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 中央ギルドは木造五階建ての馬鹿でかい建物で、そこに多くの冒険者が出入りしていた。

 カウンターには美人で胸が大きな受付嬢がずらりと並ぶ。

 その中の一人にフリードが話しかけた。

「ギルドの申し込みをしたいんですけど」

「かしこまりました。では登録者全員の署名をお願いできますか?」

 ここからが大変だった。

 まず俺を冒険者として登録し、それからギルドを申請。メンバー全員のステータスを記入していく。

 文字が読めず、当然書けもしない俺はみんなに助けられながらなんとか見よう見まねで空欄を埋めていく。

「えっと、武器は使えない。魔法も使えない。特技はなにもない。スキルは倉庫っと」

 なんとか登録を済ませると、受付嬢が読み上げる。

「確認します。フリード・ライヒマン。使用できるのは炎スキルと剣技。

 ミレーナ・ウェルチ。使用できるのは弓と探知スキル。

 カレン・ロバーツ。使用できるのは黒魔法。

 ショーゴ。テライタ。使用できるのはスキル倉庫。

 以上でよろしいですか?」

 フリードは頷いた。

「はい」

「ギルド名はなんにしましょう?」

「えっと、じゃあフォーレンでお願いします」

 受付嬢はくすりと笑った。

「伝説の四英雄の一人と同じですね」

 フリードは恥ずかしそうに笑った。

「あはは……。駄目ですかね?」

「いえ。あなた達が次の伝説になることを願っています」

 こうして俺達のギルド、フォーレンは受理された。

 俺は発足メンバーとなり、正式に認められた。


その足で近くの酒場に入ると、木のジョッキにビールみたいな酒が入ったものが運ばれてくる。

 ジョッキを手にするとフリードは高揚しながら言った。

「俺達のギルド、フォーレンはこれから伝説になる。どんな強敵に負けない最強のギルドにしたいと思ってるんだ。変かな?」

 フリードが照れるとミレーナがクスリと笑った。

「今更笑わないわよ。一度決めたら目標に突き進むんだから」

 カレンもニコニコしながら頷く。

「フリードは昔からそうだもんね。故郷の村でも勇者になるんだって危ないモンスターに立ち向かって行ってさ」

 フリードは頬をかいた。

「あはは……。でも夢だったんだ。自分のギルドを持って、冒険に出掛けることが。それにどうせやるならトップを狙いたい。みんなに頼られる勇者になりたいんだ」

 フリードは熱い眼差しで俺に尋ねた。

「ショー。君も協力してくれる?」

 最初はなにが伝説だ。なにが勇者だと思っていたけど、フリードは本気だった。

 熱にあてられ、俺の胸まで熱くなった。

「もちろんだ。みんなでこのギルドを最強にしよう」

「ありがとう。じゃあフォーレン発足を祝してかんぱーい!」

「「「かんぱーい!」」」

 ジョッキがぶつかり、中の酒が盛大に溢れた。

 酒は冷えてないし、アルコールも低かったけど、びっくりするほどうまかった。

 酔いが回るとメラメラと燃えてきた。

 ここからだ。

 ここから俺は変わるんだ。

 仲間と一緒に異世界で成り上がっていく。

 こいつらとならやれる。

 ずっと報われなかった俺の人生がようやく報われるんだ。

 気持ちが高ぶっていると料理が運ばれてきた。

 すると給仕の女の子が躓いて転んでしまう。

「きゃあっ!」

 料理は俺達の方に向かって飛んできた。

「危ないっ!」

 俺は咄嗟に手を伸ばした。

 すると投げ出された料理が消えていく。

「……あれ?」

 ポカンとしているとフリードが目を輝かせた。

「すごい! ナイススキル!」

「え? あ。そうか。倉庫か」

 俺は右手をテーブルに向け、料理よ出ろと念じた。

 すると先ほどの料理がそのまま出てくる。全部無事だった。

 それを見た周囲の人達は盛り上がる。

「すげえな!」

「どうやったんだ!?」

 どうやったかは俺も分からない。ただ咄嗟にできただけだ。

 だけどフリードは喜んでいた。

「やっぱりすごいよ! そのスキルがあればどんな物でも運べる! とんでもないスキルだ!

「そ、そうかな」

 褒められるなんて久々で、まんざらでもなかった。

「そうだよ!」

 ジョッキを一気に飲み干すとフリードは俺と肩を組んで叫んだ。

「これから危険なことがたくさんある。だけどどんなことがあっても俺達はずっと一緒だ!」

「お、おう!」

 そんな風に誰かが言ってくれることなんてなくて、俺は感動してしまった。

 フリードはジョッキを高く持ち上げた。

「全員で伝説になるぞ!」


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