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 ダンジョンはいくつかのエリアに分かれていることが多い。

 最初の内はモンスターも弱くて地形もなんてことないけど、深く進めば敵は強くなり、なにより環境が冒険者を苦しめる。

 なのできちんとしたパーティーを組まない限りはダンジョンに潜ることは勧められないし、やりがたらない。

 だけど難易度が高いと言うことは報酬や手に入る素材も高価だということでもある。

 しかもたまにお宝なんかも見つかる。全滅したパーティーの装備なんかを狙う連中もいるみたいだけど、それはあまり乗り気がしなかった。

 ということで俺達はダンジョンにいた。

 潜っているのは街から少し離れた山にあるドゴン洞窟だ。

 ここは元々鉱石を採るために人間が作った空間だったそうだけど、だんだん採れる量が減っていき、遂には放棄されたらしい。

 そこにモンスターが住み着き、今では彼らが住人となっている。

 今でも深く潜ればレアな鉱石が見つかるそうで、それ目当てで挑戦するパーティーも少なくない。

 俺も鉱石は欲しいけど、採れる可能性の低いものをあてにしてたら三千万なんて稼げないと思った。

 もちろん一攫千金は夢だけど、人生はそう甘くない。

 て言うかあっちの世界ではそれを求めてパチンコやスロットにのめり込んだ時期があった。

 でも結局俺にギャンブラーとしての才能はなく、貯金がなくなっただけだった。

 だから確実に儲かるモンスターを討伐する方を選んだ。

 中は危ないので外にキャンプを張り、出たり入ったりしながらモンスターを倒していく。

 本来なら食糧や装備が大量にいるから二人じゃできないけど、俺の倉庫なら楽々運べるから割と快適なテント生活を送れている。

 ただこの準備のために随分と時間を使ってしまった。期限は日に日に忍び寄ってくる。ここで稼げないと大きな機会損失だった。

 それでも慌ていいわけでもなく、今はリズの手作りスープを飲みながら休憩中だ。

「うん。おいしいよ」

「ありがとうございます。簡単なものであれですけど、喜んでもらえてよかったです」

「いや、俺一人だとパンだけかじって終わりだろうし、大助かりだ」

「そう言ってもらえると作った甲斐があります」

 嬉しそうにはにかむリズを見て、こんな子と結婚できたらと思ってしまう。今もなんだか新婚生活っぽいし。テントだけど。

「さて、と」

 俺はマヤに貰ったクエスト票を眺めた。

 今回は一度に複数のクエストを攻略するつもりだ。受注はしてないから誰かが先に納品すると困るんだけど、一つのクエストに縛られないで動けるから稼ぐには打って付けだった。

「今のところ『クラヤミバットの舌』が五つか。これで三万くらい。報奨金を合わせても四万弱か。これで今回の遠征費は賄えたかな」

「他にもたくさんいましたね」

「うん。クラヤミバットの舌は魔法を強化するアイテムに使うらしいから需要はあるんだ。でも採るのが大変だから次からは狙わなくていいよ」

「石を投げて落とすのは大変でした」

「あはは……。すごい威力だったけどね。何体か死んじゃったし」

「うう……。すいません……」

「いや、いいけど」

 あれが当たったら俺は確実に死ぬだろうな。少なくとも甲子園には出られそうな威力だった。

 やっぱり獣人はフィジカルが桁違いだ。こんな可愛い女の子なのに、トップアスリート並の身体能力を持っている。

 大して俺はどこにでもいる三十代だ。スキルのおかげでなんとかなってるけど、それ以外は平凡以下。

 注意しないとすぐやられる。現にクラヤミバットが襲って来た時は逃げるしかできなかった。

 素早いモンスターが群れで来られたらお手上げだ。一体か二体なら倉庫に収納できるだろうけど、それをやってる間に血を吸われて干物にされる。

 結局リズのサポートに回るのがちょうどよかった。

 スープを飲み干すと俺は一息ついた。

「よし。じゃあそろそろ再開しよっか」

「はい。がんばりましょう」

 さっきまで疲れていた俺が食事と休憩でなんとか回復したのに比べ、リズは元気いっぱいだった。

 この笑顔が見られるなら俺もまだ頑張れる。一人の時は話し相手すらいなかったもんな。

 まあ、その分安全だったけど。

 でも、今の方が生きてる実感はあった。死んでから生きているって思うなんて皮肉なもんだ。

 俺は力を込めて立ち上がった。

「さあ。仕事だ」


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