもうちょいまともな名前してるぞ?行ったこと無いけど!しかし、先生は何のことだかさっぱりなご様子。


「タイトル……ああ、Kってのは影山のKな」

「そこじゃないですよ!なんですか出張恋愛相談所って!」


 余りに昭和ネームが過ぎるだろ!そう言いかけたのをぐっとこらえて詰め寄るも、先生は平然とした様子だ。


「分かりやすくていいじゃないか」

「分かりやすさ以外全部捨ててるから問題だって言っているんです!」

「何だよ、抜け殻みたいになってるんじゃないかと心配して作ってやったんだぞ?感謝こそすれ怒られる謂れは無いな」


 ……まあ、確かに言われてみればそうだな。別に名前は後から変えればいいわけだし。


「ありがとうございます……」

「よしよし、じゃあアカウント名とパスワード教えるからな」


 先生はぽちぽちとスマホを操作して、再びスマホが震える。送られてきたパスワードを入力すると、管理者の画面が開かれる。


 よし、後は名前をいじれば……、いじれば……?


「あの、先生……」

「どうした影山」

「このプロフィール、変えられないんですけど」

「ん?ああ、何かバグって変更できなくなってたな」

「それ先に言ってくださいよ!」


 いきり立つ俺を、先生はまあまあと宥めた。


「もう既に呟いてるし、今更遅いだろ。あ、ほら、#Kの夏恋ラジオって名前で拡散してるし」

「それなんのフォローにもなってないです……」

「お、ダブルミーニングか、上手いな」

「感心してる場合かー!」


 エアコンフル稼働の職員室に俺の悲鳴が響き渡る。


 影山翔吾、16歳———部活の公式SNS(へんなおもちゃ)を手に入れました。


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