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校内ラジオで恋愛相談をしてたはずが、気づけば学園の美少女たちに言い寄られてた  作者: 尾乃ミノリ


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最後のラジオにこの夏もなったな

 お昼の時間。今日も今日とて俺は週に一回のイベントに臨むこととなった。


「あれから別に何もなかったな……」


 部活調査があったのが数日前、特例的に放送部は生徒会長による調査が入ったが、そこでひと悶着があったりなかったりした。


 だが、その後部活動調査で放送部が問題になることも無く、俺は平穏な学校生活を送っていた。


「いいや、そんなの考えてもしょうが無いし」


 集中すべきなのは会長の話ではなくラジオだ。わざと口にして雑念を振り払う。

 椅子に座って何時ものルーティーンの様にお便りを眺めつつ、今日のざっくりとした流れを追走する。


 ぺら、ぺら……と紙をめくる音が放送室に反響する。真城先生は今日は来れないらしい。


 色々と聞きたかったことがあったのだが、なんともタイミングの悪い……。


「まあでも、今回のラジオの内容からしたら正解かもな……」


 改めてお便りの内容を見ていたら苦笑いが漏れる。北原にも相談した通り、今週のお便りは夏に負けないくらいアツい。


 間近で聞いてしまった真城先生がどうなってしまうのか……、正直、想像もつかない。そんなことを考えていたら、スマホから放送開始2分前のアラームが鳴った。


「おっと……」


 慌ててスマホを止めて、機材のスイッチを入れて起動する。ウォンと不穏な音を立てながら精一杯廃熱機構が回り始める。その音を聞いていると、次第に俺の心は落ち着いてくる。


 やっぱ放送室はこうじゃなきゃな、新しい機材じゃこの安心感は買えない。一人笑って、スマホの時計を確認する。もう間もなくラジオの開始時刻だった。


「3,2,1……」


 さぁ、今日も始めるか……。


「皆さんこんにちは!7月18日お昼の放送です!


 いやー早いもので、このラジオも今日が1学期最後のラジオとなっちゃうらしいです。ちょっと前に梅雨明けしたかと思ったら、もうテレビでは真夏日とか言っちゃって……時の流れってのは早いですね~」


 ここで一呼吸おいて、ふうと息を吐く。機械が動き始めたせいか、今日も放送室は最高に蒸し風呂している。


 「そう言えば、皆さん夏日とか真夏日の基準って知ってますか?ちなみに僕は最近知ったんですが……、25℃超えたら『夏日』、30℃超えたら『真夏日』って定義されるらしいですよ……

 で、ちょっと僕それについて言いたい事があるんですけど~」


 するすると言い切ってから、俺は大きく息を吸った。


「……日本の夏舐めんなよ!?」


 完全密閉された放送室に、ぐわんと俺の声が軽く反響する。


「……すみません、取り乱しました。いやでも、皆さんそう思いませんか?なんだよ25℃って!こちとら4月でその気温じゃ!高々25℃程度で夏名乗ってんじゃねぇぞ!って気分に最近僕はなってます、ええ。


 あと個人的に思うのは熱帯夜ですね。ちなみに熱帯夜の定義は夕方から朝の気温が25℃超える日らしいです。


 で、僕去年この辺の熱帯夜の日数調べたんですね?そしたら去年は59日あったらしいんですよ、熱帯夜……」


 再び少し沈黙、そして息を吸う。


「ここは亜熱帯か!!!!」


 さっきよりひと際強く反響する放送室。やべ、思ったより声出た。咄嗟にマイクから離れたが、正解だったかもしれない。


「何だよ2か月熱帯夜って!もうここ亜熱帯じゃん!おっかしなー、俺、水谷先生に日本は温帯って聞いたはずなんだけどな……。っていうか熱帯夜って聞くだけで寝苦しくなるから基準変えるなりしてもっといい感じにしてほしいですよね……」


 ひょろ長い地理教師の顔を思い浮かべながら話す。イジってすみません、水谷先生……!


「とまあ、俺の最近の季節への文句は置いておいて、はい!今日も楽しくラジオやっていきたいと思います。リスナーの皆さんから夏に負けないくらい熱々なお便りたくさんいただいてますから!ほんと、屋内で熱中症になりそうですね~」


 とまあオープニングトークもそこそこに、俺はラジオを続けていく。


「さあ、それでは素敵なお便りたくさん来ていますよ!


 まずは一通目、ラジオネーム『麻婆冷や麦』さんから頂きました!


 影山さんこんにちは、いつも楽しくラジオ聞かせてもらっています!今回影山さんに相談したいのは、夏休みの彼女とのデートでどこに行けばいいかです。


 今年僕は人生初の彼女が出来ました!彼女と今年初めての夏休みを過ごすのですが、自分の恋愛の経験値がないせいでどこに行けばいいか分かりません。


 ネットで色々と調べたのですが、それだけではどうにも不安です。なので、是非影山さんからおススメのデートスポットを教えてもらいたいです……とのことですが……」


 そこまで言い切ってから、バレない程度にため息をつく。


 初彼女とのデートを楽しんでもらいたいという気持ちと、それを俺に相談してくれる嬉しさと、悔しさと嫉妬心がない交ぜになっている……。


 いかんいかん、集中集中……。


「そ、それでおススメデートスポットという事ですよね?このようなお便りたくさんいただいてたので、代表して一通読ませてもらったんですが……。そうですね、個人的にはやっぱり、涼しむって言う意味であればプールとか海、他には水族館……とかもいいんじゃないですかね?


 屋外メインの遊びをしようとすると、どうしても気温が高いからそっちに意識が向いちゃって100パーセント遊びに集中できないって言うのがあると思うので、プールみたいな涼しい遊び場じゃ無ければ基本的には屋内で遊ぶのがおススメです!」


 よし、我ながら流暢な喋り……!


 ちなみにこの答えは大量の少女漫画の夏休み回から統計を取らせてもらっている。ネットで調べて同じ回答が出てくると俺の信頼が失われる気がしたからだ。


 ……まあ、「お前の持ってる漫画の水着回だけ貸してくれ」と頼んだ時の妹の視線が割と絶縁一歩手前な感じだったがこの際仕方がない。必要経費だ。


「まあ夏休みはいっぱい遊びたくはなると思うんですけど、ちゃんと熱中症対策だけ気を付けてくださいね~。これはガチですからね!」


 クーラーも禄に効かない放送室に絶賛密閉中の俺が言うんだから間違いない。続いてペラりと紙をめくる。続いてのお便りはいつもの常連からだった。


 ふう、やっぱり常連からのお便りは落ち着くな……。


「はい、というわけで続いてのお便りに行きたいと思います。ラジオネーム、『デルトラの森』さんから!


 影山さんこんにちは、いつも楽しくラジオ聴かせてもらってます。


 以前影山さんには恋愛相談をさせていただいたのですが、あれから気になっている人と少し関係性を進めることが出来ました……。なんと、気になっている彼と先週デートに行くことに成功したのです!」


 一旦区切りをつけて、深呼吸をする。


 ……マジか。


 口では軽く言っているが、なんだかガツンと殴られたような気分だった。丁寧に書かれたデートの3文字は強烈なインパクトを俺にもたらしていた。


 いやいや、私情は禁物だ。あくまでも俺はラジオパーソナリティ、全てのお便りに真剣に向き合うんだ……!


「おお、凄いですね……!確か同じクラスの人だったかな?友達から初めたら?ってアドバイスしたんでしたっけ」



 彼女の思い人が隣の席の人だったことは覚えていたが、あえて言及はしなかった。今日は特にリスナーが多い、身バレには細心の注意を払わなければ……


 ええと、それで……?


「ですがデートをしたというのに、相手の彼はデートの意識だなんて全然してくれていません。それにもうすぐ夏休みだっていうのに、一切予定を聞くことが出来ていません。次につなげるためのいい方法は何かないでしょうか?……とのことですが、」


 何となくお便りにほっとするものを感じつつ、俺は事前に用意した答えをリフレインする。なるほど、次のステップにつなぐためには、だよな……。


「そうですね……、次に誘うぞ!って覚悟を決めてしまったら、前回のお出かけが実は失敗だったんじゃないかとかそういう邪念がかえって浮かんでしまう。

 

 デルトラの森さんはもしかしてですけどそんな負のスパイラルに陥ってるのではないでしょうか?」


 こういう時は意外と2回目とかが緊張するものなのだ。いざ誘おうと思うと、前回のミスが脳裏に浮かんで、かえって二の足を踏んでしまう経験はあると思う。


「それに相手がデートだと意識してくれなくて、デルトラの森さん的にはヤキモキしてしまう所だとは思うんですが……、実はこれ、チャンスかもしれません!」


 マイクを手で覆うようにして、わざと小声なトーンで語り掛ける。


「あくまでデートではなく、友達として一緒に夏も遊ばない?という方向性で誘う……というのはどうでしょうか?


 デルトラの森さんはお相手とまだ友達から初めて間もないはず、だからデートと意識すると余計に緊張してしまうんだと思うんです。


 だからこれはあくまで友達との夏の予定を聞く感覚!デートじゃないと自分に言い聞かせることによって、相手を誘いやすくなるんじゃないでしょうか?


 しかも、友達として遊ぶと聞けば、相手のガードも多少下がると思います。折角友達から始めれたんですから、その期間を大事に育むことを意識してみるのもいいんじゃないかと思います


 ……という感じですが、デルトラの森さん、いかがだったでしょうか?参考にしていただけると幸いです」



 ふう、取り敢えずこんな所だろう……。デルトラの森、頑張れよ!健気に恋にひた走る姿を想像しながら、俺はぺらりと紙をめくる。


 ええと次は……、ああ、この人か。


 お便りの内容をざっと目に通し、端を握る手に力がかかる。今日の頑張り所はここだな……!


「それでは次のお便り行きたいと思います!ラジオネーム『昆布わかめ』さんから頂きました!」

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