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 ギルド本部を目指す途中、商店が建ち並ぶ大通りを歩いていると、大きな檻が現れた。

 そこでは奴隷商人が獸人を売っている。

「ご主人様……。あれって……」

「うん……。獸人だ……」

 リズには見せたくない光景だけど、アメリアを探すのにはうってつけの場所だった。

「アメリアがいるか、分かる?」

「はい。もう少し近くに行けば」

 檻の中は薄暗くて近づかないとよく見えない。

 俺達は奴隷が入った檻に近づくと商人が手もみをし、ニヤニヤしながら俺に話しかける。

「おやおや。ご機嫌麗しゅう。旦那。へへへ。どんな用でしょう? 買いですか? それともそれを売りに?」

 商人は下卑た目でリズを見る。

 まるで品定めでもするような視線に嫌悪感を覚え、俺はリズの前に出た。

「リズは売り物じゃない。今日はちょっと見に来ただけだ」

「おお。それは失礼しました。もし売る時があったらうちでお願いします。高く買い取りますので。へへへ」

 そんなことはありえないと思いつつも、この街じゃ捕まえてきた獸人は売り飛ばすのが当たり前だ。

 一人売れば一年は暮らせるから割が良く、ハンターは人気の商売だった。

 俺の後ろからリズは檻の中を覗いていた。

 檻にいる獸人は八人程度。

 全員女の子だ。

 若い女の子は高く売れるので人気だった。

 獸人の男は力が強く、コントロールしにくいが、女の子ならまだ扱いやすい。

 まあそれでも俺なんかよりはよっぽど強いんだけど。

 俺はリズに小声で尋ねた。

「アメリアはいる?」

 リズは一人一人の顔をじっと観察していた。

 暗くて見づらいけど、知り合いなら分かる距離だ。

 しばらくしてリズは首を横に振った。

「……いないみたいです」

「そうか……」

 ここにいないとするとどこにいるんだろうか。

 ただ見つけたところで俺には奴隷を買うほどのカネはなかった。

 一番安い子でも二百八十万の値が付いている。

 正直手が出る値段じゃない。

 俺はリズにアメリアの特長を聞いた。

「どんな子なの?」

「金髪で青い目をしています。わたしと同じねこの獸人です」

「分かった」

 俺は商人に尋ねた。

「金髪でねこ系のはいないのか?」

「今は切らしてます。もしあれならハンターに頼みましょうか? 値は張りますが」

「いや、いい。今ってことは前はいたのか?」

「はい。ただ売れ残ったんで他に安く流しましたよ。うちは商品にはこだわってますから。あいつは客のことを睨みやがるんで。愛想がねえ奴はすぐ入れ替えてます」

 まるでペットでも売ってるみたいな言い方だった。

「どこに売ったんだ?」

「路地にある小さな奴隷商ですよ。必要なら紹介しましょうか?」

「いやいい。自分で探すよ」

 俺はこれ以上ここにリズをいさせたくなかった。

「リズ。行こう」

「は、はい……」

 リズは申し訳なさそうに獸人達が入れられた檻から離れた。

 剣と魔法の世界と言えば聞こえがいいけど、こういう歪みもある。

 だけどそれは俺がいた世界でもそうだ。

 使う奴らと使われる人達がいる。

 奴隷の子を哀れんでいるけど俺も似たようなもんだ。

 派遣会社に搾取されて、一生正社員になれないまま三十三歳で過労死した。

 しかも会社はそれを隠蔽までしたんだ。

 上の奴らは俺達を人間だと思ってない。

 むかつくけど、抗う術は俺にはなかった。

 それはこの世界でもそうだ。

 だけどできるなら、少しでも抗いたい。

 リズの悲しげな顔を見て、俺はそう思った。 


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