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 宿から出た俺は小さく嘆息した。

「危ない危ない。あんな風に揺れたら見ちゃうよな」

 リズに関してもなるべく意識しないようにしてるけど、動くと揺れるからどうしても目が引っ張られる。

 でもリズは自分が見られている時は気付かないんだよな。そういうもんなんだろうか?

 まあ胸のことはいい。

 とにかく今はお金を増やさないと。

 宿代とルルの施術代で約百万ゴールド。

 つまり手元に残るのは一千四百万程。これをあと一ヶ月ちょっとで倍以上に増やさないといけない。

 俺一人で難しいクエストをクリアするのは到底無理だ。

 なら正攻法以外で攻めるしかない。

 となるとギャンブルか。

 倉庫で働いている時もたまにパチンコやパチスロに行っていた。遊ぶ程度だったけど勝つ時は一日で一万円を十万くらいに増やしていた。

「元手ならあるし。ちょっとやってみるか」

 そんな気軽な感じで俺はカジノに入った。

 五時間後。

 なにが起こったのか分からないまま俺はカジノから出てきた。

 ルーレットに熱くなり、気付けば一時間で二百万円が溶けた。

 増やすつもりが減ってしまった。

「くそおっ! あの時黒に来てれば!」

 泣きそうになりながら頭を抱えていると、次第に虚しくなってきた。

 俺は簡単な買い物をすると、トボトボと宿に戻った。

「あ。おかえりなさい。随分遅かったですね」

 笑顔で出迎えてくれるリズを見てなんだか胸が痛んだ。

「あ、うん……。ちょっとね……」

 するとリズは俺の抱えていた紙袋を見て立ち上がった。

「果物を買ってきてくれたんですね。今切りますから。……っ」

 歩き出そうとしてリズは痛みで顔を歪める。

「大丈夫!?」

「へ、平気です……。ルルさんに回復もしてもらってますし。安静にしろとは言われましたけど」

「じゃあ安静にしないと。果物なら俺が切るから」

「すいません……」

 しゅんとするリズに変わって俺がナイフを握った。一人暮らしが長かったからそれなりに扱える。

 買って来た果物を切りながら思った。

 素人の俺がギャンブルで増やすなんて無理だ。もっと確実に増やす方法を考えないと。

 でも地道に働いてたら到底一ヶ月で残り二千万弱なんて稼げないし。

 どうするか。

 あっちの世界で一ヶ月で二千万稼ごうと思ったら、それこそなにか悪いことをするしか……。

 なんて考えているとリズが後ろから声をかけた。

「どうかしましたか?」

「え? あ、いや、なんでもないよ……」

 危ない危ない。リズもいるんだ。そんなことをしたら悲しませる。

 法に触れるのはなしだ。それにそんなことして見つかったらこっちの世界だと死刑になってもおかしくない。

 わりと簡単に処刑されるからな。

 でもじゃあどうする?

 答えが出ないまま俺は切ったリンゴロの実を皿に並べてベッドに持っていった。

 フォークに刺してリズに渡すと不格好になってしまった実を嬉しそうに食べてくれる。

「とってもおいしいです」

「そう? よかった」

 リズが笑顔なら俺も嬉しい。でも二百万擦ったことを知ったら悲しむだろうな。

 やっぱりギャンブルはよくないな。うん。

 シャクシャクと音を食べながら小さな口で食べるリズは少し寂しげに言った。

「でも残念ですね。リンゴロの実ももうすぐ旬が終わっちゃいますし。そしたらまた来年までおあずけですから」

「そんなに好きなんだ?」

「はい。小さな頃はよく森でアメリアと採って食べてました」

「へえ」

 田舎の子が野いちごとかを採って食べる感覚か。

「そんなに好きならもっとたくさん買っておくよ。それこそ一年中食べられるくらい」

「でもそんなに買ったら腐っちゃいますよ?」

「大丈夫大丈夫。俺の倉庫なら……」

 そこまで言って俺はハッとした。

 リズは不思議そうに小首を傾げる。

「どうかしましたか?」

 俺は口に手を当てて考えた。

「……ま、まだ分からないけど、なんとかなるかも」

 リズは疑問符を浮かべながらリンゴロの実をシャクシャク食べていた。

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