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「ソーコさんッ!」

 リズの心配する声が辺り一帯に響き渡る。

 衝撃で吹き飛ばされた俺はそのまま地面に落下した。

「かはっ」

 息ができない。

 その苦しさが去ったと思えば次に訪れたのは痛みだった。

 服の下に軽い防具を仕込んでおいたのにほとんど意味がないほどの鈍い痛さ。

 元の世界では自転車に乗っていて転んだことがあったけど、あれより遙かに痛い。

 多分なにか折れてるな。

 それでも動かないと。

 止まれば的になって、死ぬ。

 俺はなんとか足を踏ん張り、横に跳んだ。

 その瞬間、さっきまで俺がいた場所にロックワームの尻尾が振り下ろされる。

 避けたのに衝撃で吹き飛ばされ、その落下でまたダメージが蓄積された。

「く……そ……」

 俺は絶望しながら自分の右手を眺めた。

 たしかに触れた。そして収納した。

 だけどロックワームの尻尾を形取る岩が一つ取れただけだった。

 多少のダメージは与えられたかもしれないけど、ロックワームは今もぴんぴんしている。

 痛い。怖い。もう帰りたい。

 そんな泣き言を言いそうになる中、俺は目の前の光景に目を見開いた。

 リズがロックワームに攻撃を繰り返している。

「ソーコさんはやらせませんっ!」

 ほとんどダメージを与えられていない攻撃をひたすらに繰り返す。

 それを鬱陶しがったのかロックワームが一回転した。

 広範囲の攻撃に避ける統べなく、リズもまた吹き飛ばされる。

「きゃあっ!」

「リズっ!」

 心配する僕を見ながら、リズは震える膝で立ち上がった。

「ソーコさんは逃げてください……。ここはわたしが……」

「それって……」

 囮。

 たしかにそうすれば俺だけ逃げられるかもしれない。でもリズは……。

 そこで俺はさっきから自分の手の下にあったものに気づく。

 それはここで負けた冒険者のものと思われる骸骨だった。

 負けたらこうなる。リズも……。そんなのイヤだった。

「ダメだ! 一緒に逃げよう!」

「それは……できません……」

「なんで!?」

「逃げたらアメリアが助からないからです。あの子を助けるにはこれを倒すしかないんです」

 リズは本気だった。

 いつもは優しい目に野生が宿っている。

 まるで獣のような気配に俺は思わず気圧された。

 異変を感じ取ったのは俺だけでなく、ロックワームもだ。攻撃せず威嚇している。

 そこへリズは踏み込み、蹴りを放った。

「はあっ!」

 するとさっきまでヒビが入るだけだったロックワームの体の一部が砕け散る。

『ガゴオォ!』

 体をよじらせるロックワーム。

 その前ではリズが拳を握っていた。

「だから必ず勝ち取ります」

 その背中には信念が宿っていた。

 それを見て自分が情けなくなる。

 そうだ。アメリアを助けるんだ。そう誓ったじゃないか。なのにすぐ信念を曲げたがる。そんな自分が嫌になった。

 それにここで逃げてもリズがいなければ俺の人生もまた行き詰まる。目標もなくフラフラして、その場限りの生活をするだけだ。

 少しくらいスキルを使えるようになっただけで一人じゃなにも変わらない。

 俺はリズを助けたんじゃない。助けられたんだ。

 震える手を握り、顔を上げる。そこではリズが手足から血を流しながら必死に戦っていた。

 ロックワームも余裕はない。今なら逃げられる。

 だけどそれだけはしたくなかった。

 全身痛いけど体は動いた。なら俺がやるのは一つだけ。

 こいつを倒してアメリアを救うんだ。

 ようやく決心がつくと、震えは収まっていた。


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