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 ドゴン洞窟。地下三階。

 洞窟に彫られた階段を降り、そこから細い坑道を出くわすモンスターと戦いながら下っていくと辿り着くダンジョンの中間地点だ。

 ここから先は多くの冒険者が足踏みする領域。

 モンスターの強さが急変する分水嶺。

 レベルの高いパーティーだけが潜るエリアに僕とリズだけで挑む。

 少し知識があれば自殺行為だと言うだろう。そんな場所だった。

 足を踏み入れた瞬間、空気が変わった気がした。

 少し歩くと足下で何かが崩れる音がした。足をどけてみるとそこには人骨が転がり、思わずゴクリとつばを飲む。

 リズの顔つきも真剣なものに変わった。

「気を付けてください。なにかが私達を見ています」

「え? どこ? なにが?」

 俺は慌てて周囲を見渡す。だけど薄暗い空間が広がるだけでなにも見えない。

 だけどなにかが転がるようなゴロゴロという音は聞こえていた。

「……なにか……来る」

 俺は右手を前に出した。リズはとっくに構えている。

 しばらくすると松明が照らした空間にバランスボールくらいの岩が転がってきた。

「岩……ですか?」

 不思議がるリズ。

 一瞬どこかが崩落したのかと思ったけど、岩についた目と目が合って理解した。

「ローリングロックだ!」

『ローリングロック』

 回転する岩のモンスター。

 一度ターゲットを見つけたらひたすら追いかけ回す厄介な敵だった。

 しかも一体じゃない。後ろから数体が転がってきた。その全部がリズを見ていた。

「やば。避けて!」

 俺が叫ぶと同時にローリングロックはリズへ向かって体当たりを敢行する。

『ゴロゴロゴロゴロ』

 リズはそれを跳んで回避すると、今度は僕に向かって来た。

「うわっ!」

 思ったより素早い突進に面食らいながらもなんとか右手を伸ばし、ローリングロックを収納した。

「ふう……」

 一安心したのも束の間で、次から次へと別のローリングロックが現れ、僕ら目がけて転がりだした。

『ゴロゴロゴロゴロ』

「はあっ!」

 リズが蹴りを放つけどびくともしない。

「ど、どうすれば?」

 珍しく困惑するリズに対し、もう一体のローリングロックを収納しながら僕は叫んだ。

「とにかくあいつらが来られないとこまで逃げよう!」

「は、はい!」

 この数を全部収納するのは無理だ。やってる内に絶対体当たりを喰らう。そしたら骨が折れて俺は終わりだ。

 今は逃げること。それだけを考え、俺達は洞窟内を走り回った。

 するとローリングロックが段差や障害物にぶつかってこちらを追いづらくしているのを見つけた。

 俺は周囲を見渡し、右方向にその条件が揃っていることを確認した。

「右だ! 右に逃げよう!」

「はい!」

 俺達はローリングロックの攻撃をなんとかかいくぐりながら複雑に入り組む方に逃げていく。

 どんどん奥に追いやられていくのは不安だけど、今は逃げるしかない。

 少し進むとどんどん狭くなっていき、その先に広い空間が見えた。

 後ろからはローリングロックが迫っている。

 俺達はその空間に飛び込むと、後ろからやってきたローリングロックが入り口で引っかかって止まった。

「……助かった」

 息を切らしながらも俺がホッとしているとリズがなにかに気づいて前を向いた。

「ソーコさん! ここにもなにかがいますっ!」

「また!?」

 リズの緊迫する表情からただ事でないことを察知した俺は倉庫から何本かの松明を取り出した。

 すると空間の奥が照らし出される。

 そこではなにかが蠢いていた。

 それがこちらに気づくと巨大なヘビみたいな体を動かして向きを変える。

 そこにいたのは目のない巨大な岩のワーム。

『ロックワーム』だった。

 ロックワームは大きな口を開き、不気味な雄叫びを上げた。

『グロロロロロロロロオオオオオオオオォォォォッ!』

 今まで見たこともない巨大モンスターの出現に俺は生まれて初めて心の底から絶望した。


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