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 街を出てしばらくすると屋根の低い建物が何軒か集まった小さな集落が見えてくる。

 ココル村まで馬車で一時間。移動だけで三千ゴールドかかった。

 報酬は三万ゴールド。

 正直割が合わない。

 アイテムで稼ごうにもゴブリンから得られる素材はあまり多くなかった。

 牙や棍棒くらいで、それが手には入っても精々五千ゴールドになるかどうかだ。

 その割りにすばしっこくてある程度の知能もあって倒すのは簡単じゃない。

 多くの冒険者は少しでも効率よく稼ごうとする。

 中級者以降はもっと強力なモンスターを狙い、初級者は素材が高く売れるモンスターを好むため、あまりゴブリン退治を受けなかった。

 見かねたギルド本部が半強制的に依頼を受けさせることがあるくらいだ。

 そういう時は報酬が増額されるから大きなギルドが下っ端にやらせたりする。

 自分からゴブリン退治に挑むのは冒険の初期で力試しをしたい若者くらいだった。

 なので俺みたいなおっさんが来てココル村の村長は困惑していた。

「ようやく受けてくれたと思ったらおっさんと獣人……。失礼だが大丈夫なのか? 討伐経験は?」

「あはは……。いやあ。お恥ずかしながらこれが初めてのゴブリン退治で……」

 俺が苦笑すると髭を生やした村長は近くのおじさんと不安そうに顔を見合わせた。

「そうか……。悪いが我々は加勢できない。今は黄金麦の収穫時期なんでな」

「大丈夫。僕らだけでどうにかしてみせますよ」

 そうは言っても自信があるわけじゃなかった。むしろ失敗する可能性の方が高いと思ってる。

 いざとなったらリズと一緒に逃げよう。死ぬよりクエスト失敗の方が百倍いい。

 ただあんまり失敗しすぎると受けられるクエストも減るし、最悪受注できなくなるけど。

 村長はあまり期待してないような目で村の隅にある倉庫を指差した。

「あそこに穀物庫が見えるだろう? ゴブリンは近くの森からあそこを狙って来るんだ。見張りをつけてはいるんだが一昨日も一人やられてね。骨を折ってしばらく仕事ができない。小さな村だ。今は収穫の時期だから人が欠けると大変なんだ」

「なるほど」

 来る場所は分かってるのか。ならまだやりやすいな。

 森の中でゴブリンを探して彷徨うよりよっぽどマシだ。

「何体くらいですか?」

 村長が隣のおじさんを見た。おっさんはう~んと唸った。

「五、六体かな……。夜が多いから正確な数は分からないけど」

「五、六体……」

 まあそれくらいか。一度に動くゴブリンの群れとしては多くはないけど少なくもない。

 でも二人で六体は少し多い。普通なら三人くらいのパーティーが引き受ける数だ。

全部生け捕りは難しいかもしれないな。

 俺がどう戦うか考えているとおじさんが眉をひそめた。

「なあ。あんまり文句は言いたくないんだが、一人でやってきて大丈夫なのか? それもそんなの連れて来て。暴れ出したらどうする気だ?」

 おじさんの視線の先にはリズがいた。

 申し訳なさそうにするリズ。

 悔しいけど都会でもこういう考え方の人は多い。郊外なら尚更だ。

「心配はいりません。それに一人じゃないですよ。リズも立派な戦力です。むしろ俺なんかよりよっぽど心強い。な?」

 リズは元気を取り戻した。

「ソーコさんよりというのは自信がありませんが、私もできる限りがんばります」

 控えめにはにかむリズを見ても村長達は懐疑的だった。

「……まあ、追っ払ってくれるだけでもいい。精々がんばってくれ。じゃあ、我々は収穫があるんでな」

 踵を返す村長に俺は確認した。

「あの。一つ聞いておきたいんですけど、もしレアアイテムが出たらもらっていいんですよね?」

「レアアイテム? ゴブリンのか?」

「はい」

 村長は呆れるように笑った。

「ゴブリンのレアアイテムは髄液だぞ。しかも新鮮でなければ意味がない。手に入れるためには拘束魔法が必須だ。使えるのか?」

「えっと、まあ、その、もしもの話です」

 村長はどうでもよさそうに歩き出し、背中越しに手を振った。

「好きにしてくれ」


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