20
ギルド本部を目指す途中、商店が建ち並ぶ大通りを歩いていると、大きな檻が現れた。
そこでは奴隷商人が獸人を売っている。
「ご主人様……。あれって……」
「うん……。獸人だ……」
リズには見せたくない光景だけど、アメリアを探すのにはうってつけの場所だった。
「アメリアがいるか、分かる?」
「はい。もう少し近くに行けば」
檻の中は薄暗くて近づかないとよく見えない。
俺達は奴隷が入った檻に近づくと商人が手もみをし、ニヤニヤしながら俺に話しかける。
「おやおや。ご機嫌麗しゅう。旦那。へへへ。どんな用でしょう? 買いですか? それともそれを売りに?」
商人は下卑た目でリズを見る。
まるで品定めでもするような視線に嫌悪感を覚え、俺はリズの前に出た。
「リズは売り物じゃない。今日はちょっと見に来ただけだ」
「おお。それは失礼しました。もし売る時があったらうちでお願いします。高く買い取りますので。へへへ」
そんなことはありえないと思いつつも、この街じゃ捕まえてきた獸人は売り飛ばすのが当たり前だ。
一人売れば一年は暮らせるから割が良く、ハンターは人気の商売だった。
俺の後ろからリズは檻の中を覗いていた。
檻にいる獸人は八人程度。
全員女の子だ。
若い女の子は高く売れるので人気だった。
獸人の男は力が強く、コントロールしにくいが、女の子ならまだ扱いやすい。
まあそれでも俺なんかよりはよっぽど強いんだけど。
俺はリズに小声で尋ねた。
「アメリアはいる?」
リズは一人一人の顔をじっと観察していた。
暗くて見づらいけど、知り合いなら分かる距離だ。
しばらくしてリズは首を横に振った。
「……いないみたいです」
「そうか……」
ここにいないとするとどこにいるんだろうか。
ただ見つけたところで俺には奴隷を買うほどのカネはなかった。
一番安い子でも二百八十万の値が付いている。
正直手が出る値段じゃない。
俺はリズにアメリアの特長を聞いた。
「どんな子なの?」
「金髪で青い目をしています。わたしと同じねこの獸人です」
「分かった」
俺は商人に尋ねた。
「金髪でねこ系のはいないのか?」
「今は切らしてます。もしあれならハンターに頼みましょうか? 値は張りますが」
「いや、いい。今ってことは前はいたのか?」
「はい。ただ売れ残ったんで他に安く流しましたよ。うちは商品にはこだわってますから。あいつは客のことを睨みやがるんで。愛想がねえ奴はすぐ入れ替えてます」
まるでペットでも売ってるみたいな言い方だった。
「どこに売ったんだ?」
「路地にある小さな奴隷商ですよ。必要なら紹介しましょうか?」
「いやいい。自分で探すよ」
俺はこれ以上ここにリズをいさせたくなかった。
「リズ。行こう」
「は、はい……」
リズは申し訳なさそうに獸人達が入れられた檻から離れた。
剣と魔法の世界と言えば聞こえがいいけど、こういう歪みもある。
だけどそれは俺がいた世界でもそうだ。
使う奴らと使われる人達がいる。
奴隷の子を哀れんでいるけど俺も似たようなもんだ。
派遣会社に搾取されて、一生正社員になれないまま三十三歳で過労死した。
しかも会社はそれを隠蔽までしたんだ。
上の奴らは俺達を人間だと思ってない。
むかつくけど、抗う術は俺にはなかった。
それはこの世界でもそうだ。
だけどできるなら、少しでも抗いたい。
リズの悲しげな顔を見て、俺はそう思った。




