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岩と砂でできた薄暗いドゴン洞窟の中は松明で照らさないと見えづらい。
元々人間が使っていた松明置きがあるからそれを見つけたら倉庫から出してさしていく。
だけどそんなことしなくてもリズは問題ないみたいだ。
俺が少し先が見えずに怖がっていると笑顔で振り返る。
「大丈夫ですよ。この近くに敵はいません」
「え? 見えるの?」
「はい。これくらいの暗さなら」
動物は夜目が利くと言うけれど、獣人もそうみたいだ。
目だけじゃない。リズは耳や鼻もいい。ちょっとした音や匂いも感知して俺を助けてくれる。
「あ。そこの石は踏まない方がいいです」
「え? あ。そう言えばここだけ色が違うな。あれか? トラップか?」
昔は人間が使っていた空間だ。そういうのがあっても不思議じゃない。
「なんで分かったの?」
「えっと、勘ですかね」
野生の勘ってやつか。ここはリズに従った方がよさそうだな。
入り口から近いエリアにはクラヤミバットみたいなモンスターしかいない。他のモンスターを探すには更に奥深くに入る必要があった。
進んで行くと元々人が使っていたからレールが敷かれている場所に出てきた。天井が低く、なにかが張り付いてる。
それを見て俺はゴクリとつばを飲んだ。
オオグモ。
簡単に言えば大きなクモだ。でもその馬鹿げた大きさは死ぬ前に見ていたクモとは比べものにならない。
小さな軽自動車くらいのサイズがあった。
オオグモは暗い場所に糸で巣を張り、そこに来る獲物を絡め取る。
正直、虫が嫌いじゃない人でも卒倒しそうな見た目だ。でもこいつの持つ糸は一メトル二万ゴールドで売れる高級品だった。
ただ一度使うと価値が落ちる。外に張ってある巣も買い取りの対象だけど、本命は体内に持つ糸玉だ。
大体平均して二十メートルくらい持っているらしい。だからこいつ一体を捕獲すれば四十万ゴールド。
挑戦する価値はあった。
普通は魔法や遠距離スキルを持っている奴で討伐するんだけど、俺達にそんな芸当はできない。
作戦はいつだってシンプルだ。リズが戦い、そして俺が倉庫に収める。
俺はいつもより早く脈打つ心臓をなんとか落ち着かせるとリズに告げた。
「……やろう」
「はい!」
リズは恐れずにオオグモへと向かって行く。
俺はその後ろから攻撃の機会を窺った。
何度やっても慣れない。
恐怖で手が震える。
それでもアメリアを救うには逃げている暇なんてない。
強襲したリズを倒そうと糸を跳ばし、体当たりを仕掛けるオオグモ。
その背中が見えた瞬間、俺は勇気を出して走りだした。




