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食べ物は腐る。
当たり前だ。腐らなかったら逆に怖い。海外の蛍光色をした食べ物は腐らないイメージもあるけど普通は腐る。
でも俺の倉庫に入れておけば腐らない。入れた時のまま。そっくりそのまま出てくる。
だから村のじいさんに頼まれて麦が大量に入っていた。これを冬まで管理して渡す約束だ。
この腐らずに物を保存できる性質をなにかに活かせないか?
そこから俺は考えを組み立てていった。
「そうだ。俺のスキルは倉庫だろ。それ以外の方法で使ってたからあんまり考えなかったけど、それをきちんと活用すれば……。考えろ……」
なんてことを市場の前で一人ぶつくさ言っていたので通行人は怪しい目をして俺を避けていった。
それも気にせずに考え続けるといくつかのアイデアが出てきた。
でも一千万を三千万にする案なのかは分からない。
「……やってみるしかないか」
普段ならリズと相談して決めるけど、今は俺一人でなんとかするしかない。
がんばってくれたリズの為にも俺がどうにかしないと。
そんな決意を胸に、俺は市場でアイテムを物色していたパーティーに声をかけた。
「あの。ちょっと提案があるんだけど」
若い四人組のパーティーは不思議そうな顔を互いに見合わせた。
翌日。
俺はダンジョンにいた。
リズにはちょっと遠出してくると言って来たのは街から少し離れた場所にあるレミオの森だ。
前を歩くパーティーは昨日声をかけた若者達だった。
剣士の青年、ロイが振り向く。
「本当に警護しないでいいんですか?」
どうやら俺のことが心配らしい。まあ名前も聞いたことがない弱そうなおっさんだ。そう思われても当然だった。
「うん。自分の身は自分で守るよ」
「はあ、ならいいんですけど……」
すると大柄な斧使いの青年ダグラスがロイの肩を抱く。
「いいじゃねえか。気にしないで。格安でポーターが手に入ったんだからよ」
ポーターとは荷物持ちのことだ。体力があっても戦う力がない人がたまに雇われてやったりしている。ただ危険だからあまり人気がある職業じゃない。食べるために仕方なくって感じだ。
俺もギルドの時はメンバーだけどボーダーだった。だからこそ馬鹿にされてもいたんだろう。正直、地位が低い仕事だ。
この歳でそんなことをやってる俺はダメ人間だと思われたんだろう。
弓使いの女の子マリンも頷いた。
「そうそう。楽ができてちょうどいいわ」
魔法使いの女の子シェリーも同意する。
「うんうん。いつも大きなリュック持たないとダメだもんね」
仲間はそう言いながらもロイは俺のことを気にしてばかりだった。
「で、でもいいのかな。僕らみたいなレベルのパーティーがポーターなんて」
斧使いのダグラスは笑った。
「逆だろ。これからポーターを使うようになるんだから慣れとかねえとな。それこそフォーレンみたいなパーティーを目指すなら尚更な」
また懐かしい名前が出てきた。
「へえ。フォーレンに憧れてるんだ?」
ロイは照れながら頷いた。
「は、はい。僕もフリードさんみたいになりたくて」
この前まで新人だったのに今は若者の憧れか。時が流れるのは早いもんだ。
すると弓使いのマリンが残念がった。
「でも惜しかったわよね。もう少し実力があれば四天王討伐の遠征に同行できたのに」
魔法使いのシェリーは苦笑する。
「でも四天王なんて私達には無理だよ……」
「ついていくだけでも勉強になるじゃない」
「そうかなぁ」
弱気なシェリーにダグラスが力拳を作って笑った。
「俺様なら四天王だろうがなんだろうが楽勝だがな」
マリンは呆れていた。
「あんたなんて真っ先に倒されるわよ」
「なんだと!?」
「本当のことでしょ!?」
ロイは苦笑しながら二人の間に入った。
「まあまあ。僕らが実力不足なのは本当だし。でもがんばってレベルを上げて、いつかフォーレンと合同でダンジョンに挑めたら最高だよね」
楽しそうに未来を語る若者を眩しく感じながら、俺はこのロイという青年にあの日のフリードを重ねていた。
「フリードと一緒に仕事したこともあるけど、最初は君達みたいな新参者だったよ」
フリードの名前が出た途端、四人の俺を見る目つきが一変した。
「フリードさんと組んだことあるんですか!?」
「すげえ」
「ただのおっさんだと思ってたのに」
「あはは……。でもすごいです」
なんだか他人の威光を利用したみたいで情けなくなりながらも俺は続けた。
「いや、本当にただの荷物持ちさ。でもフリードが普通の青年だったのも本当だ。けどあいつは明確な目標を持って努力し続けた。だから多分、勇者って呼ばれるくらいになれたんだと思う。だから君もがんばってね」
ロイは目を輝かせながら「はい!」と返事をした。
一方の俺は自問した。
俺の目標ってなんだろう?
フリードみたいにはなれる気がしないし、なれないだろう。
みんなからちやほやされたいって時期もあったけど、今はそうでもない。
そうだな。リズと一緒にのんびり暮らせればいいや。
その為にもアメリアは救わないと。自分達だけのほほんとは生きてられない。特にリズは気にするだろう。
なにはともあれ今はカネだ。
俺は気を取り直してダンジョンを進んだ。




