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ギルドを追放されて三ヶ月後。
俺は場末の酒場に入り浸っていた。
仕事もせず、フリードからもらった金で朝から晩まで飲み歩く自堕落な日々を過ごしていた。
「ったくよぉ……。目の前でぶるんぶるん揺れてたら見るなって言う方が無茶だろ? おっさんもそう思わねぇかぁ?」
「もういいよ。その話は。何回聞かされたらいいんだ」
酒場の主人は面倒そうにコップを拭き上げた。
「あれ? 話したっけか? じゃあ俺があのフォーレンの発足メンバーだってことも」
「千回は聞いたよ。まあでも災難だったな。今じゃフォーレンはマーティアでトップクラスのギルドにのし上がった。あのフリードって男は勇者の再来だって噂だぜ。この分だと四天王ゴラノールも倒しちまうんじゃねぇか。そうなったら懸賞金は一億だぜ。一億!」
おっさんの言う通りだった。
あれからフォーレンは上位ギルドに入り頭角を現した。
なんでも近々魔王の四天王に挑むらしい。
多くの冒険者パーティーが挑んでも壊滅させられてきた強敵。
それをもし倒せでもしたら大金星だ。
国中の英雄になるのは確実だった。
「……どうでもいいよ。そんなこと。俺には関係ねーし……」
おっさんはつまらなそうにした。
「そうかい。せっかく話振ってやったのに。飲むのはいいけどちゃんと払ってくれよ?」
「いつも払ってるだろ?」
俺はスキルを発動させた。
倉庫からフリードからもらった退職金を出す。
前はあれだけ重かった袋が随分軽くなっていた。
まずい……。
まだもう少しは生活できそうだけど、底がつきかけてる。
飲みって気付いたらすごい額になってるんだよな……。
倉庫で働いてた時は給料日になると若い子達が楽しそうに飲みに行ってたな。
俺は誘われたことないけど。
袋を覗き込む俺をおっさんは怪しんだ。
「おい。払えないなら一日皿洗いだぞ?」
「は、払うよ。払うって」
金貨を一枚取り出すとまた袋が軽くなった。
さすがになんとかしないといけない。
頼る相手がいない異世界で破産したらその先は……。
俺はゴクリとつばを飲んだ。
「………………そろそろ働くか。でもその前にもう一杯。ロックで」
おっさんは呆れながらグラスに酒を注ぎ、氷を入れて俺に渡した。
「まいど」