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 ホテルのレストランには獣人が入れないと言われ、仕方なく市場でパンと果物を買ってきた。

 テーブルに並べるとリズは目を輝かせた。

「おいしそう……。これも食べていいんですか?」

「もちろん。大したものじゃないけどさ」

「いえ。ごちそうです。旅をしている間は木の実とかお魚ばっかりでしたから」

 すごい生命力だな。

 俺なら飢え死にしてるだろう。

 リズは乾燥した果物と穀物が混じったパンに手を伸ばすとそれを食べた。

 そしておいしそうに顔を和ませる。

「こんなに柔らかいパンは初めてです。やっぱり人間の食べ物はおいしいですね」

「焼きたてだからね」

 あといつもより奮発した。

 普段なら安くてかたいパンを選ぶけど、リズを喜ばせたかった。

 値段は倍かかったけど、この笑顔を見たら買って正解だったと思える。

 でもカネはやばい。

 一応昨日はあれからリンゴロの実を回収したから、あとで納品しに行かないと。

 何個か魔犬に踏み潰されちゃったから俺達が食べる分は残ってないし。

 それにホテルに泊まるにしてもベッドが一つじゃな。

 予算の都合でそうなったけど、なんだかすごい悪いことをしてる気分になる。

 リズって若そうだし。

 多分まだ女子高生くらいの年齢だ。

 元の世界なら一発アウトだろうな。

「どうしましたか?」

 食べているのをじろじろ見ていたのがよくなかったのか、リズはパンのくずを口元に付けて首を傾げた。

「いや。なんでも……。ああ。そうだ。怪我はもういいの?」

「あ」

 リズは昨日巻いてあげた包帯がついた肩を回した。

「ちょっと痛むけど、大丈夫みたいです」

 すごい回復力だな。

 さすが獣の血。

 俺なんて昨日動き回ったから筋肉痛がひどいってのに。

 これが若さか……。

「ははは……。よかった……。食べたら出ようか。街に行けば君が探してる子のことも分かるかもしれないし。アメリアだっけ?」

「はい。少しでも情報があればいいんですが……」

「きっとあるよ」

 根拠なんてなかった。

 でも俺はそう言った。

 俯いていたリズは顔を上げ、笑った。

「そうですね」

 いい子だ。

 だからこそ力になってあげたい。

 今の俺にはそれくらいしかやれることがなかった。


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