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 ギルド本部にやって来るとさっそくマヤに成果を話した。

 ステータスを表示し、大量のレアアイテムを見せるとマヤは目を丸くする。

「うわ! 『虫の体液』が八つに『小動物の心臓が四つ』もっ!? こっちは『サボテンの花』に『泣き虫ウサギの涙』じゃないですか! すごい! こんなにたくさん初めて見ました!」

 他にもこの三日間でかなりの数のアイテムを手に入れた。

 正直苦労も多かったけど、改めて確認すると壮観だ。

 ギルドにいた時もこんな種類と量はそうそうお目にかかれない。

「一応取る前にクエストを確認したんだけどさ、いくらくらいになりそうか計算してもらえる?」

「分かりました。少々お待ち下さい」

 マヤはすぐに依頼票をチェックしだした。

 大量の依頼票が重ねられていく、今度はそこに書かれた報奨金を足していく。

「えっと、ひいふうみい……。分かりました! 全部で三十万二千三百ゴールドです!」

 三十万って言えば俺が毎日働いたとして一ヶ月で稼ぐ額より多い。

 贅沢しなければ二ヶ月は暮らせるような大金だ。

 ちょっと前なら喜んで酒場に行っていただろう。

 でも今の俺には全然足らなかった。

「むう……」

 唸りながら腕を組むとマヤは疑問符を浮かべた。

「あ、あれ? 三十万ですよ。嬉しくないんですか?」

「いや、嬉しいは嬉しいんだけどさ。ちょっと大金が必要になってね」

「はあ……。失礼ですけどおいくらほどですか?」

「……言っても詮索しない?」

「しませんよ。受付嬢は冒険者の個人情報を守る義務がありますからね」

 マヤはふんと胸を張るが、あんまりその義務が果たされてるところを見たことない。

 あっちの世界に比べたらこっちのコンプライアンスはガバガバだ。

 まあ、マヤならいいか。

「…………三千万」

「…………は?」

「だから、三千万ゴールド必要なんだ。それも三ヶ月以内に」

「はあっ!?」

 マヤはびっくりして声を上げた。

 周囲の視線を集めるとマヤはすぐさま口に手を当てる。そして小声で聞いてきた。

「な、なんでそんな大金必要なんですか?」

「詮索しないって言っただろ? まあ、色々あったんだよ」

「マフィアに弱みでも握られたとか?」

「……遠からずってとこかな」

「ええ……」

 マヤは口角をひくつかせ、メガネを直した。

「なにやったんですか?」

「だから聞くなって。とにかく大金がいるんだよ。どうにかならない?」

「どうにかって言われてもなぁ……」

 マヤはう~んと唸って悩んだ。

「報奨金が高いクエストは上位ギルドが取ってちゃいますし、そもそもソロじゃ受注できるクエストの数も限られてしまいますしねぇ」

「だよなぁ」

「ショーゴさんがどこかのギルドに入ってしまえばなんとかなるかもしれませんけど。でも三ヶ月で三千万は流石に厳しいと言わざるえません」

「そんなことは分かってるよ。その上でどうにかできないか聞いてるんだ」

 三ヶ月で三千万。つまり一ヶ月で一千万が必要だった。

 つまり一日三十万以上。

 三日で三十万じゃ全然間に合わない。

 それに俺とリズの生活費も稼がないといけないしな。

 このペースじゃじり貧になるのは火を見るより明らかだった。

 マヤはまた悩んでいた。

「なんとかですか……。とりあえず今までより難しいクエスト受けてみますか?」

「え? いいの?」

「はい。見たところレベルも上がってるみたいですし、前と比べたら受けられるクエストも増えてますよ」

「あ。そうか」

 レベルアップの恩恵なんてまともに享受したことないから忘れていた。

 嬉しい反面、今まで俺はなにをしてたんだとも思った。

 戦えば経験値が得られるのは分かっていた。

 でも怖くてできなかった。

 やってみたらやっぱり怖かったけど、なんとかなった。

 もう少し早くやっておけば……。

 そんな後悔がじんわりと染みた。

「どんなのがある?」

「えっと、単純にモンスターが強くなるか、または群れ系ですかね」

「群れか……」

 群れってことは数が多いってこと。

 でもいくらレアアイテムって言っても雑魚モンスターのものはたかが知れてる。

 どうにかして単価を上げないと三千万は夢のまた夢だ。

「今までより強めで頼むよ」

「分かりました。それでいうとやっぱりゴブリンとかスライムが定番ですね。被害も多いですし、納品以来もたくさんあります。ここら辺から一般人が倒せなくなってきますからね」

 俺も一般人なんだけど。

 それもしがない倉庫作業員だ。

「だよな……」

 ゴブリンもスライムも前のギルドで討伐経験はある。

 漫画やゲームの中じゃあいつらも雑魚だけど、実際戦ってみるとかなり手強い。

 後ろで見ていても討伐は大変そうだった。

 下手したら死ぬ。そんなレベルだ。

 最初はあいつらも苦戦していた。

 しばらくして簡単に倒すようになったけど、結局俺は一度も戦ったことはない。

今の俺がどれだけできるか不安はあった。

 でもこの恐怖は絶対に乗り越えないといけないものでもある。

 アメリアを取り戻すためにも。

「……やるよ。受けさせてくれ」

「大丈夫ですか?」

「さあね」

「さあねって」

 俺はフッと笑った。

「やらないといけないからな。ならやるよ」

 マヤは意外そうな顔をしてから呆れて笑った。

「分かりました。理由はもう聞きません。では。冒険者様にご武運があらんことを」

 そう言うとマヤはクエスト票にはんこを押した。

受けとったクエスト票の写しには『ゴブリン討伐』と書かれていた。

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